第10期:妹の心姉知らず


今期の格言

今日、私が貴女たち2人を魔物娘化させました。
ですが、貴女たち2人は私に直接お礼をするのではなく、
明日各々が別の2人ずつを魔物娘にしてあげるのです。
明日魔物娘になった4人娘たちは、また別の8人を魔物娘にしてあげます。
こうして魔物娘の輪を広げていけば、一月と少しもかからないうちに
世界中の人が魔物娘となって幸せに暮らせるのです。

堕落の修道女―ルカ・リリライト
 
 
 
 
ヴァルハリア教国第二都市ニヴルヘイム……この国で最も生産力の高い
軍事都市に、この国の王…リチャード・ライオンハートの姿があった。

「騎乗兵の編成は順調のようだな。投石器も、そこそこの数がそろいつつある。」
「はっ、お達しの通り、必要な数の軍勢の生産は終えています。
あとは国境まで運ぶだけです。そして…私めもいつでも前線に出る準備はできています。」

整列する騎馬隊の間を歩くライオンハートとその部下のヒロ。
ここにいるのは全国各地で少しずつ生産した新設の騎乗兵たちで、
その数8ユニット。そこに、エルフとの戦いで鍛えられた剣士部隊も加わり
ユニット総勢は20部隊を超える規模にまでなっている。

「どうかな、戦闘力は一人前になったか。」
「一度実戦を経験すれば無駄な訓練は不要です。
その点トメニア王国は実戦経験がなく最適な相手かと。」
「うむ、あとは………」

「陛下、トメニア王国軍はリートゥス海神連合首都の攻略に失敗し、
さらに主力部隊もダークエルフ軍の奇襲で潰走したとの報が入りました。」

そこに報告を持ってきたのは、フルプレートで全身を覆ったルイーズだった。
これが意味するところは、そろそろ頃合い…ということなのだろう。

「ルイーズ、本当にすべてがそなたの申す通りになったな。
トメニアはリートゥスを攻め、仲の良いダークエルフがこちらに向ける主力を
投入してまで援護する……トメニアはこの後さらに軍を戦線に投入する…
ふむ、これで我が国へ向ける矛先はなく、全力で相手を叩き潰せるわけだ。」
「恐れ入ります。」
「ははは、ルイーズさんを敵に回さなくてよかったよ。
何しろトメニアに支援を行い、戦争に踏み切らせたのはわが国…
そのことに、いまだにどの国も気が付いてない。よくできたものです。」

ヴァルハリア教国は、事前に技術援助と地図を渡す見返りに
リートゥスへの宣戦をトメニア王国に打診したのだった。
トメニアの独裁者ヒンケルは喜んでこの贈り物を受け取り、
嬉々としてリートゥスに宣戦してしまった。
ルイーズが言うには「どうせ滅ぼすのですからどんな約束でもできます」そうだ。

しかしヒンケルも無能ではない。
ヴァルハリアとの国境にある二都市には最低限の守備隊は残しているし、
国内にはまだ軍隊はそこそこ残っている。
が、結局トメニアはリートゥス相手に全力を出していることに変わりはない。

「甲冑を持て!戦が始まるぞ!」

獰猛な獅子は、その牙に滴る血が乾かないうちに
次の標的に狙いを定め、飛び掛からんとしていた。
 
 
 
 

 
 
 
 
 
変わってこちらは、エルフ国家翠緑の護り手とダークエルフ国の国境。
双方ともお互いを嫌いあいながら、不思議とこれまで一度も
目立った諍いも起きず、平和を保ったままの深い森の中。

両国の国境を跨ぐように立っている直径5メートルを超える巨木。
その幹の両側には、 それぞれエルフ種の女性が一人ずつ……
方や白磁のような肌に若葉のような緑色の髪…
方や褐色の肌に銀に輝く髪…


「久しぶり、姉さん。元気そうね。」
「ルーツィエ……あなたが里を飛び出してからどれくらい経ったかしら。」

二人の指導者は巨木を挟み、顔も合わせずに言葉を交わす。

「聞いたわ。あのエロニアを下したばかりなのに、次はトメニアとの戦争…
ずいぶんと暴れているみたいね。私の妹とは思えないわ。」
「私だって戦争したくてしてるわけじゃないのよ。
それに……負けっぱなしのどこかの誰かさんよりはましね。」
「ふんっ……」

お互い剣呑な話から始まるところを見ると、
種族間対立の根深さは相当の様に感じられなくもない。
が、これはほんの挨拶。本題はこれからだ。

「ルーツィエ。あなた…噂によると、どこかの町から人間の男児を攫い、
慰み物にしたあげく『現人神』などに祭り上げた……。あってるかしら?」
「ふぅん、エルフにはそんな歪んだ情報が伝わってるのね。5点ってとこかしら。
残念ながら私とちーちゃんの絆はそんな薄いものじゃないわ。
あの子は……私にとって、もう無くてはならない大切な人なの。
いえ、それだけじゃない。ちーちゃんは私たちダークエルフの
象徴にして希望そのものでもあるの。ちーちゃんに何かあったら
それこそダークエルフ全員が命を懸けて戦
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