ある日差しの強かった日の事だ。
「うぁぁぁ……最近あっついなぁ………ん?サハギンが干からびてら」
男の視線の先では、川岸で誰かの写真を見ながらこの青空の下、オナニーかましてるサハギンが居た。
このところの干ばつの所為か、肌にはツヤが無くどこか力も無いように思えた。
まぁ、そんな事を考えている内にサハギンがこちらに気付くと顔を真っ赤にして逃げ出した訳だが。
「二重の意味で干からびてたな、さっきの」
水から長時間離れ、肌のつやを失っていたのと、男に飢え渇いていたのとで二つだろう。
「はぁぁ……散歩やめようかな……ん?なんだ?」
気が付けば、目の前にはいかにも怪しそうな小屋が立っていた。
その看板には一昔前の字体で「モンスターズジェネラルの占い小屋」と書かれていた。
「……」
きまぎれだ。
本当に気まぐれに、その小屋に男は足を踏み入れた。
「おっ、すっずしぃ〜♪」
小屋の中は、外とは気温が8〜10℃程違って感じた。
それが、冷却魔法を使用しての事なのか、この場の雰囲気による相乗効果なのかは分からない。
だが、明らかにこの小屋の気温は低く感じたのである。
「ほほぅ、次の客人はあにさまじゃったか…」
「……子供?」
部屋の奥には、水晶玉が設置してある台座があった。
その前では、一人の少女が何やらそれっぽい衣装を身に纏って水晶玉をベタベタと撫で回している。
男の記憶が正しければ、ああ言う形の占いでは水晶玉には触れないのがセオリーでは無かっただろうか。
「子供とはなんじゃ!ワシにはコ……まぁよい、そこの紙に名前と、占いの内容を書くのじゃ」
男は言われたとおり、すぐ隣にあった台に置かれた紙とペンを取り、名前の欄に『アレク・アンバー』と記載し、希望の占い欄には「未来」と書いておいた。
「ふむ……にいさま、ワシをそんじょそこらの占い師と同じと思ってるじゃろ」
「っ?!」
それは、アレクがペンを置いた瞬間だった。
台からいきなり紙とペンが跳び上がり、少女の手元へ飛んでいく。
まぁ、魔法やらが常識的になっているこの世の中ではそこまで驚く事は無い。
「ふむふむ……アレクのにいさま、お主…物凄い凶相が出ておるぞ…」
「なっ!?」
水晶玉に触れずとも、少女はアレクの表情を見るだけでそう言い放った。
そう言った後になって、ようやく水晶玉に手をかざし始める。
だが、その行為も数秒で終わり、少女はため息を吐いて首を横に何度も振る。
「アレクにいさま、お主……これより数日の後、何者かに襲われ財産はおろか何もかも失うじゃろう…」
「……な、何だって?もう一度言ってくれないか?」
「あにさまは、あくる日に何者かに襲われ、財産は勿論の事あらゆる物を奪われるじゃろう。お気の毒じゃが。」
何度アレクが聞き直そうが、少女の答えは変わらなかった。
どうやら、この占いは当たりそうにないし、当たりたくも無い。
そう感じたアレクはそのまま小屋を後にした。
キチンとお代も払ったぞ。
「あっ!あにさま!小さい女の子に興味は無いか?!なんならこれから紹介して――」
まるでさっきまで忘れていたかのように布教活動を始める少女だったが、時すでに時間切れ。
アレクの耳には前半部分しか届いてはいなかった。
勿論の事、アレクに幼女趣味は無い。
それどころか、幼馴染に小さい頃はイジメられていたのを思い出して少し頭にビキッと来てしまう。
「あぁ、もうっ!なんだよあの占いっ……っと!」
「きゃぅ!ご、ごめんなさい……それじゃ…」
占いに怒りを覚えつつ帰り路を歩いていたアレクに、一人の少女がぶつかった。
どうやら相当急いでいるようで、ぶつかって一つ謝罪するとそのままどこかへ駆けていく。
「まさか今のが……占いも大したことないな」
占いの内容が今の出来事だと思ったアレクは、鼻で一つ笑ってやるとそのまま家へと帰って行く。
――――――――――――――――――――
「ただいまー」
「あっ、おかえりなさい」
アレクが何事も無く自宅へ帰ってくると、一人のメイド服を着た少女が出迎えをしてくれた。
彼女の名前は「クララ」と言う、アレクの住む屋敷に仕えるメイドの一人である。
最近はオカルトやUMAに興味があるらしく、冗談半分に心霊グッズやらオーパーツやらを集めてニコニコしているという不気味な趣味を持つ。
そして何よりも言えることは、彼女がアレクとは古い友人関係にあると言う事だろう。
アレクがまだ3歳の頃には既に一緒に居た記録が残っている。
それもこれも、アレクとクララの両親が互いに親友だったからというのも含まれている。
一時期はクララの父親が酒に酔った勢いで、クララをアレクの許嫁にする話まで盛り上がっていた事もある。
「……クララ、占いって信じるか?」
「はい
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