「くそぉっ!」
ギャングの一人が突き出した剣を、身を翻してかわすコレール。突き出された手首を掴んで男の肘をへし折ると、男は悲鳴をあげて地面の上をのたうち回った。
「くそっ、なんてリザードマンだ! 剣も持たずに……!」
コレールの足元には既に何人もの兵士やギャングの体が転がっており、対峙する他の連中たちの腰もすっかり引けていた。
「来ないならこっちからいくぞ? クリス!」
ちょうどギャングの一人を衝撃波で吹き飛ばしたクリスが振り向き様に魔杖を振り下ろし、巨大な氷塊を出現させる。
その氷塊に向けてコレールは構えをとると、体全体を使った渾身の回し蹴りを打ち放った。
「おい、逃げろ!」
兵士の一人がその意図に気づいた時には手遅れで、無数の氷の礫が集団に襲いかかり、男たちを薙ぎ倒していく。
「一人ずつかかろうとするな! 大勢で一斉にかかれ!」
見かねたバトリークの指示にしたがって、3人の兵士がコレールの体に組んでかかる。何人かのギャングも兵士に続いてコレールを金物屋の方へと押し出し始めた。
「放せい!」
コレールは組付いてくる兵士の一人の背中に何度も肘打ちを振り下ろすが、皮の鎧越しの、それも背中では致命的なダメージを与えることはできない。
「コレール! ――あっ!」
隙を見せたクリスに兵士の剣が振り下ろされるが、彼女は寸でのところで魔杖を使いこれを受け止める。
「うおおっ!」
耳障りな金属音を立ててコレールの体が金物屋に突っ込んだ。がらくた越しに止めを刺そうと兵士とギャングたちが各々の武器を構えてコレールににじり寄る。
バコォンッ!!
「ぶぎゃっ!」
「何いっ!」
コレールは槍を突き刺そうと飛びかかった兵士の顔面を、咄嗟に右手で握りしめていたフライパンでぶん殴った。
慌てた兵士の突き出した剣先も左手のフライパンで逸らし、そのまま脳天に叩きつけて気絶させる。
一斉にナイフを突き刺そうとしたギャングたちも、思っていた以上に頑丈なフライパンで攻撃を防がれ、瞬く間に叩きのめされていく。
「ぐおっ!?」
兵士の一人が背後からメイスで殴り掛かろうとしたが、コレールは身をかがめて横薙ぎの攻撃をかわし、男の脛にフライパンで強力な一撃を喰らわせる。
バコッ!
バコッ!
バコッ!
バコッ!
バコッ!
激痛に思わず膝をついた兵士の顔面に対して、コレールは無慈悲なフライパン往復ビンタを喰らわせてから、地面に蹴り倒した。
コレールから少し離れた場所では、クリスがアラークと共に互いの背中を守りながら押し寄せる敵を捌いていた。
「このっ!」
兵士の振り下ろした斧を魔杖の柄で受けとめ、刃を食い込ませたまま杖を回し、体勢を崩した兵士の腹部に衝撃波を叩き込む。横から襲いかかるギャングたちの攻撃は魔法を使うまでもなく、巧みな杖さばきであしらっていた。
「魔術師! あの猫を何とかしろ!」
バトリークに発破をかけられた数人の魔術師が、クリスに向かって魔法封印の術をかける。素早い詠唱で封印の術を解いたクリスだったが、その一瞬の隙を突いて兵士の一人が斬りかかろうとした。
「クリス!」
アラークはすかさず側にいたギャングの顔面に頭突きをかまして捕まえると、ナイフを握ったままのその男の体を兵士の方に向けて背中を蹴飛ばした。
「ぐええっ!」
背中を蹴られた勢いで兵士の体にぶつかったギャングの男は、ナイフを兵士の太股に刺してしまい、そのまま二人揃って地面へと倒れ込む。
「調子はどうだ、クリス?」
「ありがとう。でも心配ご無用よ」
手を差し伸べてくるアラークに向かって、クリスは毅然とした態度でムッと胸を張った。
「くそ……たった4人にどうしてこんなに苦戦するんだ! とっととけりをつけるぞ!」
そう叫ぶ兵士の眼前の地面に一本の弓矢が突き刺さり、威嚇する蛇の様な音をたてる。
兵士がその正体に気づく前に矢にくくりつけられていた爆薬が炸裂し、爆風で空中に投げ出された兵士たちの姿を見た野次馬たちの中から歓声があがった。
「どいつもこいつも役立たずのカカシばかり……ラグノフ、デカルト! 二人とも行くんだ!」
バトリークの命令を受けて、全身を甲冑で覆った二人の兵士――1人はかなりの大柄で、もう1人は小柄な体格である――が彼の側から離れ、前線へと向かっていく。
「ハーン! お前も凍ってないで少しは働け! お前1人に一体幾ら払ってると思っているんだ!」
バトリークの言葉に呼応するかのようにハーンの体を覆っていた氷にヒビが入り、氷塊の中から湾曲した刃のカランビットを両手に握ったハーンが姿を表した。
「たっく、うるせえな……」
ぶつぶつと愚痴を呟きながら、兵士やギャングたち相手に大立ち回りを演じるコレールに
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