森林に囲まれた場所にポツンとある一軒家。
ここには、面白おかしい兄妹が住んでいた。
1人はこの家を管理しているしっかり者の兄「霧雨 宗谷」
1人はお調子者の御転婆娘であり家のムードメーカー「霧雨 奈子」
「ナコ〜?今日の夕食どうする〜?」
「うぅんと・・・・いろいろ〜♪」
奈子は何と言ってもその可愛さで癒してくれる。
もう14歳だと言うのに幼児体型で、本人もそれを気にしている。
頭頂部から生えている様な逞しいアホ毛は、彼女の思考を表しているようにも見える。
怒っている時には上下に揺れたり、照れている時は8の字を描くようにユラユラ揺れていたりするのだ。
二人の名前が少し外国人寄りに聞こえてしまうのは、彼らの母親が遠い国の人間だからである。
このジパングで生まれたからには、ジパングでの名前でなければいけない。
そう言う事で、二人ともそんな名前だったりするのだ。
「いろいろかぁ・・・・よっし、今日はいろいろ作るか〜!」
「やったぁっ♪」
「ナコや〜ん?!」
「あっ!エミちゃ〜ん!」
献立を決定した所でやってきたナコの友人に引っ張られたナコは、そのまま疾風のように遊びに行った。
そのまま流れで家に一人きりとなった宗谷は、改めて献立を考え始めるのだった。
―――――――――――――
数時間後、買い物から帰って来た宗谷は、玄関口に捨て置かれていた読売を拾い上げた。
別に契約して購読している訳ではないのだが、宗谷はこの辺りの人間とは仲が良い。
故に、誰かがサービス的に入れてくれたのだろう。
しかし、いつものように皆への感謝をしながら読んでいた宗谷の顔は真っ青になる。
緊急告知!能美之市場にて魔胞子散布確認。至急、近隣の住民に避難勧告!
先日未明、奥州の辺境「真菜村」の総合市場「能美市場」にて魔力を伴う茸の胞子が大量に散布された。
現場は大混乱と成り、次から次へと職人、客人、要人等々が女性に押し倒されて行った。
即時に近隣の郡村に住まう住人に勧告を要請する物とする。
以上の事が、とても大きく取り上げられていた。
「ん?確かナコ、エミちゃんと遊びに・・・・っ?!」
荷物を降ろした宗谷は、不意にそんな事を考えて大事な事を思い出す。
確か、ナコがエミちゃんと呼ぶ友人は1人。
「牧野 恵美理」奈子と同じ14歳の少女だ。
ナコと違って大人っぽい体型なのだが性格は子供じみていて、なんだか懐かれている。
その子の家は確か「真菜村」だった筈だ。
「まさかね・・・・」
「おにいちゃん・・・・ただいまぁ・・・」
不安な考えを否定したいと思い始めていた宗谷の後ろから聞きなれた声が聞こえた。
そこには、顔を真っ赤にしたナコが立っている。
風邪でも引いているのかと思って、ナコの衣服の乱れを直してから抱きあげた宗谷はそのまま布団へとナコを運ぶ。
「大丈夫か・・?熱もあるっぽいぞ。」
「はぁ・・はぁ・・・大丈夫・・・・ちょっとね、身体がムズムズするだけなの・・・」
息も荒げにそう告げたナコだが、明らかにその表情は苦しそうにしている。
すぐさまタライに水を満たして濡れた布巾を額に乗せた宗谷は、暫くの間ナコに付き添っていた。
―――――――――――――――
「ねぇ、お兄ちゃん・・・・・ナコね・・?お腹空いちゃった・・・」
「ん?あぁ、それじゃ待ってなさい。作ってあげるからね。」
ナコの手を握っていた宗谷だが、ナコの空腹の訴えを聞いてすぐさま頭の中のスイッチは料理をすることへと切り替わった。
そのまま今日の献立にするつもりだった食材を取り出して行く。
暫くして、料理が出来あがった宗谷は、隣の部屋で寝ているナコの元へ料理を運ぶ。
しかし、そこにはナコの姿は無かった。
あったものと言えば、脱ぎ散らかされた浴衣と、派手にめくられた布団、そして畳に幾つか生えた小さなキノコくらい。
不安に思った宗谷が、料理をその場に置いて家を飛び出したが、そこには人っ子一人いなかった。
「ナコ・・・・一体どこに・・・」
「キノコ・・・男のキノコ・・・・うふふふっ・・・・」
静まり返った村を気にもせずナコの事ばかり考えていた宗谷は、その場を駆けて探しに行こうと動いた。
暫く行くと、知っている家の前で人の声が聞こえる。
この声は、いつも野菜を譲ってくれる八百屋のサチさん。
だけど、なんだか声に生気が無い様に聞こえる。
しかし、足を止める訳にもいかず宗谷はそのまま村を飛び出した。
「ナコ〜〜っ!?ナコ〜〜〜っ!?」
大声で走りながら叫ぶ宗谷だが、一向にナコの姿は見当たらない。
料理の時間は、用意に手間取っていたのを考えてもせいぜい30分。
そう遠くまで行けない筈なのだが、ナコの姿はどこにも無かった。
「はぁ・・・はぁ・・・何処に・・・」
「ナコやぁん・・・
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