三品目 護精装甲モンスパンツァー

 夏真っ盛りの日曜日。テレビを付ければ子供向けの戦隊ヒーローが敵の怪人たちにボコボコにされているのも最早見慣れたお約束となったいつもの展開が繰り広げられていた。
 一度ピンチになるまで追い込まれて、機転を利かせた戦い方で今日もまた一発逆転の大技で敵の怪人が爆発四散して戦隊側の勝利という流れだ。
 コマーシャルに入る前にはしっかりと次に現れる敵怪人のチラ見せや戦隊のみんなの日常ギャグパートが挟まって場の空気を和ませていく。
 そして次に控える女の子向けの変身少女バトルモノへと引き継いでいくのである。

「こういう戦隊モノお好きなんですね、ご主人様」

「いや、好きとか嫌いじゃなくて「そうだよなぁ戦隊モノってこういうヤツだよなぁ」って再認識してるの」

「再認識、ですか…?」

「そう、再認識 変なところで口滑らせて場の空気感台無しにしたくないからな」

 朝食にはちょっと甘いくらいの卵焼きをもそもそ食べながら答えるシロウの手元には一つのDVDパッケージが置かれていた。
 食事時にそんなもの置いておくなよとは思いもするだろうが、取り寄せ品がようやく届いて確認も済ませた所だから手元にあるのもしょうがない。

「護精戦隊モンスパンツァー… 今テレビでやっているのとは違うシリーズなのですね? 昔のシリーズなんでしょうか」

「いや、それは今やってる所謂戦隊シリーズとは別枠だよ?」

「え? ですがどう見ても戦隊っぽいデザインの装備を着ていますよね?」

「まぁそういう作品だからな AVだけど」

「えっ」

 さも当然のように答えるシロウ。
 ココがパッケージをよく見てみれば確かに、端っこの方にAV作品おなじみのあのマークがしっかりと付けられていた。

「……戦隊シリーズのものとほとんど変わらないように見受けられますが… AV作品なのですね…」

「ウチの常連サマに仕入れてくれって頼まれてさ」

 表紙は戦隊モノさながらのビビッドな色合いを用いた少年心惹かれるパッケージとなっている。
 タイトルのモンス部分はモンスターの意味なのだろう、タイトルロゴはモンスターらしく翼や牙や爪の意匠があちこちに見られる、それこそ戦隊モノだろって感じのロゴだ。
 パッケージを飾る戦隊ヒーローたちも、それぞれのモンスターの力を宿した戦士たちとしてスーツもしっかり作られていた。裏面には戦士たちの紹介が書かれている。
 チームで最年少の熱血青年。ヒイロが纏う天使の力を宿した赤の装甲、レッドパンツァー
 チームの頭脳でツッコミ役。カイトが纏う海獣の力を宿した青の装甲、ブルーパンツァー
 チームのオカンで金の亡者。ヒトミが纏う野性の力を宿した黄の装甲、イエローパンツァー
 チームの教官で筋肉主義者。シズムが纏う賢者の力を宿した緑の装甲、グリーンパンツァー
 チームのアイドルで腹黒女。カスミが纏う悪魔の力を宿した桃の装甲、ピンクパンツァー

「この五人が繰り広げる、ドタバタヒーロー活劇だ」

 シーンの切り抜きで貼られている写真に写る敵怪人の完成度も、パンツァーたちと同じくらいクオリティが高い。
 表のパッケージに書かれた18禁マークを隠して子供向けコーナーに置いてたら興味を持つ子供も出てくるんじゃないだろうか。

「ヒーロー活劇… この方たちは、この敵怪人の方々から世界を守っているといった感じでしょうか?」

「いいや? 痴漢やら誘拐やらの方法で性的に襲い掛かってくる敵怪人から市民はもちろんだけど何より自分たちの貞操を死に物狂いで守る戦いだ」

「……はい?」

 前言撤回は意外と早くに起こりそうだ。
 そのあたりはしっかりAVなんだなと納得するところもあったが、さっきまでの戦隊モノ顔負けのクオリティを褒めた言葉を撤回したい気持ちがどうも強い。
 なんか分かっていたけど裏切られたような感じの気持ちになって胸の内がもごもごしてる。

「も、もしかして…」

「もちろん、お約束通りに形勢逆転からの一撃必殺大勝利ばっかりだよ」

 ほっ、という声がココから聞こえてきたのは、安堵からなのか残念と感じたからなのか。
 何かを伝えたかったのか、ココの触手の一本がシロウの肩に伸びてきて、申し訳なさそうに触れていたのが可愛かったのでもうぶっちゃけどうでもいいや。

「まぁ、その過程でいっつも搾り取られてるけど」

「いっつも…?」

「これ、シリーズ全部で8本の16話構成なんだよね」

 AVでシリーズモノと言ったらどれくらいのスケールで思い浮かべるだろうか。
 よくて前中後編の三作くらいだろうか?たまに五作連続とかはあるだろうが、8作なんてそう見る事はないだろう。

「言っておくけど、取り寄せを頼まれた品だから俺たちのプレイ対象外だからな?」

「えっ?そんな… ごしゅじんさま…
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