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「何処なんだよ・・・・ここ・・・」
此処は一面の銀世界に囲まれた雪景色の真っただ中。
そこに一人の少年が投げ出される様にポツンと一人で立っていた。
「此処は私たちの実験施設敷地内部です。と、氷沙は周りを見渡しながら即答します。」
その少年の隣には、一人の綺麗な女性が付き添ってぶつぶつと難しい事を言っている。
正直なところ、少年にも理解が追い付いていないだろう。
「再確認させてくれ・・・・ここはお前の言う実験とやらの敷地内で・・?」
「貴方はロイド・グライスと言う男性である事。私は氷沙9756号であると言う事。比較的簡潔に述べると、此処へは貴方から入って来た。この程度です。と、氷沙は状況を回収します。」
機械的な事を言ってくれるものだ。そもそも、少年は自分から進んできたのではない。
この少女----名前は氷沙と言うらしい----が、ロイドに声を掛けて振り向いた隙を狙って凍結。仮死状態のまま彼を此処まで運んできたわけだ。
「とりあえず、離れてくれないか?また凍らされても困るから・・」
「また、凍らされたいですか?と、氷沙は脅す為に手を凍らせます。」
ご親切に説明どうも。
どうやらこの氷沙、ロイドにホの字らしく彼にべったりしている。
何度もロイドが振り払おうとするのだが、その度に氷沙は彼の腕を凍らせているのだ。
どうやらロイドと共にいる事を至福としているようで、ロイドが凍らされかけて「分かった分かった」と止めてやると、直ぐに凍結を解いて幸せそうな表情をしていた。
その笑顔は、彼女が機械的な言動を発するとは思わせないほどである。
「・・・・」
「・・・・寒いのですか?と、氷沙は体調を確認します。」
暫く経っても言葉を発さないロイドを心配した氷沙が、ロイドに声をかけて来た。
これも愛と言う奴なのか?彼女の表情が凄く不安そうにしている。
あぁ、そうだよ。今にも凍え死にそうだよ。
でもその原因はこの吹雪じゃねぇ、お前だよ!
「・・・・かまくら・・・」
「出来ました。と、氷沙は0.5秒でかまくらを作成します。」
またまた説明ありがとう。
それにしても、彼女の作ったかまくらは見事な物だ。
まるでパーティーでも開くかのように大きなかまくらを作ってくれていた。
中で大暴れできそうなくらいあるんじゃないか?
「うぅ・・・寒かった・・・」
「・・・身体を密着すれば、体温の低下を防ぐ事が出来ます。と、氷沙はロイドに抱き付きます」
とりあえずかまくらに入ったロイドと氷沙だが、その中には暖房器具も何もない為か少しの間は冷えていた。
それにしても、ホント、氷沙って抱き付くのが好きなんだな。
ロイドが横腹を痛くするほどに、氷沙はロイドに抱き付いていた。これも愛なのだろうか。
「なぁ・・・なんで俺だったんだ?」
「貴方を愛したからです。と、氷沙は即答します。」
暫く抱き合った状態にあった二人だったが、不意にロイドが疑問を持って氷沙に聞いてみる。
氷沙さん?なんで貴女は俺を選んだの?
氷沙は既に、ロイドに抱き付いているだけで顔を赤くしている。
即答してくれた氷沙には悪いけど、ロイド君、寒さで判断力まで欠如してるよ?
「うぅ・・・そ、そうだ・・な・・」
「・・・こうなったら・・・」
それから暫く時間は進んだが、寒さが消えないロイドは身体を震わせている。
あれ?氷沙さん?なんで裸になるの?下着付けてないなんて斬新だね。
氷沙の着物がハラリと彼女の肌を伝って落ちる。彼女の表情は、覚悟を決めたのか真っ赤に染まり切っていた。
「・・・氷・・・沙・・?・・・んっ・・・」
いきなりのキス。それもディープキスだ。
おぉ、熱い熱い。彼女の体温自体は冷たい筈なのに。
氷沙はとても嬉しそうな表情をしている。まるでこうなる事を昔から願っていたかのようだ。
それにしても長いキスだ。かれこれ数分は舌を絡め合っている。そうなると必然的に呼吸が出来なくなってくる。
「プハッ!・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
荒い呼吸がかまくらの中を響く。ロイドはその時に、身体の中の何かが凍りついたような気がした。
心その物でも無い、心臓でも無い、夢の中の事でも無い。そう、「何か」が彼の中で凍てついてしまう。
氷沙もそれを知っていたかのようにロイドを見つめる目が妖艶なものへと変貌していた。
何故か、そのタイミングに吹雪が強くなってたのだが、ロイドは氷沙と愛し合うことで精一杯だったため、気が付く事も無かった。
「貴方の事を・・・ロイドさん・・と、お呼びして・・・宜しいですか・・?と、氷沙は息も・・絶え絶え・・に・・・貴方に・・・問いかけます・・」
「とりあえず・・・おち・・つこう・・?」
ロイドはこの選択で合っているような気がしている。
何せ
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