「・・・・ふぅ、これで終わりっと♪」
明かりの少ない職員室で名簿や教材リストの全てにチェックを入れていたアラクネの女性「ラニィ」は、その仕事を全て終えてだらしなく背伸びをしていた。
彼女以外にこの部屋には誰も居ない。
別に休んでいるとかではなく、ただ単に彼女が夜の遅くまでがんばっていただけの事。
その彼女の顔は、疲れを吹き飛ばすかのように笑みが零れていた。
「(明日が楽しみだなぁ♪)」
彼女が翌日を楽しみにしている理由。
それは、彼女の思い人に関するものだった。
翌日の授業欄の所には、「一時間目:教授招待による植物の徹底的な勉強@講師はラニィ先生とリーフ教授にて行う。」と書いてあった。
―――――――――――――――――
そしてあっという間に翌日が訪れた。
彼女の家で存在感をそれなりに見せつけている大きめの日めくりカレンダーには、七月七日と書かれていた。
世間は七夕で盛り上がっている事だろう。
数日前から、何通かラニィの家にも招待状が送られていたのだ。
それも、送り主は皆、ラニィが昔教えていた生徒たちばかり。
周りの掲示板は七夕の事で一色になっている。
そんな光景を見ることも無く、ラニィはリーフへの思いばかりを募らせて学校へと急いだ。
―――――――――
「今日はリーフと一緒に・・・フフフッ♪」
「えっ?僕がどうかしたって?」
「うんうん!今日はリーフと一緒に・・・って、リーフッ?!」
興奮に胸を躍らせながら職員室へと向かっていたラニィは、横を歩いているリーフに気が付きもしなかった。
リーフが声を掛けてやっとその存在に気付いたラニィは、先程までリーフの事で頭がいっぱいになっていた自分を隠す様に慌てて視線をそらす。
「・・・僕ってそんなに影薄いのかなぁ・・」
「そ、そんなことないわよっ?!リーフはひといひびゃ・・っぅ・・」
ラニィに気付いて貰えなかったリーフは自分の影が薄いと1人で思いこんでしまってすこし俯く。
それを慌てて慰める様に、ラニィはリーフの顔を覗き込んで必死にリーフの事を褒めようとした。
だが、それを邪魔するかのように自分の舌を噛んでしまい、その痛みの所為で者bることも出来なくなってしまう。
「ははっ!ラニィ、お久しぶり♪」
「り・・・・リーフ・・・」
なんだか良い雰囲気になって来たが、それも束の間だろう。
あっという間に職員室へは着いてしまったのだから。
無情に過ぎる楽しい時間を悔しく思いながら、ラニィは扉を開けてリーフと別れる。
と言っても、直ぐに隣の校長室から出てきてすぐに彼の紹介が始まるが。
――――――――
すぐに職員たちと馴染みになっていたリーフは、もう少しで始まる一時間目のプリントの整理をしていた。
「うわぁ、リーフさん・・・整理早いですね〜・・・」
「ホントホント。どうすればそんなに早く出来るの〜?」
「今度アタシにも教えて〜?」
リーフの両隣 向かいの席の女性教師(右:ワーラビット 向かい:ワーウルフ 左:ワーバット)がリーフに殺到した。
皆の言っているリーフの手際の良さは、リーフが学者をしているという点を考えれば簡単に想像は着く。
まぁ、科学者とかは助手に整理や引き出しを頼むものだろうが、リーフはよほどの事が無ければ助手であり妻でもあるネルを呼んだりはしない。
ネルが「もう少し助手のお手伝いしたい」とお願いしてくるほど、リーフは何でも一人でできてしまうのだ。
「えっ?これくらい簡単ですよ?」
「その簡単が出来ない私たちって一体・・」
「わわぁっ!メーラ、気をしっかり!!」
「リーフさん・・・ちょっといいですか・・?」
リーフの一言で自分が無能だと勘違いしてしまったメーラと呼ばれたワーラビット。
それを慰めるように傍に駆け寄るワーウルフ。
その二人をまるで計画的に引かせることに成功して、かすかな笑みを浮かべながらリーフの傍にすり寄るワーバット。
「えぇと・・・・一目ぼれって言うんでしょうか・・・その・・・付き合ってくれませんか?」
「いや、僕には妻がいるし・・・あっ!買い物に付き合ってとかだった?それだったらいいけど・・」
顔を真っ赤にしながら告白をした彼女だが、リーフの一言で玉砕される。
なんだか背景に大きなゴシック文字で「ガーーーン!」と文字のアーチが掛かっていそうで面白い。
その幾つか向こうの席でとっくに整理を終えたラニィは、その様子を見て何故かガッツポーズ。
更には、周りの女性教師数人も、ハラハラしていた胸を安心して撫で下ろしている。
そんなにスリルのあったワンシーンだっただろうか。
「あ〜・・・え〜・・リーフ?」
「ん?ラニィ?どうしたの?」
「えっ!?リーフさんと・・ラニィ先生って・・」
『うん、(リーフ:昔の学友)(ラニィ:
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