今日のハクとクロウは、いつも以上に困っていた。
「うぅ・・・仕入先が引越ししちゃうなんてぇ・・・・」
「落ち着いてハク?向こうにも向こうの事情が有るみたいだし・・・」
二人は、肩を並べて一枚の手紙を読んでいた。その封筒には大きな文字で[馬速市場]と書かれていた。その場所は、ハクが好んで焼き鳥を仕入れている所の名前だ。店主はケンタウロスのお姉さん。
「でもでもぉ・・・引っ越して行った先って物凄く遠い所だよぉ?配達を頼もうにも国を超えるみたいだからいろいろ税とかも掛かるだろうしぃ・・・」
「あぁ、もう!私たちが受け取りに行く方が安いとでも・・・アッ!」
少し困った顔から、少し泣きだしそうな顔へと形を変えたハクはどうしようもなく頭を抱えていた。それを諦めさせようとしてクロウが思った事を口にする。しかし、終わる直前で彼女は口を止めた。
「そうじゃん!私たちが受け取りに行く方がほんの少しだけ安いよ♪」
クロウの言うとおりだった。各国の税の徴収法は多少違っているものの、関税は全国共通の値段で支払われていたのだ。発注を頼むとなると数日かかるし人数も多いので余計に税金が掛かってしまって値段も高くなる。それに比べてハクとクロウだけなら大した額の関税も払わずに国へ飛ぶことも出来るし、あわよくば観光まで出来てしまうので一石二鳥だった。
「そうだそうだよそうしよう!それじゃ、用意して早速行くよ?」
「えっ?クロウちゃん・・・今日もお店が・・」
「皆も美味しい焼き鳥を食べる為なら一日ぐらい待っててくれるさ!」
ニコリと笑ってハクの腕を掴んだクロウは、はしゃぎながら二人の家へと帰ろうとした。時刻はもう夕方を過ぎている。そろそろ開店していないと可笑しい時間帯だ。一応、お互いに身寄りが無く同じ家に住んでいるハクとクロウは、同居という形でお互いを好きで居られるが、わがままが強くて過去に何度か喧嘩をしたこともあったのだ。しかし今となっては仲の良い二人は、何処か分かり合っているような感じがあった。
「・・・・・・うんっ♪そうだよね!皆優しい人だもんね。」
「よっし♪置手紙も書いたし、そろそろ行くよ♪」
暫く考えたハクは、やっと他国まで出かける事に了承した。しかしその頃には既にクロウは出発の準備を済ませてリュックを背負ってハクの前に居た。そして、置手紙を焼鳥屋のある場所に置いて出かけたハク達は空を舞って飛んで行った。
「ハクちゃん?その国の名前、何て言うんだっけ。」
「国の名前は[ラティウム]っていう大きな国で、今から行くのはその片田舎の街で[ペンド]っていうらしいよ。なんでも、そこで作る乳製品が名産らしくて、他国からまで買いに来る人もいるみたい。」
クロウの説明に出て来たラティウムという国は、首都をヴィナールと言う王都に設けた国家である。此処では最近、王家の人間同士による潰し合いが激しいと世間の人たちからは苦情が集まっているらしい。因みにこの情報をくれたのは、いつものろおれらいのお得意さんのリーフだった。彼は何度かヴィナールへ立ち寄った事が有るらしく、その度に聞いていた苦情の話をクロウ達にも話していたと言う事だ。
「さて、そろそろ国境に入るよ?降りてかなきゃ不法入国になっちゃうからね。」
「うんっ♪」
ハクとクロウが空を飛んでいると、大地の前の方にそこそこに大きな壁が見えた。別段高い訳でもないのでハクやクロウのような空を飛べる種類の魔物には飛び越えることも出来るのだが、そうすると地面から兵士が撃ってくる様な事もあるので誰も飛び越えようとはしないのだ。そして、地面に降りたハク達は、関所の門兵に呼び止められて、理由を説明した後に関所でお金を払って隣国の[ロマール]と言う国へ入った。すると、兵士は護衛を付けてくれると買って出てくれた。結果、ハクとクロウの両脇には一名ずつの護衛の男性が正装を着て単発銃を持ってついて来てくれた。彼らの説明によると、つい最近に首都の[パルマー]で切り裂き魔が出没したらしく、今も尚捕まっていないらしいのだ。分かっている事は大柄な男性だと言う事だけらしい。
「クロウちゃん・・・怖くなってきちゃった・・・」
「大丈夫だって。護衛のお兄さんたちも居るんだから。まぁ、空を飛んじゃ駄目ってこの国の法律が無かったらもっと楽に飛べたからちょっと可哀そうかもだけど・・・」
「我々は、貴女方をお守りして向こう側の関所まで連れて行くのが役目ですから。」
「ですから、安心して我々の護衛を信用して下さい♪」
怖がってクロウの背中にしがみついたハクは、本当にクロウから見て妹の様に見えた。彼女が元々幼い容姿を残しているとしても、これは幼女が好みの男性からすればたまらなく可愛い事だろう。クロウはハクを見つめて少しばかり困った顔をしてハクの頭を撫でていた。両
	
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