「女王様、今回のたねう……夫の候補者を捕獲してきました」
「今確実に種馬とか言おうとしてたよねっ!?」
「うるさいっ!女王様の御前であるぞ!?」
「ひぃっ!」
四肢を縄で縛られ、僕こと「先見 裕也(さきみ ゆうや)」は訳の分からない場所にぶら下げられていた。
まるでジパングという国がとてつもなく狭いのだとでも思わせたくなるような広大な広さを誇る、神殿の様な部屋が視界を埋め尽くす。
壁の至る所が白っぽい橙色の粘液で満たされていて、甘い香りが部屋の中に充満して中に居る者の脳を刺激する。
今現在、裕也は自身を捕えた女性(名前は知らない)に拘束され、棒の様な物にひっかけられて荷物のように吊るされていた。
それと言うのも、時間は数時間前に遡る。
――――――――――――――――――
「さて、今日は寺子屋を飛び出して、青空教室でも行うかっ!」
『はーーい♪』
いつもと同じように、年端も行かない子供達を引き連れて裕也は長屋から出てくる。
その後を追うように10人程度の子供たちが列を成して彼の行く道を付いてくる。
「せんせー、今日はどんな所であおぞらきょーしつするの〜?」
「そうだなぁ……裏山のでっかい樹の上なんかどうだ?」
「やった〜♪」
数人の女の子が、裕也を取り巻くように囲いながら質問を投げかけてくる。
彼がそれに答え指差す方向には、少し盛り上がった小さな丘の様な場所があり、その頂上には他の樹の倍はあろうかと言うような大きな樹が存在している。
ここの村人の全てがその存在を知っており、一種の神木の様な物として扱われている。
樹齢ははっきりとはしていないのだが、相当昔からあの場所に鎮座しているらしい。
故に神木と謳われている訳だが。
「ほんと皆好きだよなー、あの木」
「だってあの木、たまに色んなのが落ちてくるんだよ?」
「へー」
子供たちがその神木を好いている理由は、信仰心だけではない。
実はあの大樹、時折吹く強い風などで枝が強く揺れると、上の方から果物が降ってくるのだ。
降ってくるものは林檎であったり蜜柑であったり柿であったりと、何故か疎らであり、それも神木と謳われる要素の一つとされている。
因みに、裕也も知ってはいたのだが自分で手を伸ばしても何も振って来ない為、半信半疑の心持ちである。
「さって、着いたぞー」
「わーい♪」
あっという間に丘を登り切り、目的地へと到着した一行は、到着と同時に自由行動となった。
男の子はそこら中を走り回って鬼ごっこやかくれんぼに勤しみ、女の子は他の女の子と一緒に集まってままごとや言葉遊びに興じている。
しかし、良く見ると大樹の根本で一人だけ座り込んでいる女の子を見つけた。
「(あんな子、ウチに居たかな…)……どうしたー?遊ばないのかー?」
「……ッ…」
座り込んでいて良くは分からなかったが、まるで触角のような髪の毛がピクピクしている少女だった故に裕也はすぐにその子の特徴が覚えられた。
特に何かするでもなく、日陰でただ座り込んで俯く少女が気がかりになった裕也は、少女へ手を伸ばす。
「ほら、そんな所に居ないで一緒に遊ばないか?」
「……せん…せ…」
少女に声を掛けて、やっと裕也は少女が何をしていたのかに気が付いた。
泣いているのだ。
俯いたまま一向に動じず、地面にノの字を只管書いていた少女は、その頬を涙で濡らしていた。
「どうしたっ?!誰かに虐められたのかっ?!」
「ぇぅ……ちがっ…ひぐっ…」
慌てて少女の傍へ駆け寄る。
そこまで来てやっと分かった事がいくつかあった。
まず、彼女の傍まで来て、彼女の触角っぽい髪型だとおもっていたものは、本物の触角だと言う事が分かった。
髪の淡い栗色の髪と全く違う、ドス黒い色をしていたのだ、それは。
それともう一つ、少女には他の子供と違う点があった。
彼女の腰からは袋の様な物が膨らんで伸びていて、先には鋭い棘の様な物が獲物を狙うかのように光っている。
その袋は、黄色と黒の縞模様で出来ていて、まるで虫や植物が用いる「警戒色」のように思えた。
黄色や黒、それらの組み合わせは人間を含めた動物の本能に対して警戒心を持たせるとか何とか聞いた事があった裕也である。
しかし、それらの話を聞いたのですら何年前かも思い出せず、思い出す事すら出来なかった。
「き、君は一体…」
「姫様ぁ!」
「ぐふぅ?!」
少女の正体に疑問を持った裕也。
だがしかし、次の瞬間には身体の自由を奪われていた。
「リカ姫様っ!御無事でしたかっ?!」
「えぐっ……す…すず…」
「あががが…」
横っ腹に強烈な痛みを感じ、そのまま木の根もとに叩きつけられた裕也。
そんな彼など知らず、泣いていた少女の元へ一人の女性が飛んでくる。
そう、文字通り「飛んで」来たのだ。
背中に生え
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