ペリコが広げた新聞の記事に書かれていたのは、「古代の貴重な遺物、神聖ステンド国近くの遺跡で発見される」という大見出しだった。
「おいおい、神聖ステンド国つったら、ウィルザードの主神教団のおひざ元じゃ――」
「黙ってろドミノ。内容を詳しく読んでみる」
コレールはそう言うと記事の本文を目で追い始めた。
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――神聖ステンド国の魔物担当大臣、リネス=アイルレット氏が率いる調査団たちが発見したこの遺物は、ウィルザードの伝説に伝わる「魂の宝玉」ではないかという推測が為されており、現在も同国で詳しい分析が進められている――
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「ドミノ。しばらくエミィとこの辺りを散歩でもして来い」
コレールは新聞を折りたたむと、ドミノにきっぱりと言い放った。
「えっ、どうして――」
「いいから行って来い。ペリコ。案内してやってくれ」
ぶつくさ文句を言いながらエミリアとペリコを連れ立ったドミノが出ていくと、残された四人は額を突き合わせて議論を開始した。
「要するに、ドミノを神聖ステンド国に連れてこないといけないってこと? 『ホワイトパレスの悲劇』の後だっていうのに?」
[別に、領地の外で待っててもらえば良いんじゃないの?]
「いいや、それは駄目だ」
クリスに対するパルムの提言を却下するペリコ。
「あいつから……オニモッドから目を離すわけにはいかない。危険すぎる」
「そもそも私たちがステンド国に入国出来るかどうかが問題だな」
アラークが神妙な面持ちで口を開く。
「今は中立派が国を運営しているとはいえ、相手は主神教団だ。加えて我々は良くも悪くも各地で騒動を巻き起こしている」
コレールたちは議論を続けたものの結局明確な解決策は思いつかず、「とにかく神聖ステンド国に向かってから考えよう」という結論に落ち着くこととなった。
――――――――――――――――――――――
――その夜。
「うーん、うーん……」
コレールはペリコの家の寝床の中で、ひたすらにうなされていた。ペリコが森の外から持ち込んだ春本(エルフの森にはそういった類の物品が無いということで、積極的に持ち込んだはいいものの、それが原因で村の若エルフの中でおかしな風潮が流行っているらしい)を読んでいたら、「ほのぼのおねショタものと見せかけて、途中で汚いおっさんが乱入してショタの目の前でおねが寝取られた」という悲劇に遭遇してしまったことが原因である。
「ねぇ、コレール?」
そうこうしていると、ペリコが忍び足で彼女の寝床に近づいてきた。
「……うお! 何だ、夜這いか?」
「そうじゃないわよ! パルムについて話があるの!」
「えっ? パルム?」
コレールはペリコに連れられて、月明かりの差し込む工房へと足を踏み入れた。
「……ねぇ、コレール。貴女はパルムのこと、どう思ってる?」
「セックスしたい」
「自分に正直で結構」
ペリコは苦笑しつつ工房内の椅子に腰かける。
「もしあの子と単なる友人以上の関係となりたいのなら……あの子が喋ることの出来ない理由を教えておく必要があると思ったのよ」
ペリコは静かに息を吐いてから、コレールにパルムの半生について語り始めた。
「私とペリコはハーフエルフ……父親が人間だったの。変わった人だった。『ウィルザードのエルフ文化研究の第一人者』とか言ってこの森に来て、何度も森のエルフに叩き出されても、めげずにコンタクトを取ろうとして、結局エルフたちの方が折れて、この集落への滞在を許されたんだって」
「それで……そこのエルフの女性と結ばれて、産まれたのがお前とペリコだったってことか」
「そう。お父さんは私とパルムに、外の世界のことをたくさん教えてくれた。私はいつか賢者の森の外に出て、色んな物をこの目で見たいと思うようになって、お父さんはその時のためにって、自分の子供時代の作業着と、このゴーグルを譲ってくれたのよ」
パルムは手の中の古ぼけたゴーグルを指先で撫でながら、呟いた。
「ある日、お父さんはパルムを連れて珍しいキノコを探しに行ったの。そうしたら、賢者の森の遺跡を荒らしに来ていた盗掘団と鉢合わせになってね。隠れてやり過ごそうとしたんだけれど、パルムが怯えた声を出しちゃって。お父さんは連中の注意をそらすためにわざと挑発して、自分だけが追われるようにしむけて、そして……」
パルムの声色に震えが混じったのを察したコレールは拳を握り、唇を噛み締めた。
「……ごめんなさい。盗掘団は捕まったけど、お父さんは重傷を負っていて、そのまま3日後に死んじゃったの。パルムは『自分のせいだ』と思うようになって、お父さんの使ってたバンダナを覆面に使うようになって、それからどんど
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