でも彼女の搾乳なら見てみたいかも

「お父さんお母さん、今までお世話になりました!」

「んみゅぅ……ふぇ〜?どこか遊びに行くの〜?」

「暗くなる前には帰って来るんだぞー?」

太陽が真上に上り、その明るさを世界全体に撒き散らしていた時刻。
広大な敷地面積を誇る牧場の一角。
そこに、3人の人影があった。
一人は草はらの地べたに寝転がって風を浴びながら、気持ち良さそうにウトウトとしている女性が一人。
もう一人は、その女性に膝枕をしてやり愛しそうに女性を見つめる男性が一人。
そして、二人に対峙して何やらカッコつけたポージングを決め込む少女が一人いた。

「んもぅ!昨日言ったでしょー!?私は魔法使いになりに行くんだってばー!」

「んん〜、いいよね〜、魔法使い〜♪ちちんぷいぷい〜って……zzz」

「あんまり遠くへ言っちゃダメだからな〜……zz…っととイカンイカン」

全く自分の言葉を信じようとしない両親にいら立ちを覚え、ムキになって少女は飛び跳ねる。
そんな娘の行動を、母親は眠たそうにしながらも、ほんわかとメルヘンチックな魔法使いを思い浮かべながら夢心地へと落ちて行く。
膝枕をしていた父親も、母親につられる様にして夢の中へ飛び込みそうになっていたが、間一髪で目が覚めた。

「ところでミム。誰かと一緒に…」

「もうお父さん達なんて知らないっ!」

まるで今さっき思い出したかのように、娘へ誰かと一緒に行くのかと問う。
が、それも聞かずにミムは一目散に牧場を飛び出して行ってしまう。

「……まぁ、すぐに帰ってくるだろ……zzz」

ミムの心配をしていた父親だったが、睡魔に負けてそのまま嫁共々草原の真っただ中でグッスリと眠ってしまった。
気持ちの良い風が二人を撫で、温かい日差しが二人を照らしている。

――――――――――――――――――――――――――

「………こ、ここどこぉ…?」

両親と喧嘩別れに思えなくもない別れ方をして、住み慣れた牧場から飛び出して一体どれほどの時間が経っただろう。
辺りにはもうすっかり夜の帳が下りており、時折飛んでくるホタルの光や月の柔らかで儚い光が心の頼りになっていた。
ミムが歩いているのは、樹がこれでもかと密集して群生している森の中だった。
最初は、中に何か無いかと入りこんだのだが、気が付けば獣道へ迷い込んでいた。
辺りから腹を空かせた獣の鳴き声が今にも聞こえてきそうで、まだ幼さの残るミムにとってはいつ泣き崩れてもおかしくは無い。

「くらいよぉ……お父さぁん…お母さぁん……うぇ…」

夜の森林を歩き周り、とうとう彼女の目尻には涙が浮かんで来ていた。
何時間も歩き続けて来たので、足は棒のように硬く動かし辛くなる。
その上、いつもなら眠っている時間なのもあってか、とてつもなく眠い。
しかしこんな所で眠ってしまえば、それこそ命が無い。
だがミムにそれを我慢する手立ても無ければ、気力も残っていなかった。

「くらいよぉ…つかれたよぉ……ひくっ…お父さん……ごめん…なさい…zzz」

遭難した場所で疲れ果て、そのまま眠ってしまうように目を閉じたミム。
魔法使いになる夢を追おうと家を飛び出した矢先で、森に迷い込み遭難。
そうして、獣に食べられてしまうのだろう。
考える度に恐ろしくて目が冴えそうになるが、その度に睡魔がそれらを押し殺してグッスリと深い眠りへ引き摺り込んでいく。

「―――――」

薄れ行く景色の中で、誰かの声を聞いたような気がしたミムだったが、起き上る事も出来ずに夢へ落ちて行く。

―――――――――――――――――――――――――――

「………んんぅ…」

「………あぁ、起きたか?」

ミムはチカチカと揺れる炎のような光が視界を覆い、その眩しさに目が覚めた。
ゆっくりと目を開けてみると、それは本当にロウソクの火らしく、ランタンから暖かな光が漏れていた。
そして、自分が寝ている場所が簡易的なベッドであると分かった。
板で作られたカチカチな物では無いのだろうが、簡素な作りの割に寝心地はとても良い。
そう思いながら視界を巡らせていると、男性が本を読んでいる姿が見えて身体がビクッと強張ってしまう。
が、そんな事など知りもせず、「少女が起きた」という事実のみを見た男性は、読んでいた本を畳みミムへ声を掛けた。

「ぇと……誰ですか…?」

「そうさなぁ………ここはマリズとでも呼んでくれ」

自身をマリズと名乗る青年は、少し物想いに耽るような仕草をしてから唐突にそう答えた。

「君が倒れていたから助けた、ただの男だよ」

「マリズ…さん……ありがとうござい…っ!?こ、これって!?」

マリズへ頭を下げて礼を述べようとしたミム。
しかし、視線を下げた先でよく見慣れた物を目にした。
茶色い表紙に幾何学的な文字や古い文字がたくさん描かれたソレを、ミ
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