智鶴がゲーム内でのっぴきならない状況にある中、
204号室に屯する同僚の面々は………
「492…493…494…495…496…497…498…499…500!
ふぅ……二セットはなかなかいい汗かくな!よっしゃ、
鴻池が起きるまでもう一セットやっとくか!」
「暑苦しいわよ油屋。そんなに体を持て余すなら外で走り込んできなさい。」
「おいおい冗談じゃないぜ?ダチを放っておいて外出なんざできるか。」
「私たち執行部がいるから大丈夫よ。あなたがいなくてもなんとかなるわ。」
「そう言いつつ我らが会長はさっきからなに本棚だのベットの下だのを
一生懸命まさぐってんだよ。ヘソクリさがそうったってそうはいかないぜ。」
「あいにく私の目的はちーちゃんのへそくりじゃないわ。
この年代の男子が絶対隠していると言われる例のアレを捜索中よ。」
「おいコラまてや!会長権限使って何やってやがる!」
「先輩方、申し訳ありませんがもう少し大人しくしてもらえると助かりますわ。」
時刻は午後6時を少し回ったころだろうか。
夕焼けの朱色が照らす部屋でいろいろと作業する貫太郎と生徒会役員たちだったが、
状況が特異過ぎて事態の解決の見通しが全く立たないでいた。
とりあえず神近会長と九重副会長は周囲の物品に
何かきっかけとなるようなものがないかどうか念入りに探索し、
風宮会計局長は自分の寮室から持ち込んだノートPCで
目下調査中である。看護は相川書記がやってくれている。
やることのない貫太郎だったが、智鶴が心配なのに加えて
自分のいない間に役員どもが何をするかわからないので
いつもの走り込みをすることもなく、部屋での自主トレに終始する。
「ふっ…ふっ…どうだ風宮、何か分かったか?」
「少々お待ちください。現在シヴィライゼーションの基礎知識を頭に入れるために
シヴィクロペディア(civの用語辞典のようなもの)に目を通していますので。」
「更科津…そんなの見てたら日付変わっちゃうわよ。(←本気でそれくらいの情報量がある)
最近作られたmod類にこれに関係するものがないかだけチェックしなさい。」
「承知致しました。……ふむ。」
「会長、部屋の隅々まで捜索しましたが、怪しいものは見つかりませんでした。」
「じゃあ次は隠し扉を探しましょうか。」
「んなもんあるかよ!男子寮をなんだと思ってやがるんだ!」
「神近会長、そろそろ日も暮れますので今後の予定についても決めておかないと。」
「そうね……」
と、ここで真織は安らかな顔で寝息を立てる智鶴を覗き込むと…
「ちーちゃんったら本当に何をしても起きないわね。
ん〜……ほ〜ほ〜…うりうりっと……」
「おいおい、何をそんなにべたべた触ってるんだ。鴻池は人形じゃねぇんだぞ。」
「まあ見てなさい。」
親指と人差し指を智鶴の眼尻と瞼に添えて、無理やり瞳を
クパァッ
『!?』
起きないとはいえあんまりな力技に、場の空気が一瞬固まる。
「あ、あのですね神近会長、もう少し優しく扱ってあげましょうよ…」
「うふふ♪ちーちゃんの瞳はまるでガラス球のようね。」
「てめぇ……あんまり鴻池をいじったら部屋から追い出すぞ…」
こんなことをしても平然とする真織だったが、
ここでふと九重があることに思い当たる。
「もしかして眼球運動ですか?」
「ぴんぽーん。その通り♪」
「あれか?レム睡眠とかノンレム睡眠とかいうやつか?」
人間は眠っているときに周期的に深い睡眠(ノンレム睡眠)と浅い睡眠(レム睡眠)
を繰り返す。通常は深い睡眠から始まり、1時間半から2時間ほどで浅い睡眠に移る。
レム睡眠の時には身体が眠っているのに脳が活動している状態なので、
瞼を開いてみると、眼球が動いているのが見える。これは睡眠時の
急速眼球ん道と呼ばれていて、脳が活性化している証拠である。
「そろそろ周期の時間だと思うけど
今見たところ、ちーちゃんには眼球運動が見られないわ。」
「はぁ……ですが、それだけではなんとも。」
「ま、いいわ、それよりそろそろ………」
……
学院第2男子寮食堂。
「はい、せーの、いただきます。」
『いただきます。』
テーブルが大きめの喫茶店のような雰囲気の食堂。
とりあえず腹ごしらえをすることに決めた生徒会役員たちと貫太郎は
適当な四人がけのテーブルを選んで腰かけた。
夕食の時間と言うことで第2男子寮住まいの生徒たちでにぎわっているが、
今日はそれだけではなく、寮が設立してから初めて女生徒が
利用するということでどことなく緊張に満ちた雰囲気であった。
「ずいぶん殺伐としてるわね。男子寮っていつもこうなのかしらね。」
「仕方ありません会長。女性の人権擁護法が緩和されたといっても
いまだに我々男子
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