「―――んでさ?アタシは言ってやったんだよ♪」
「――はっはっはっ!そいつぁ面白い!」
「――コイツを見てくれ、どう思う?」
「――すげぇ!こりゃ、50万は下らないんじゃないかっ?!」
「――すっごく大きいじゃん♪」
ここは大衆酒場。
今日も海賊、山賊、空賊、その他にも力自慢や一般の人物も分け隔てなく楽しく賑っている。
「なぁ、マスター?」
「なんだい?」
「聞いたかい?最近この辺りでバケモンが出たって噂――」
カウンターで女性マスターに話しかけた一人の男。
彼が言葉を言い終わる直前に、酒場の扉が開け放たれる音が木霊した。
「木霊した」と表現すればいいほどに、乱暴な開け方をしたのだ。
ドンッと言う大きな音を立てて扉が壁にめり込む。
「――あらら、またやってしまったわ…」
そこに居たのは、一人のシスター服に身を包んだ女性だった。
見た目はギリギリ十代か二十代前半と言ったところだろうか。
手に持っているカバンは何かを押しこんでいるのかパンパンに膨れている。
「ちょっ!私の店になんて事してくれるのさっ!」
「ごめんなさい。あっ、マスター。私にオレンジジュースを…」
素直に謝っておきながら、図々しく注文した彼女。
その顔は、ここの客の誰もが一概にこう思っただろう。
「アレ?何処かで見たような…」
と。
「オレンジジュースね―――って!何簡単に流そうとしてるんだい!」
ノリツッコミも習熟しているのが酒場のマスターだと私は思うのです。
「扉の件ならほら既に…」
見ると、彼女の足元から伸びた触手が工具を持って修理に当たっていた。
それも、職人顔負けの技術力で、あっという間に壁のめり込みは愚か扉の周りだけ新品と言った具合になっている。
しかも修理の後がどこにも見当たらない。
「えっ…あれ……?」
「それでは、オレンジジュースを…」
「あっ、あぁ…」
呆気に取られていたマスターだったが、女性の注文を受けて再びグラスを取ってジュースを注いで彼女の前に渡す。
そこまで来て、一人の男が声を上げた。
「そうだ思い出した!?壁見ろ!壁!」
そこには、一人の女性シスターが明るい笑顔でピースしている。
その下には『dead or alive』と。
その更に下には『10,000,000』と言う数字の隣に世界共通通貨の単位が記されている。
大きく書かれているその名前は、『パール・リード』と書かれていた。
一際大きく掲載されている写真には、シスター服で満面の笑みを浮かべた女性が写っている。
それは、紛れも無くこの場に座ってオレンジジュースを飲もうとしている女性その人に間違いない。
「あ……あ、あんた…パール・リード…」
「はい?どうかされました?」
キョトンとした顔でパールは返事する。
その次の瞬間には物音ひとつ聞こえないほどの沈黙が起こり、その一瞬後には酒場全員の驚愕の声が乱舞していた。
「ど、どうしてそんなヤツがこんな所に…」
「こんな所で悪かったねっ!?」
男が驚いてパールから距離を取ろうとした時に、彼の言った言葉が気に喰わなかったマスターが男の、まだ半分以上残っているビールジョッキを取り上げて片付ける。
しかし、そんな事などお構いなしに男は椅子から乱暴に立ち上がると一目散に走り去っていく。
「……ごめんね、ここは海賊も空賊もましてや山賊も来ないような所だから、皆そう言うのが怖いのよ…」
「えぇ、恐怖を抱くのは正常な反応です。」
そう言うと、パールは両手を合わせて握って形を作って胸の中心に持って行く。
そして、まるで神に祈るかのように瞳を閉じた。
この形式の一連の動きは、遙か北方に伝わるものである。
「……ありがとうございました、オレンジジュース、美味しかったです♪」
「あぁ、そりゃ良かった……そうだ、ついでに飯も――」
マスターがパールに食事をお勧めしようとしたその時。
ドォォォォォォォォォォン!!
空気を揺るがすような爆発音が酒場を襲った。
それに加えて鼻を突くような匂い。
どうやら、近くでアルコールを交えた爆発があったようだ。
しかも、どうやら火炎瓶やパイプ爆弾の比ではないほどの規模の様子。
周りからは住人が慌てて外に飛び出してくるし、店からも何人かが様子を見に行こうと野次馬に混ざって行く。
「……どうやら、追いつかれたみたいですね…」
「えっ?それってどう言う――」
マスターが事の真意を確かめようとしたその時、またしても彼女の言葉を遮るように怒号が鳴り響く。
複数人による混乱の声では無い。
一人の人物が、意図的に声を拡張しているようだ。
『聞こえているかぁ?真珠姫よぉ〜?!今すぐ出てこないと、この街まるまるドカンだぜ〜?!』
響いてきたのは、野太い男性の声だった。
そしてその声の主を、パール
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