そこそこ大きな草原地帯。そこには、短い草木が所狭しと並んで新緑色に染まった大地もあれば所変わって草木が絡み合って天然の洞窟を形取ったような場所も存在していた。そんな場所を遊び場にして今現在も走り回っているこの少年の名前は「リーフ」この近くにある町はずれの小さな一軒家で姉と二人で暮らしている少年だ。今はその姉も遠い街へ出稼ぎに出ているので一人のまま過ごしているリーフは、最早この草原で遊ぶ事が日課になっていた。
「待て待てぇ!」
足元を飛んでいた昆虫を追いかけていたリーフ。しかし、気が付けば周りは暗い洞窟の様になっていて、出口も見えないでいた。
「あれ?お兄ちゃん・・誰?」
その声は唐突にリーフの耳に届いた。なんとも幼い少女の声。振り向くとそこには、体の半分が花に食べられているような姿の幼い少女がいた。
「ええっ!・・僕はリーフ・・」
「リーフ・・うんっ!私はネル」
リーフは少女に自己紹介をし、少女はリーフを気に行ったのかニコリと笑うと自分の名前を「ネル」と教えてくれた。
「ねぇねぇリーフ。これから私と遊ぼう?」
「!いいよ?何して遊ぶ?」
リーフの手を掴んだネルが、唐突にリーフとの遊戯を申し込んできた。元々遊んでいて此処に迷い込んだリーフからすれば遊び相手が出来たのでそれが魔物だろうが魔王だろうが御構い無しだった。
「それじゃねそれじゃね・・・私のお母さんも呼んでかくれんぼしよ?」
「うん。いいよ。」
そう言って靴の調子を整えていたリーフ。その間にネルは、一言断ってから母親を呼んでくると茂みの中へと姿を消した。
「・・・楽しみだな・・」
ネルを待っていたリーフは、久し振りの新しい友達との遊戯を楽しみに待って幸せそうな顔でその場に座り込んでただただネルを待っていた。その頃ネルは
「ねぇねぇ!お母さん!お母さんも一緒にかくれんぼしよ?」
「ええっ?私もするの?」
枯れた蔓で出来たアルラウネ独特の家へ帰って来たネルは、母親に遊戯への参加をせがんだ。嫌そうな顔をしながらもそれには答えたネルの母親は、ネルと一緒に家を出てリーフの待つ一角へ歩を進めた。
「あっ!リーフだ!お〜・・むぎゅぅ・・」
「ちょっ!あれ、人間じゃない。しかも好みな男の子!チャンス!後ろから襲ってやるわ。それで私が満足したらネルにあげるからね?」
暫く進んでリーフを見つけたネルが、リーフに声を掛けようとするが途中で母親に口を塞がれてしまった。その母親はリーフを見ると、まるで草を食んでいる牛を見つけた狼の様に気配を消してリーフへと近づいて行った。その間、必死に母親の手を退けようとジタバタしていたネルだが、やはりネルはまだ幼い故に母親の手を退けることは叶わなかった。
「んんっん〜〜(訳:離してよお母さん!)」
「駄目よ駄目よ。貴女のお婿さんが逃げちゃうわよ?」
口を塞がれつつも尚抵抗しようとしているネルだが、そんな動きも空しくネルの母親の蔓はリーフの足を絡め取ってしまった。そのまま急に宙に浮いたリーフは、現状を理解する事が出来なかった。しかも持ち上げられた時に後頭部を強打。現状を理解する前にリーフの視界は閉ざされた。
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