「何してんのさっ!」
「ゴメンゴメン。仕事が――」
「うるさいっ!?全く、レディを待たせるなんて、どうかしてるわ・・・」
ここはとある有名な公共公園。
川のせせらぎを聞きながらこの青年と一人の少女が待ち合わせをしていた。
「ゴメンってば、ベル。な?許してくれよ?」
「イヤったらイヤ!」
顔を膨らませてそっぽを向くベル。
そんな仕草が可愛くて、ついつい彼女の頭を撫でてしまう。
それがまた撫で心地の良い頭で、撫でる度に心地いいほどに手が滑らかに髪を滑り落ちる。
その触り心地は心を和ませてくれている。
「・・・・ところで、デートって何すんのさ・・」
「ん?とりあえず・・・・・公園で寛ごうか?」
そう言うが早いかベンチに座りこむベル。
その表情は「早く来い!」と訴えかけてきているようだった。
「と・・・隣に座りなさいよ・・」
「はいはい・・・」
少し間を開けていたのがいけなかったのか、ベルは自分のすぐ横をバンバンと叩く。
まるで我儘を押し通そうとしている子供の様である。
「ん・・・」
ベルが、俺こと「ヘイル・ギュンター」に凭れかかる。
その安心しきった顔は、本当に可愛い物だ。
身体の一部を除けばだが。
「アイタっ?!」
「あっ・・・・なんで私のお腹に当たってるのよっ?!」
そう、彼女はベルゼブブ、(自称)蝿の女王である。
どうやら彼女はその「女王候補」の中で最も優秀な1人らしいのだが、そんなお嬢様が何故俺のような平凡な男と付き合っているのか。
それは、1週間前までさかのぼる。
―――――――――――――――――
あの時、俺はまだベルの存在を知らなかった。
いつものように学校を終えて家に帰り、特に何をするでもなく怠慢な日々を過ごしていた。
「はぁ・・・・何か面白いものは起こらないモンかなぁ・・」
ベットに寝転んでそんな本末転倒な事を考えていた俺は、そんな考えを芽生えさせた事に後悔を覚える。
意味も無く考え込んでいたその時、空の方から何かが飛んでくるような音が聞こえた。
どうせ何か落下物でも落ちて来たのだろうと思うには少々音が大きい。
まぁ、近くに落ちるだろうから後で見に行ってみよう。
そう考えていた。
ドゴォォォォォォォォォォォォン!?
それは、突然に降って来た。
斜め45度から飛んできた「何か」は、俺の部屋の壁を突き破って俺の目の前で制止した。
あまりの出来ごとに驚きが隠せないでいる俺は、とりあえず飛んできたものを見ようと近づく。
「・・・ぐぅぅ・・」
「なっ?!」
そこにいた「何か」
それは、ヘイルよりも4〜5つ程下に見える幼い少女だった。
幼い少女、略して幼女・・・そんなことよりっ!
親方ァ!空から女の子が!!
これも違う!
「ど・・・・どうすればいいんだ・・・これ・・っ?!」
この女の子をどうしようか迷っていた矢先、視界に人間ではありえない構造が眼に入る。
まず、先程は良く見ていなかったが、頭から一対の触角の様な物が生えている。
ツインテールの髪型と合わせると、なんだか触手が4本あるみたい。
次に、彼女の腕は人間の物では無い。
もっと違う、蟲のような腕。
次に、背中から生えた彼女と同程度の大きな羽根。
そこには、まるで自分が海賊であるかのようにドクロマークが描かれている。
タトゥーのようなものなのだろう。
「ちぃぃ・・・キアラの奴・・・どれだけぶっ飛ばせば気が・・」
「あのぉ・・」
「あぁっ?!」
「ひぃっ!?な・・・なんでもありませんっ!!」
これが、ヘイルとベルの出会いだった。
それから、ベルは半分ヘイルの家に居候する形でヘイルの家に住んでいる。
しかし、実質はベルの独壇場。
何かあるごとにヘイルに手を出しては不貞腐れる。
そんな子供の様な彼女ではあるが、可愛い所もあったりする。
「――えと・・・・ヘイル・・」
「ん?何?」
「その・・・トイレ・・」
どうやらトイレに行きたいらしいが、場所でも分からないのだろうか。
そんな事を考えていると、彼女はヘイルの服の裾を引っ張ってくる。
「一緒に来てくれない・・?」
「っ!いいよ?」
その時の泣き出しそうな顔にドキッと来てしまったヘイルだが、それを平常心の中に紛れ込ませて難を逃れた彼は、そのままベルについていった。
所変わって、こんなお話もある。
「それじゃ、買い物頼んでいいかい?」
「なんでアタシが・・・・まぁ、いいけど・・」
そう言ってOKしてくれたベルに、ヘイルはメモ用紙とカバンを手渡す。
それを持って彼女は家を出た。そこまでは良かったのだが・・・
「キャァァァァッ!?!」
「っ!?ベルッ!?」
家の目の前でベルの悲鳴が聞こえたヘイルは、慌てて家を飛び出す。
そこで見た物とは・・
「キャンッキャ
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