第11章:決死隊


さて、ここで一旦時間軸の整理をしてみよう。
なにしろ章ごとに時間を行ったり来たりするので、混乱される読者も多いことだろう。
カンパネルラ電撃戦開始からの出来事を順に並べると、次のようになる。


1日目:第二軍団がアネットに向けて出陣。
3日目:本隊及び第三・第四軍団が出陣。
5日目:第三軍団がアネット軍との前哨戦に勝利。(電撃戦前編)
   本隊と第四軍団が進路変更。
6日目:カンパネルラ軍主力がチェンバレン援軍に向かう。(電撃戦中編)
9日目:第三軍団が第二軍団と合流。
13日目:自由都市アネットへ攻撃開始(電撃戦後編)
15日目:カンパネルラ軍および十字軍がチェンバレンに到達。
17日目:十字軍がチェンバレンを無視し、プラム盆地へ進路を変更する。
18日目:カンパネルラ軍が十字軍本隊の追撃を開始。
23日目:第二軍団が別行動部隊を派遣。エオメル占領を目指す。
24日目:ルピナス河の戦い。
28日目:エオメルが陥落。
29日目:プラム盆地が陥落(外伝:籠の中の李)
31日目:チェンバレンが陥落
38日目:十字軍がカンパネルラに到達
41日目:カンパネルラの外周城壁を突破。(迷宮回廊)
43日目:カンパネルラ城への内部攻撃を開始。
55日目:カンパネルラ城攻略に冒険者集団を投入する。
68日目:カンパネルラ城陥落。


今回は、時間軸を戻してカンパネルラ電撃戦後編が終了した
33日目あたりから話を始めるものとする。



「フェデリカ様。グレイシア様の部隊が帰還しました。」
「やっと帰ってこれたか!さぞ辛かっただろうな、
すぐに休ませられるようにしておいてくれ!」
「わかりました。」


フェデリカのもとに、伝令のキーニから連絡が入った。
グレイシア率いるカンパネルラ軍残存部隊がようやく戻ってきたのだ。
フェデリカは早速彼女たちを出迎えることにした。

執務室を出て、軍が駐留する施設に向かう。
そこには無残にもボロボロとなったカンパネルラ軍主力の姿があった。
どの兵も疲れ切った顔をしており、無傷の者はほとんどいなかった。


「グレイシア!」
「フェデリカさん……、無念です。
我が軍はルピナス河で一方的な敗北を喫し…さらに
先ほど敵軍の伏兵にあって、多数の脱落者を出しました。」
「気にするな、今回は相手が悪かっただけさ。
それよりも今は腹を満たしてゆっくり休むといいさ。」
「ありがとうございます……」


緊急脱出したリリシアに代わって敗残兵を率いてきたデュラハンのグレイシア。
負傷兵を大勢抱えながらも、同行したバフォメットのレナスや
サキュバスのカペラ、メドゥーサのシャノンらの協力により
なんとかここまで戻ってくることが出来た。

しかし、アネットまでもう少しの地点で敵の伏兵から攻撃を受けてしまい
残っていた15000人のうち7000人が犠牲になってしまった。
チェンバレンの増援に向かった120000人は
わずか8000人しか戻ってこれなかったのだから、
グレイシアとしては申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


「ところでレナスやマーテルたちは?」
「ワシならまだピンピンしておるぞ。」
「おっとレナス、いたのか。小さすぎて見えなかったわ。」
「お主はもう少し…いやもうかなり小さくなるべきじゃな。身長も胸も。
それはさておき、ワシとカペラは無事に帰ってこれた。
カペラは今腹減ったとか申して、さっさと精の調達に行ってしまったがのう。」
「……元気そうでよかったな。」
「じゃがな、アヌビスのマーテルは残念ながら捕虜になってしもうた。
その上シャノンは左肩に重傷を負っておる。」
「シャノンが重傷か…。当分あいつには無理させられないな。
わかった、今回は残念だったがまだ終わったわけじゃないんだ。
レナスも今はゆっくりと休んどけ。その間私達が守りきるから。」
「すまんな、少しに間休ませてもらうぞ。」


レナスもまた、サバトの支部へと戻って行った。


「あーあ、私だって休みたいんだけど。
ミノタウルスの睡眠時間が5時間とかありえねーとおもうんだ。
早いところ決着をつけてしまいたいのは山々だが…。
私に…もっと力があれば、な。」

ぼやいても敵は手加減してはくれまい。
この都市を守りきるその日まで、彼女は戦い続けなければならない。
















場面は変わり、カーター率いる第三軍団の陣地。
司令部幕舎で本を読んでいるカーターのところに、二人の将軍が戻ってきた。

「失礼します。カシス、ただ今戻りました。」
「トステム、帰還しました!」

戻ってきたのは教会騎士団を率いるカシスと、眼帯をした隻眼の将軍トステムだ。
この二人がカンパネルラ軍の残存兵にダメ押しの伏兵を仕掛けた張本人だ。
回復しきれない負傷兵を大量に抱えていた
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