今日もどす黒い雨雲が雨を降らせる。
そう、今月は梅雨とも呼ばれる6月。
誰もが思ったのではないだろうか、「雨ばかりだと気分も滅入る」と。
しかし、そんなジトジトした梅雨も跳ねかえすような明るいカップルがそこには居た。
「おぉうっ!リアラ!今日も元気だなッ!」
「うん、そうだね鏡ちゃんっ♪」
花屋の店先で並ぶ花達に祝福されるかのように明るく、まるで踊っているかのようにじゃれ合う二人がいる。
男の方は「水嶋鏡之助」と言う、この辺りに住んでいる侍である。
女の方は「リアラ・リステール」と言う。
彼女は外国からの来訪者で、元々は親と一緒にこの花屋を経営していた。
しかし、数年前に両親を火事で亡くしてしまう。
そこへ飛び込んできた仲の良かった鏡之助と意気投合。
そのまま恋人同士として付き合っているのである。
以上、説明終わり!
「鏡ちゃん鏡ちゃんっ!今度のお茶会、一緒に行こっ?」
「ん?あぁ、言っていたな!ぜひとも行こうな!」
まるで梅雨の暗さなど寄せ付けないかのように明るい二人は、そのまま明るい笑顔を崩す事無く別れた。
まるでそれを待っていたかのように、晴れ渡った空が鏡之助を照らしてリアラを陰らせた。
「♪♪〜♪」
笑顔で周りの片付け諸々をしていたリアラは、店に入ってくる一人の女性を見ていつもの満面の笑みで迎えた。
「いらっしゃいませ〜♪」
「えぇ、ごきげんよう。」
店に入って来た女性は、恐ろしい程に美しく、その着物にも高級感が滲み出ていた。
どこかの富豪かと周りの人は思うだろうが、リアラはそんな事気にも留めずにいつも通り花に水やりをしている。
「ふんふふ〜ん・・・あれ?マチさん?」
「あら、ここってリアラさんのお店だったのね。」
花選びをしていたらしいマチは、たまたま気が付いたリアラに声を掛けられてやっとここがリアラのお店だと気付く。
どうやら何かで花を用意する必要でもあるのか、見ている花は生け花に使用するような高級な花や、綺麗な花ばかりだった。
因みにこのマチさん《本名は街角 眞智恵》は、ここから少し行った所にある大きな屋敷の大奥であるらしいが、詳しい事は何一つ分からない。
元々、不必要な事は不用意に喋らないマチさんだが、彼女にも彼女の理由があるのだろうという簡単な理由でみんな真実を聞こうとはしない。
「今度のお茶会、楽しみにしてますねっ♪」
「フフッ・・・そうね、私も楽しみだわ・・・」
そういうマチさんの表情は、何処か妖艶めいていた。
それは、お茶会を楽しみにしているそれとは何かが違っている様な気がする。
しかし、そんな微妙な違いに気付くほどリアラは敏感では無かった。
「それじゃ、これを頂くわね?」
「はぁい♪えぇと・・・百合に薔薇・・・これだけなんですか?」
「えぇ、ちょっと少ないでしょうけど、これでいいのよ。」
「わかりましたぁ♪それじゃ、合わせて――」
お互いに笑顔で話しあっている姿は、本当に綺麗としか言いようがなかった。
周りの客も、その美しさに見惚れて花選びが疎かになっている。
中には、その場で立ち止まってガン見している客までいる始末。
しかしそれは、マチが会計を済ませて代金を払いお釣りをもらい、梱包された花を受け取ったと同時に終わった。
客たちの視線に気が付いたマチが一言「何かご用でも?」と、笑顔を振りまいて聞いたからである。
それまで二人の様子に見惚れていた客も、その笑顔の裏が怖くて視線を逸らしてしまう。
リアラはそんな様子を見ても何も感じないのか、キョトンとした顔でその様子を見ていた。
――――――――――――――――――――――――――
それから数日後、予定されていたお茶会は滞りなく開かれた。
天気は快晴で、遠くの方まで雲ひとつない。
そんな天気のいい日に、こうして広い場所(城の中庭)で茶菓子を食べたりお話したりして過ごすのである。
「・・・・リアラ・・・・俺、此処に居て本当に良いのか・・?」
「何言ってるの鏡ちゃん?鏡ちゃんも一緒じゃなきゃイヤだって言ったんだよ?」
「いや、それは俺一人だと絶対ヘマをやらかすと踏んでいたからだな・・」
「あら、リアラさんと鏡之助さんだけですか?」
「わぁ、マチさんすっごいキレー・・・」
予め来て置いた二人は、中庭の適当な位置に布を広げて座れる場所を確保して、そこに座っていた。
ガチガチに緊張している鏡之助は、段々と自分の場違いさを実感し始めている。
それを宥めるようにリアラも言うのだが、鏡之助はより消極的になってしまう。
そこには、いつもの明るさ抜群のカップルの姿は無かった。
あるのは、ガチガチに緊張してしまっている一男子一名と、それを宥めるようにしている一女子が一名のみだった――さっきまでは。
暫く口論をしていた二人の前に、マチがきんちゃく袋を持って
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