砂、砂、砂
見渡す限り一面に広がる砂漠。
「あー……こりゃキツそうだなぁ。」
しかし、ここを越えないことには始まらないからな。
幻のピラミッドまでもうすぐなんだから。
さて、軽くここに至った経緯を説明しよう。
僕は魔術師としてソロ(一人だけ)で活動する冒険者で、
自分でいうのもなんだが、魔術の腕前はギルドの誰にも引けを取らないつもりだ。
特に、強化魔法が得意なものだから、どんな強敵が現れても
防御結界を重ね掛けして攻撃を無効化してから一方的に攻撃できるんだ。
おまけに長年冒険者をやってきて培った技術もあるし、
どんなに難しい依頼でも知恵と勇気でなんだって解決だ。
そんな僕が今回受けた依頼は、この広大な砂漠にある幻のピラミッドの探索だ。
何しろ砂漠は魔物の天下だから下手な冒険者が向かっても帰ってはこれまい。
そこで白羽の矢が立ったのが、凄腕の冒険者であるこの僕ってわけさ。
砂漠と言うのは恐ろしい場所だ。
凶暴な魔物が出るのもあるけど、一番の敵はやっぱり気候だろう。
空気は常に乾いているし、日光を遮る場所がないから水分はどんどん失われ、
夜になるとまるで冬になったかのような寒さが襲う。
おまけに砂漠の砂はもろくて足を取られやすいから、余計体力を消耗する。
だから大抵の冒険者は目的地にたどり着く前に、何もできずに全滅だ。
その点僕は魔術師だ。暑さは魔術で調節できるし、砂漠で移動力が下がることも無い。
え?なんで砂漠で移動力が下がらないのかって?
キミキミ、そんなの常識中の常識じゃないか。(※手ごわいSRPGの場合が対象です)
まあそんなわけで砂漠に足を踏み入れたのはいいんだけど、
正直広すぎて、歩くのがめんどくさそうなんだよね。
帰還の魔術なら使えるんだけど、流石にテレポートは使えないからな、
仕方ない、地道に歩いていくしかない。
「ん?」
ふと見ると、ここから少し離れたところに小動物がいるのが見えた。
見た感じ狐の一種みたいだけど、こんなところにも生き物が住めるのかと感心してしまう。
ちょうどいい、今晩の夕飯のおかずにでもするか。そう思いつつ近寄って捕獲しようととする。
しかし、どこからか地鳴りが聞こえてくる。それに地面が揺れる。
何事かと思いあたりを警戒していると………
ガバーーーッ!!
「うわっ!なんだありゃぁ!?」
さっきまでトコトコ歩いていた小動物が、砂の中から出てきた「何か」に呑み込まれてしまった!
「なんてこった!サンドウォームがいるのか!」
砂の中から姿を現したのは、岩のような外殻に覆われた長大な体躯を持つ魔物『サンドウォーム』。
あの魔物は自分のテリトリーに入ってきた獲物を感知すると、砂の下からいきなり襲いかかる。
当然、砂の上で足を取られている生き物には逃げるすべはないし、少し浮いていたくらいでは
その長大な体を生かして最大10メートルくらいまでは上空も攻撃範囲に入るらしい。
「うーん……あんなのがいたら、とても安心して歩けないな。どうしたものか……」
とりあえずサンドウォームとはたたかったことがないから、勝てるかどうかは分からない。
しかし弱点なら一応知っている。それは、体の内部だ。
あいつの外殻は硬すぎて一切の攻撃を受け付けないが、その分中は柔らかくなっているらしい。
そこで、丸呑みされても噛み砕かれる前に術を当てれば勝機はあるだろう。
…
「ん?まてよ…………要は丸呑みされても死にはしないわけだから……、…。
そうだ!!いいことを思いついた!僕は本当に天才だ!あっはっはっはっは!」
ここで僕は、素晴らしい作戦を思いついた。
よーしみてろよサンドウォーム!お前を徹底的に利用してやるからな!
そうと決まれば話は早い。まずは適当な方向にぶらぶら歩いてみる。
これであいつが出てこなかったら、まあそれはそれで問題はない。
だが、僕の作戦が成功すれば一気にショートカットが可能になるはずだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「お、どうやらお出ましのようだ。意外と早かったな。」
さっきみたいな地鳴りが、足元に直接響いてくる。
間違いない、狙いは僕だ。
「今だ!防護術発動!」
ここで僕は、強力な防護術を自分にかける。
僕の防護術は強力だから、ドラゴンのブレスすらも防ぎきることが可能だ。
そして防護術をかけたまま「わざと」丸呑みされることで奴の体の中に入り込み、
別の場所で口を開けた時に出るという寸法だ。こうやって移動していけば、
わざわざ歩く手間が省けるのだ!僕って頭いい!
ガバーーーッ!!
「くっ……」
呑み込まれた!だが痛みは感じない!よし、これでいい!
あとはまあ、術を解かなければいいから、当分何もすることはないな。
魔物の体
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