アルラウネのネルと、人間のリーフが一つの強大な壁に二人でぶち当たった。それは、お互いにたった一人の肉親を失うと言う過酷なものだった。しかし、ネル、リーフ共に挫けたりはしなかった。元々はウラルだってこんな事になるだなんて予想も出来た筈が無い。そして予想だにしなかっただろう。自分が放火犯と共に命を散らせるだとは。そして、その出来事から10年近くが経ったある日。
「行ってきまぁす!ネル?留守番出来るかい?」
「もう!お兄ちゃん。私もう15なんだよ?子供扱いは止めてよぉ!」
「アハハッ!ごめんごめん。じゃ、行ってくるね。」
そこには、あの頃とは違って大きく成長して現在は街の学校に通っているリーフの姿と、それを見送る妹としてのネルの姿があった。ネルは本来、学校に行っておくべき年齢なのだが「私がいると、皆を不幸にしちゃうから・・」と言って家に引き籠もっているのだ。
「さて、私は家の片付けでもしようかなぁ・・」
そう意気込んで体の花弁についていた埃や食べ物カスを払うと、ネルは家の掃除を始めた。リーフと一緒に住み始めて、最初はアルラウネにとって毒になる物ばかり(例えば洗面所の石鹸などの水を汚す物質を含む物)だったが、それは最近の技術とやらで、リーフが色々とアルラウネ用の何々等を買ってくれるようになったのでなんら不自由も無かった。そして最初に居間の机の上の食器類を片付けたネルは、続けてリーフの部屋へと入った。その部屋はいつ入っても整頓されている。多少の服の脱ぎ散らかされた跡はあれど、そこまでだった。
「いつ入っても綺麗だなぁ・・お兄ちゃんの部屋・・んっ?」
リーフの部屋に入ったネルは、ふとベッドの下に妙な物を見つけて引っぱり出してみた。どうやらそこそこに分厚い本の様だ。
「どれどれ・・?!なにこれ!」
中身を読んだネルは自分の目を疑った。それもそうだろう。あのリーフがこんな物を持っているだなんて。
その内容とは「中身の至る所に悪口を書かれまくった教科書」だった。
「お兄ちゃんに聞かないと・・」
そう思ったネルは、あまり外を出歩かないアルラウネだとは思えないほどのスピードで家を飛び出すと、リーフの通う学校へと急いだ。
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