ここはロンドネルの府庁にある食堂。
昼は将兵や役人で賑わうこの場所も、
夜になれば誰もいなくなる。
しかし、今日に限っては
食堂の厨房に複数人の影が見える。
その上、今もう一人が厨房に姿を現した。
「ごめんごめん!遅くなったわ!」
「大丈夫ですよユニースさん。私たちも今来たところですから。」
「え?本当?」
「ええ、つい30分前に来ました。」
「……、なんていうか…ごめんなさい。」
「ユリアお姉ちゃんって、意外と容赦ないね…(汗」
「ま、まあそう気を落とさないでくださいユニース様。
お仕事が忙しいのは分かりますし…」
厨房に入ってきたのは、ロンドネルから
少し北に位置する国の領主を務める女騎士、ユニースだ。
今日はいつものような白い鎧ではなく、
プライベートの時に、たまに着用している私服姿。
持ち物も、得物である「星槍グランヴァリネ」ではなく
何かがごちゃごちゃと入っている革の鞄だ。
一方、先ほどから厨房にいるのは
ロンドネル軍に所属する赤髪赤眼の女騎士、マティルダ。
ロンドネルに滞在する、温和的なエンジェル、ユリア。
そして、この国の軍事顧問の妹である新人将軍、フィーネ。
の三人だった。
三人とも、ラフな服装にエプロンをしている。
彼女たちが集まった理由は至極単純。
今日は2月13日。
明日は女性たちにとって、どんな戦よりも重要な日だ。
そんな彼女たちの標的はただ一人。
ロンドネル軍の軍事顧問にして、冒険者ギルド長の
エルクハルト・フォン・クレールヘン。通称エル。
だれよりも強く、
誰よりも頭が良く、
そして誰よりも美しい容貌。
そんな完璧超人ともいえるエルにあこがれる女性は数限りない。
それどころか、そのどこまでも女性的な容姿に
男性の中にも彼のファンが大勢いる。
今のところ、世界でも有数のハードルが高い男性である。
しかし、ここにいる四人は
エルのところに比較的簡単に手が届く数少ない女性たちだ。
今から彼女たちは、エルにチョコを受け取ってもらうために
一致団結してチョコ作りをしようというのだ。
ここからは台詞の前に名前付きでお送りします
ユニース「さて、皆さんお集まりいただき何よりです。」
この場は、最後に来たユニースが仕切るようだ。
ユニース「これより、『第一回:エルを×××する会』を開催します!」
フィーネ「なんで真ん中が伏字なの!?怪しすぎますよユニースお姉ちゃん!
ただにいさんにチョコを作るだけなのに!」
ユニース「しゃらっぴ!これは気分の問題なのです!
さて、改めてこれからみんなでチョコを作るのですが…」
ユニースは途中から言葉に詰まる。
ユリア「どうしたのですか?ユニースさん。」
ユニース「いえ、今思ったんだけど、
この面子は意外な問題があることが発覚しました。」
マティルダ「問題!?なんですか?」
ユニース「……、この中で料理が出来ない人、挙手。」
し〜ん。
ユニース「ではこの中で料理の腕前に自信がある人、挙手!」
バババッ!!
全員が挙手をした。
ユニース「まあこんな感じに全員の料理の腕前はかなりの物なのです。」
マティルダ「あ、なんとなくその問題がわかったような気がする。」
ユリア「わたしには特に何も問題がないように思えますが…」
マティ&ユニ『「料理が下手だけど頑張った」成分が足りない!!』
ユリ&フィ『な、なんだってーーー!!』
とんでもないことを言う女騎士二人に、
金髪二人組は愕然とした。
ユリア「あ、あのですね…、それならそれで別にかまわないのでは?」
フィーネ「そうですよ!にいさんには美味しいくて
甘いチョコを食べさせてあげようよ!」
マティルダ「お二人とも考えてみてください。
私たち四人はおそらくエル様の好みを知りつくしています。」
ユリア「やはり…、上限目一杯、胸焼けがするような極甘チョコですかね?」
ユニース「その通りです!甘いの大好きなエルの好みに合わせた味となれば
それはもう砂糖をふんだんに使った激甘チョコになるはずです。」
フィーネ「確かに…」
マティルダ「そして私たち四人はおそらくそれを目指してチョコを作るでしょう。
そうなれば後はどうなるか…想像は難しくないはずです。」
ユリア「……みんな甘いチョコを作ってしまうため、
エルさんの心に個別個別の思いが届きにくくなるかもしれませんね。」
フィーネ「それに、そんなにたくさん甘いものを食べたら
にいさんが本当に病気になっちゃうよ!」
ユニース「逆に、料理の腕前に差があれば、各自で教えあって
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