ギルと共に愛し合ってからかれこれ一週間が経った。
今の私は、されるがままの人形になっている。
それと言うのも…
「アレイスター様? もうちょっと右を向いてください?」
「う、うむ…」
メイドに手伝ってもらい、化粧をしていたのだ。
吸血鬼は鏡に映らない、なんて伝承があるらしいが、一体どこから湧いて出たのやら。
私が吸血鬼であるとメイドたちに明かした際、一番最初に聞かれたのがその話題だったのには驚きだったが、理由を聞いて驚きは呆れに変わる。
「化粧出来ないんじゃないですか?」だと?
私が化粧をしているようにでも見えたと言うのか、あのメイドは…
まぁ今となってはすっかり和解して、メイクの手伝いをしてくれている訳だが。
「も、もう良いか…?」
「あ、動かないでくださいね。メイクがズレてしまいますので」
「うむ…」
どうして私が手伝いまでさせて化粧しているかというと…
「もうそろそろかい?」
「あ、ご主人様。もう少しお時間を戴けませんか?」
「うん、分かった。皆にもそう伝えておくよ」
「ありがとうございます」
ギルディアがメイクルームへ入ってきた。
白いスーツ姿で。
かく言う私も、純白のドレス姿だ。
それが意味する事はと言えば…
「……まさか私が結婚などと…」
吸血鬼が教会にいるという事自体、聞いたことも無い。
もしも来賓として呼んでいる者たちの中に吸血鬼が居たならば、きっと笑いものにされるだろう。
「…あっ! すみません、アレイスター様。メイク道具が足りていなかったので取りに行って参ります。少々お待ちくださいね」
「なっ……行ってしまったか…」
呼び止める暇もなくメイドは部屋を飛び出していってしまった。
これでは部屋に一人ぼっちになってしまうではないか。
それはなんというか…寂しい。
「しかし……綺麗なものだな、化粧というのは…」
改めて、鏡に映る自分の顔をよく見てみる。
元から美女だとピュアには言われていたが、自分ではそこまで自信を持てるほどの物でもなかった。
それがどうだ。
目の前に居るのが本当に自分なのかと疑いたくなるほど綺麗な女性が鏡に映っているではないか。
男性体だった頃は勿論の事、女性となってから化粧などしたことの無かった、というより興味の無かった私にとって、その変貌ぶりは驚愕の一言に尽きるというものだ。
「…へぇ、あの子、かなり綺麗に仕上げてくれてるみたいだね」
「ぎ、ギルディアっ?!」
ついつい愛称ではなく名前で呼んでしまった。
それをよく思わなかったのか、ギルは私の腕を掴んで自分の元へと抱き寄せる。
ダンスを踊っている訳ではないぞ?
「す、すまない…ギル…」
「えっ? どうして謝るのさ?」
そのキョトンとした顔はやめてくれ、私にはかなり効く。
噴き出して笑いそうになるとかそういうのじゃなくて、心がときめいてしまう。
「い、いや…特に意味は…ひゃんっ!」
「あっ…」
クシャッという何かを握る音と共に、胸を揉まれる感覚が背筋を走る。
視線を少し下げてみると確かに、ギルの手は私の胸を揉んでいた。
それも、揉んでいると分かるや否や執拗に揉み始める。
「ぎ、っる…ふぁっ…何をして…」
「……」
まるでオモチャを見つけた子供のように、無心になって私の胸を揉み続ける。
別に胸を揉む事自体は構わないのだが、時と場合を気にして欲しいものだ。
振り払おうにも彼の揉み心地の良さが勝ってしまっている現状では振り解ける物も振り解けない。
結局、彼の思うがままにされ…る訳には行かない。
「やめっ…シワになるぞ…」
「関係ないよ…アリスだってその気だったんじゃないのかい?」
どうにかギルからの解放を試みては見るものの、どうにもならないようだった。
膝が笑っているような状態では、マトモに力を入れる事もできずギルの腕を掴むので精一杯だ。
「め、メイドだってすぐに帰って…ひぅん!」
「大丈夫だって…すぐ終わらせるから…」
「お前は…はぅんっ…」
首筋に口づけされるだけで、痺れるような快感が身体中を駆け巡る。
それは私の専売特許だろうに、あの時の仕返しのつもりか?
もし甘噛みでもしてこようものなら、逆に噛み返していた所だ。
スーツが血で汚れるとか知った事か。
……まぁ、そんな余力が私にあれば、の話だが。
「ほ、ホントにやめ…っ?!」
これはまずい。
廊下の方から誰かが走ってくる音が聞こえるのだ。
音からしてブーツやヒールの類ではない。
それを履いているとすれば、この建物の中ではメイドたちくらいな物だ。
そしてこちらへ走って向かってくるという事は…
「あれ、案外早かったね…」
「
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