第12話「奈落@」

コレール達はアラークの案内で、色鮮やかな絵画やまるで生きてるかのような躍動感を持つ石像が飾られた、城の大広間を訪れていた。

「なぁ、ボス」

ドミノは暫くの間眺めていた裸婦画から視線を外すと、クリスとエミリアに風景画の着眼点を説明するアラークの様子を伺いながら、小声でコレールに話し掛けた。

「どうした」

「アラークのことなんだけどよ……」

「あぁ、言いたいことは分かってるよ。妙に馴れ馴れしいからな」

精巧に造られたサラマンダーの石像を眺めながら呟くコレール。

「ボス。何か狙われる心当たりでもあるのか? 女王陛下でも欲しがるような宝を持ち歩いているとか」

「ん……まぁ、無きにしもあらずってところだ」

コレールはそう言うとサラマンダーの石像に手を伸ばし、その頬をゆっくりと撫で上げた。

「それにしても、本当に精巧に彫られた石像だな……まるで、生きてるみたいだ……」

石像のすらっとした鼻筋に人差し指を滑らし、横に立っているドミノに視線で合図を送る。その意図を読み取ったドミノはアラークに気が付かれないようにしながら「生命探知」の魔法を発動した。

「くそっ、思い過ごしであってくれよ……」

淡い光を放つ手をサラマンダーの石像にかざす。

「あぁ、何てこった……ボス!」

目の前の石像に宿った魂に反応して、ドミノの右手が赤い光を帯びる。これではっきりした。ここに飾られてある石像は生きているかのように彫られているのではなく、「本当に生きている」のだ。

「『石化の呪い』だ……! クリス、エミィ! そいつから離れろ!」

コレールはすぐさま振り向いてクリス達に警告を発したが、遅きに失した。驚くクリスの背後で銀色の光が閃いたかと思うと、次の瞬間には彼女の首筋から赤色の煙の様なものが噴き出していた。

「クリスさーー」

エミリアが言い終わる前に、アラークは二の太刀で彼女の喉を切り裂いていた。ホブゴブリンの少女が悲鳴をあげて崩れ落ちるのほぼ同時に、広間の扉が開け放たれ、衛兵達が雪崩れ込んでくる。

「私は二振りの剣を持っている。片方は敵を生け捕りにするため、そしてもう片方はーー」

アラークは魔力に傷をつけられ、行動を封じられたクリスの喉元に、鋼鉄製の方の剣を突きつけた。

「敵を殺すためだ。二人とも、動くな」

大勢の衛兵に背後をとられ、加えて人質まで取られたコレールとドミノは、無抵抗のまま縛り上げられるしかなかった。

「くそくそくそ……! やっぱり罠だったんだ……!」

歯軋りするドミノの後頭部に、衛兵の一人が剣の柄で打撃を加える。コレールの方は首筋に何か薬品のようなものを注入され、二人の意識はそのまま闇の底へと堕ちていった。




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(手早く運べ。途中で目を覚まされたら面倒だ)




(おい、拷問部屋に運ぶのは、リザードマンだけで良いのか?)




(ああ。こいつらは俺たちに任せろ)




(分かった)




(すまない、みんな……)





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「ぶあはぁっ!?」

顔面に冷水をかけられた衝撃で、コレールの意識は無理矢理闇の中から引きずり出された。

「起きろ、魔物」

声の主は、整った顔立ちに嗜虐的な笑みを浮かべた男だった。サンリスタルの衛兵のそれとは明確に異なった、黒を基調とした革の鎧を身に着けている。

息を荒げながら視線を下に向けると、金属製の椅子に縛り付けられた自分の体が目に入った。四肢は拘束具で完全に固定されており、鱗に覆われた手のひらは、手すりの先端、中で小さな稲妻が迸っている水晶玉を握らされている。

視線を周囲に向けると、鉄の処女や血錆びた鎖などの拷問器具がところ狭しと並べられており、今から自分がどのようなことをされるのかということを、一瞬で理解させてくれた。

「さて、コレール=イーラ……納得のいく答えを期待しているからな」

拷問官の男はそう言うと、壁に取り付けられた木製のレバーに手をかける。

「あのケット・シーの持っていた杖に取り付けられた蒼い宝玉……何処で手にいれた?」

「その前に教えろ。クリスたちは何処へやった!」

拷問官がレバーを下に下げると、コレールの全身を雷の直撃を受けたかの様な衝撃と痛みが襲った。

「かはっ……は……!」

「質問に質問で答えるなーーーっ!! 心臓えぐり出されてえのかこのダボがーーーっ!!!」

拷問官はレバーを上に戻すと、側にあった木箱の上にドカッと座ってパイプを吹かし始めた。

「……まぁいいさ。質問に答えてやるよ。どうせお前もすぐにあの広間で、女王陛下の戦利品でもある石像として、一生を送ることになるんだからな」

「……!」

「あんたが言ってるのは、ケット・シーとホブゴブリンと、あの若
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