「……」
都会の喧騒から少し離れた、のどかで静かな公園のはずれにある小高い丘。
その樹の下で、一人の少年がいくつもの雲が漂う大空を見上げている。
何か物想いに耽るように、空を眺める少年の口元は、心なしか笑っているように見えた。
「………っ!アレなんかパンツっぽい♪」
…そう、少年の表情が笑顔に満ちた理由はこの通り。
彼が見つめる視線の先には、逆三角形の形をした雲が漂っている。
三角形とは言っても角は見当たらなく、少年の言うように女性物の下着のように見えなくも無い。
「くひひ…いいもん見れたなぁ……ん?」
顔を嫌らしい笑顔で染め上げ、ニヤニヤと笑いながら少年はその場を去ろうと立ち上がった。
柔らかな風と日差しに足止めを食らいそうになりながらもその場を去ろうとする。
しかし、自身のポケットから何かが落ちるのを感じて少年はふと振り返った。
「あぁっといけない…」
彼がポケットから落とした物は、両手で包めば収まるような大きさをした小さな本だった。
表紙には大きな文字で「紅一点!」と書かれている。
更にその下には、四角で囲った「R-18」と言う文字も見える。
そうして一番最初に目に入るのは、赤い髪をした裸の女性がいくつもの肉棒に囲まれ精液まみれになっている絵。
これらが指し示す事とは、これがエロ本であると言う事。
因みにこの本は、少年がたまたま拾った物だ。
「よいしょ…のわぁっ!」
その本を拾い上げようと身体を屈めた所で異変が発生。
まるで本を抹消するのが目的であったかのように、謎の物体が少年の目の前に激突し、地面を抉った。
飛び散る石や土の破片を直に浴びて、少年はそのまま倒れ込んでしまう。
「いつつぁ……なんなんだよ、これぇ…」
どこかファンタジックなクリスタルの結晶体を思わせるその物体に、少年が手を触れた。
次の瞬間、そのクリスタルは小さく展開したかと思えば白煙を噴き出す。
ブシューと言う音と共に、クリスタルは形を変える。
ダイヤ型だったクリスタルは、今では三つ葉のクローバーを思わせる形に変わって行く。
形が変わると、葉の一枚一枚がどこかベッドを思わせる形状に変わる。
「な、なんかヤバイかも……?…女…の子…?」
言い知れぬ身の危険を感じて、少年は手の痛みも忘れてその場から逃げ出そうと考え始めた。
走ればその場からは逃げられる。
が、少年の足を止める理由が目の前にあった。
「えぇと…ein…?どう読むんだ、これ?」
クリスタルの中には、血のように赤く長い髪の女性が静かな表情で眠っていたのだ。
彼女には大きな翼が付いており、まるで空想上の天使を思わせてしまう。
クリスタルには刻印が刻まれており、そこには「ein」と彫られている。
他の二つも見てみると、外見はそれぞれ違っているが女性が眠っており、どれにも記号が彫られていた。
「にしてもすっげぇおっぱい…のわぁ!」
下心丸出しの少年は、卑猥な指遣いで「ein」と刻まれたクリスタルに触れた。
心の中ではあの胸が揉めたら、などと思っていた事だろう。
だが、彼の予想を裏切ってクリスタルに変化が訪れる。
「……?」
「あわ…あわわ……やわっこ〜い…♪」
クリスタルの上半分が、まるで最初から無かったかのように消え去って行く。
触れた部分から消えて行き、少年はその勢いのままに進んで彼女の胸を鷲掴む。
一瞬身体がビクッと震えた少女を余所に、少年は一心不乱に豊満な胸の感触を味わう。
人間とは思えないような柔らかい感触。
弾力に溢れ、揉んでいる側にすら快感が伝わるような豊かな胸。
それを今、下心満載の男がもみしだいているのである。
「…アレク・ルシェールを確認。女神の命により、貴方をマスターとさせて頂きます」
「のわっ!ま、マスター…?」
眠っているままだと思った少女が、唐突にブツブツと言葉を発し始めた。
どこか優しい声音の少女は、しかし機械的な言葉を紡いでいく。
「と言うか、なんで俺の名前を知って…」
「…マスター、他の二人を起こしてあげては?」
自分の名前を知っていた事に疑問を持ち、それを少女にぶつけるアレク。
しかし彼女は、それらを無視してアレクに他の二人を起こすよう檄を飛ばす。
先程と同じようにやれば良いと付け加えられ、渋々それにアレクは従う。
「行くぞー?そりゃ…やっぱり小さい…」
「誰が小さいですって〜!?…って、キャァァァァァァァァァ!!」
中で眠っていたのは、年齢がいくつか下の子供のように小さな少女だった。
海よりも深い群青色に染まった髪を、両端でくくりツインテールとしているようだ。
アインと違い、この少女には翼は見当たらず、代わりに薄い被膜のような翼がヒラヒラと舞う。
言われたとおり「先程と同じように」クリスタルに触れて上半分
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