第一次ローテンブルク暴動。
一人の勇気ある女性が先導した大規模な反乱は、
ローテンブルクにいる人間全員に望まぬ結果のみを残した。
パスカルと双子の姉妹は、病気を治す手段を根本から断たれた。
市民たちは今まで通り圧政による苦しい生活を強いられる。
帝国軍や帝国親衛隊も多大な被害を出した。
そして…
「くそっ!!なぜ民どもはこのような時期に反乱など起こすのじゃ!?
おかげでワシの面目は丸つぶれじゃ!どうしてくれる!?」
「その上兵士にも多大な損害が出てしまった!このままでは私の出世にも…」
ローテンブルク太守のラドミネス、軍団長バイヨンもまた
望まぬ結果を突きつけられている。
これほど大規模な暴動がおこったのだから、統治能力を疑われてしまう。
「起きてしまったことは仕方ありません。
これから挽回していくより他に手段はないかと存じます。」
対するラヴィアは冷ややかに二人の上司に意見する。
彼もまた、アネットの一撃によって右腕を損傷している。
当分の間、利き腕には武器を持てないだろう。
「のうラヴィア…、ワシらはこれからどうすればよいのじゃ。」
「そうだそうだ!このままでは身の破滅だ!」
「ご心配なく。一つ簡単な方法がございます。」
「本当か!?」「え!?マジで!?」
「民の不安を和らげるために高すぎる税率を引き下げ、
同時に反乱を起こした組織の残党を法で処罰いたしますれば
反乱の動機を失い、安定した治世取り戻せるでしょう。
さすれば、宰相殿から事後処理の手腕を評価されるでしょう。」
ラヴィアの提案は、たしかに理にかなっていた。だが…
「却下じゃ!」
「なぜです。」
「民ごときに頭を下げるなど嫌に決まっておろう!」
「そうだラヴィア!太守様の言うとおりだ!」
「……ではどうしろと?」
「法を今以上に厳しくし、逆らう気をなくさせるのじゃ!」
「そして治安維持部隊の増員だな。厳しく取り締まるとしよう!」
「……ふぅ。」
これ以上の対話は不毛と判断したラヴィアは、大広間から退室した。
民の心は依然として燻っている。
このままでは二度目の反乱がいつ起きるかわかったものではない。
「愚かな。奴らは民草のことを何も分かっていない。」
その後、彼が向かったのは兵舎だった。
すでに日が暮れようとする時間、薄暗い兵舎には一人の兵士が残っている。
「リッツ。」
「はっ。」
そこには、全身をアネットの血で染めたリッツが立っていた。
「何も言わずとも分かる。命令違反により3ヶ月の営倉入りを命ずる。いいな。」
「はっ…。」
「だが、恐らく1ヶ月以内に出られるはずだ。」
「?」
「くっくっく、それにしても変わったなお前も。なんという表情をしているんだ。
営倉から出たら鏡を見てみるといい。恐らくお前の人生までそこで変わるからな。」
意味深なことを言いながら、ラヴィアは弟を何の躊躇いもなく営倉に放りこんだ。
一方、こちらはパスカルの家。
ドンドンッ
「パスカル〜。生きてるか〜?」
「ちょいと重大ニュースがあるんだ。開けてくんろ。」
し〜ん…
「…?おかしいな。返事がないな?」
パスカルの様子を見に来た同僚二人と上司一人は、
扉を何度ノックするも、中から返事がない。
どうしたものだろうか。
「まさかパスカルたちまで暴動に参加したんじゃ…」
「んなわけあるか。あいつは起き上がれんほどの重病人なんだぜ。」
「まて、二人とも。耳を澄ましてみるんだ。」
しく… しく…
「これは…泣声…」
「セウェルス!突入だ!」
「合点!」
意を決して三人は扉を開けて中に入った。そこで見た光景は、
その場にへたり込んで涙を流すイリーナと、気を失って横たわるイレーネだった。
「イリーナちゃん!何があったんだ!?」
「しっかりしろイレーネちゃん!?」
セウェルスとラッドレーは顔色を変えて二人の介抱にあたる。
「パスカルは寝室か!二人とも、双子の方を任せた!」
ヒムラーは寝室に向かう。
そして、そこには血まみれのアネットを抱きかかえたまま
微動だにしないパスカルの姿があった。
アネットにはもう息はなかった。
パスカルは、アネットの身体から流れ出す血で身体を赤く染めている。
その光景は恐ろしくもあり美しくもあった。
「パスカル…」
「うっ!ゴホッゴホッゲホッ!ぶ…部長ですか…、一つ…頼みがあるのですが…」
「頼み?大丈夫だ、アネットさんをかくまったことは誰にも言やぁせんよ。だから…」
「いえ、そうでは…コホッ…ないです。アネットのための…棺桶を…」
「棺桶か!分かった、すぐに持ってくるから待っていろ!
セウェルス、ラッドレー、しばらくこの家に知らん奴を入れるな!俺は棺桶を調達
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