ゆらめく影は蘇る悪夢

「―――ここは……そういう事か…」

「ふふん、今度こそリベンジよ?」

少し靄の掛かったような空間の中に、彼らは居た。
少なくとも自宅には存在していないフカフカとした乗り心地のベッドの上に、まるで最初から乗っていたかのような状態で座っている青年が一人。
その隣に居るのは、なんともわがままな程に成熟した身体を見せつけるような卑猥な衣装に身を包んだ女性が青年へ詰め寄っていた。

「さぁ!カーム・ドウメキ!今日こそは私にイかされなさい?!」

「どうせ今回も君の負けでしょ?」

こうして、ベッドの上の二人によって勝負が繰り広げられていく。

――――――

「あひぃ……も……もぅやめへぇ…」

「やめてって……これキミが動かしてるん…でしょっ!」

「んひぃぃぃっ!!やらぁぁぁ!もうやらぁぁぁ!!とまっへ…あひぃぃぃ!!」

始めた当初、「貴方の事をヒィヒィ言わせてやるんだから」と言っていた女性の姿がこれである。
カームに激しく腰を突かれて膣内を乱暴に犯されていく快感に溺れ、その表情はとても美女とは言えなかった。
眼は喜びに満ちているのだが、口はだらしなく開き舌がだらりと垂れていて、口の周りは唾液でべっとり。
鼻からは鼻水なのか涙が降りてきたのか、唾液が上がってきたのか分からない液体が垂れて彼女の頬を伝ってベッドまで汚している。
時折イッているのか、笑顔は崩さないまま、顔の表情筋が吊り上って居そうな程に顔を引きつらせる。

「やれやれっ!これでっ!何回目っ!なのさっ!」

「んいぃぃ!わかんにゃぃっ!わかんにゃいよぉぉぉ!!いっくっぅぅぅぅぅぅ!!」

ただただ一方的に犯される彼女が、どうなってもいいといった具合に身体を乱れさせて暴れまくる。
その刺激ひとつひとつが彼女を絶頂へ押し上げてもなお、これはひどいと言ってやれる。
一方、カームの方は顔色一つ変えずに腰を振り続ける。
いや、振らさせられ続けている。
彼の腰は、というより彼の身体は、彼の意識と無関係に動かされているのだから。

「たひゅけ……やらぁぁ……れもっ……っ?!も、もっとぉぉぉ!!」

「んっ?あぁ……ごめん、今回も僕の勝ち逃げみたいだ…」

二人の視界が、靄でもかかったかの様に霞んで見えなくなっていく。
何も急激に視力が急転直下している訳ではない。
目が醒めて行く前兆のような物らしい。

「んっぅぅぅ!!……く、くやひぃぃぃぃ!!」

「また来れるよ、きっと……だから泣かないでね…」

そうカームは言い残して夢から醒めて行くのだった。

―――――――――――――

「………んっ……なんだ……シーツがびしょびしょじゃないか…」

「んはぅ……やらぁ………はぁぁぁぁぁ……」

目が醒めると、いつも通りの自分の部屋がそこにはあった。
白い天井は今日も角のシミが誰かが覗き込むような形状になっていて気味が悪い。
壁には利便性重視に物が吊るされていて、嗜好品や趣味の類などは一切置かれていない。
強いて言うなら、机の上にノートや書類が山積みにされているくらいだろうか。
そして、彼の隣では今日も、ここの住人ではないはずの少女が眠っている。
いや、眠っていたというべきだろうか。

「全く……なんでベッドの上で寝るんだか………ベッドが壊れるじゃないか…」

「カームぅ……カームぅ……」

馬の身体と少女の身体、そのどちらも備わっている生物が、カームの隣で喘ぐような寝息を立てている。
足を器用に折り畳んでベッドの上に乗り、くの字になるように人の身体を折り曲げて眠る少女。

「やれやれ……君が隣で寝ていたからあんな夢を…?………いい加減に起きないか、ナイア・レーア?」

「あぅぅ……見ないでよぉ……」

どうやら狸寝入りだったらしい。
人の身体をムクリと起こして、恥ずかしそうに少女が起きる。
彼女の名前はナイア・レーア。
彼、カーム・ドウメキの助手を務めているナイトメアだ。
カームは魔物娘の生態調査を行う事を生業としており、実際彼の集めたデータが行商人や旅人など、世界各地を歩き回る職業の人物たちにとって大きな助けとなっているのは確かだろう。
魔物娘に襲われる事を事前に理解し回避する事も、魔物娘に助けを求めに行く事も、彼の調査による分布を元に行われている事がある。

「仕方ない……支度を済ませたら……?……またか…」

「うふふ……カームの寝てた場所〜……っはぁぁぁ…」

カームがベッドから降りると、さっきまでカームの寝転がっていた場所へナイアが顔を突っ込む。
馬が足元の水を飲む要領で身体を曲げている訳だが、その動機があまりにも不健全である。

「……ナイア…?」

「うぅん……もう一回呼んで?ねぇもう一回!」

「ナイア・レーア嬢?出かける支度は済んだかな?」

「うぅぅ……またそうやっ
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