今期の格言
まだ見ぬ地へと帆を掲げ、君の手に届ける物語
恐れないで、両手広げ、永久に消えない約束の場所へ
文庫『風の旅路』序文より
この世界には大きく分けて四つの大陸がある。
中心に広がる広大な海を中心に、北西、北東、南西、南東…
そのうちの北西の大陸にわれらが鴻池智鶴率いるダークエルフ国家が存在する。
ここでは便宜上この大陸を『エルフ大陸』としておこう。
そのエルフ大陸の東に位置する、彼らの言うところの東の新大陸は
この世界の大陸の中で最も面積が狭く、文明も4つと少なめである。
ここもまた便宜上『ニューイースト』と呼ぶことにしよう。
友好国のリートゥスが発見した、世界の南西に位置する大陸、
いや、正確に言えば南西から、横は中央よりやや東まで広がり、北の先は
エルフ大陸の最南端…元トメニア領の半島の少し先まで迫るこの大陸は
この世界で屈指の広さを持っており、その面積はエルフ大陸の2倍以上にもなる。
配置された文明も非常に多く、さらに激戦に次ぐ激戦ですでに4つもの文明が
この大陸から姿を消しているのだという……
この最大の大陸には『中央大陸』と名付けよう。
そして最後にまだ見ぬ南東に位置する4つ目の大陸。
この時点ではなぞに包まれており詳しいことは分かっていない。
今ここは『未知の大陸』としておく。
ではここで、まだ見ぬ13の文明がどんな日常を過ごしているのかをちょっとだけ見てみよう。
…
中央大陸北方に位置する半島は起伏がほとんどない平野が広がる。
この地に、現在世界最大の領土を持つ強大な国家が存在した。
ドドドドドドド!
速度と重量のある地響きがステップ気候の平原が広がる大地を揺らす。
その正体は体長5メートルほどにもなろうかという巨大な猪だ。
陽の光を反射する黒金の毛皮と鼻の根元に生えた立派な牙を持つ獣は、
見ると体にいくつもの矢が刺さっている。血は流れていない、
しかし確実にダメージは負っているとみられる。
そして、その猪を追うように平原を荒まじい速度で駆ける影が複数…
ケンタウルスの群れが巨大な猪を狩ろうと追っていたのだった。
「よし、今が好機よ!大鳥の陣形で獲物を囲みなさい!一気に仕留めるの!」
『ラジャーッ!』
先頭を行くケンタウルスの合図で、配下と思しきケンタウルスたちが瞬く間に散開していく。
鳥が翼を広げたような形で獲物を取り囲んだ彼女たちは、隊長の合図で矢を放つ!
ヒュヒュン!ヒュヒュヒュヒュン!
「ビギーーーーッ!!」
一度に突き刺さった弓矢は獲物に大ダメージを与えた。
巨大猪は大きな悲鳴を上げて、砂埃を巻き上げながらその場で転倒する。
どうやら前足を集中的に狙ったのが功をなしたようだ。
「よし止めを――「止めはもらったあああぁぁぁぁぁっ!!」
獲物の元に駆け寄ろうとしたその時、別の声が岩陰から聞こえた。
岩陰から飛び出したのは白銀の鎧に身を包む女性騎士、
素早く剣を抜き、その場から跳躍すると空中でその身を縦に回転させ、
遠心力と落下の勢いをつけて巨大猪の眉間に剣を突き立てた!
「みぎゃーっ!?」
止めを刺された猪は、その巨体に似合わない意外と可愛らしい断末魔をあげて
その場にぱたりと力尽きた。猪を仕留めた女性騎士…その正体はデュラハンなのだが、
彼女は剣を高々と掲げて勝利宣言をする。
「よっしゃーっ!アサルトボアとったどーっ!」
「なにがとったどーよ!?待ち伏せなんかして…わたくしの手柄を奪うなんて!!」
「あっはっはー、なんとでも言うがいい。仕留めたのは私であることに変わりはあるまい。」
せっかく全力で追ったのにおいしいところを取られたケンタウルスは、
余裕の笑みで勝利宣言するデュラハンに怒り心頭の様子だった。
実はこの二人、こう見えてもこの強国を共同統治する指導者なのだが、
普段はこのように犬猿の仲で、よく喧嘩しているところを見かけることになる。
部下たちも「もう慣れた」といった感じで温かく見守っているだけ。
実に微笑ましい光景だ。
と、そこに
「あ、あれ!?なんであんたたち二人がいるの!?」
「あら…誰かと思えば…」
「おいおい、どうしてお前がここにいるんだ…」
なぜかお隣の国の軍が大勢のスタックを率いてやってきた。
軍を率いる指導者はサラマンダーのようで、真っ赤な鱗に炎が燃え盛るたくましい尻尾、
まるで全身天然警告色の彼女は遠くから見てもすぐわかる。
「いやだって、あたしはあの裏切りオークに拳を叩き込みに行こうと…!」
「あー…はいはい、そういうことね。」
「また道に迷ったのね…。あなたとは通商条約結んでたからよかったものを、
下手に迷って別の国に迷い込んだ挙句勝手に宣戦布告とかやめてほしいわ…。」
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