第五話 天使×天使=最強

前略、たぶん地獄にいるであろう父さん母さん達へ。
アルバイト先に一人の後輩が出来ました。
ただでさえまな板の上の鯉のような心情でしたが、どうやら鯉は捌かれてしまっていたみたいです。
女性上位と言ってもいい現代において、魔物娘が主体で働く店へアルバイトに行こうだなんて間違っていたのかもしれません。
そんな中で、魔物娘の後輩が、アルバイト先の支配人さんに寄生して運ばれてきたんです。
名前は田中かなた。名前からして胡散臭いです。
何もしないどころか邪魔ばかりですが、なんとしても仕事のできる人へ育てていきたいと思っています。 以上

「………ふぅ…」

と、まぁ手紙を書いてみたはいいものの、こんな物出す訳にも行かないし出す宛先もない。
今日も今日とて、学校へ行き、それが終わればアルメリアへ直行だ。
そうそう、一ついい知らせもあった。
店長から言い渡されていたブラック企業を超えるような出勤日数であったが、田中が来た事と、次の日に数名のアルバイトが入ってきた事により、通常のシフト制に組み込んでもらう事が出来た。
こればっかりはほんの少しだけ田中に感謝しなくてはなるまい。

「コンコンッ……お兄ちゃん?もう出れそう?」

「あぁ、アスカ?ちょっと待ってて…」

ちょっとと言っても本当にちょっとである。
ベッドに投げ出されたカバンを引っ手繰って自室を出てアスカを途中まで送って行き、自分も学校へ行く。
そして、今日もまたアルメリアへ行くのだ。

―――――――――――――――――

「おはよーございまーす」

「おぅ爲葉、今は夕方前だぞー?」

「知ってますよ。あと皇さんが店長呼んでましたよ?」

「んぁ、分かった〜…」

来てそうそう、店長とエンカウントしたかと思うと気が滅入る。
しかも冷凍庫に突っ込んでたハズのジュース用アイスが三箱ほど休憩室のテーブルに平積みされているのだが、全て空っぽになっている。
きっと今頃は気付いた皇が鬼のような形相で美弥を探している事だろう。
そうとも知らずフラフラとどこかへ行ってしまう店長にはどこか元気が無いように見える。
シフト表を確認すると、今日は琴音が休みであるようだ。
もしかしなくても、これが原因なのだろう。

「さて、着替えるか………」

「あっ、美弥さん丁度いいとk………」

多分、人生今まで歩んできて一番死に近かった瞬間だっただろう。
ロッカールームに【空】のプレートがぶら下げられているのを確認してから入ったはずだった。
というか確認したってプレートは空の一文字をデカデカと象徴づけている。
ロッカールームは男女共用であり、入口にぶら下げられているプレートは【空】と【用】の二文字が表裏で書かれており、空は空室である事、用は使用中である事を示している。
問題は、今目の前で起こっている状況についてだ。
確かにロッカールームのプレートは【空】と書かれている。
要は誰も使っていないはずなのだ。
だが開けてみたらどうだろう?
子供用のピンク色のスポーツブラが、彼女の森林のような深緑色の肌と不釣り合い過ぎて色が浮き出ているようにも見える。
しかもそれを上下で着けているというのだから、どうも子供っぽいような気が。
そこまで思考を巡らせた所で、強烈な衝撃と共に光定は意識を失った。

―――――――――――

「……うぅ……」

「oh!気ガ付キマシタカー?!」

「あぁ……コルディアさん……ありがとう…」

目が覚めると天使が介抱してくれていた。
というのはまぁほんの少し冗談で。
気が付くと、山田の来る前日にアルバイトを申し込んできた二人の研修生の片割れが光定を膝枕で介抱していた。
彼女の名前は「コルディア・リングハート」近所にある大学の留学生だそうな。
そして彼女の種族はドワーフである。
種族特徴「背が物凄く小さい/ファンタジー物の物語と違ってモジャモジャじゃない/手先が器用」
要約:天使。

「あっ!コルディアちゃん!ダメ破君起きたんだ!」

「あぁ、仁賀さんまで………もう、死んでもいい…」

「ほぇ?!死んじゃヤダよぉ!?」

「ソーデスヨ!死ぬダメデース!絶対!」

そんな事言われても、ダブル天使にこうも迫られたら昇天してしまいかねない。
とか思うのも程々に、状況の把握が必要だろう。
確か着替えようとロッカールームへ入ろうとしたら顔面に強烈な一撃を喰らって…
間違いなく朝顔の仕業である事は確定的に明らかだ。

「いや死なないですよ?」

「ホント?良カッター…」

「もう!コルディアちゃん困らせちゃだめだよ?!」

頬を膨らませてプンスカと怒っている仁賀さん可愛い。
心の底から安心したのか自分の胸を撫で下ろして深呼吸してるコルディアさんも可愛い。
だがどちらも年上だ。

「おぉ、目が覚めた
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