果ての見えない砂漠。
そこにはオアシスや遺跡が点在している。
オアシスを中心に国々があり、そこの一番防衛しやすい場所に古墳がある。
かつて栄華を極めた国々は魔物の発生により危機を迎えた。
それらの頂点となって我々を苦しめたのはアポピスと呼ばれる大蛇の魔物だった。
冥府の力を宿すといわれるそれは当時の主神がファラオを抹殺するために造り上げた怪物だった。
とあるファラオはアポピスに敗れ国を失い、とあるファラオは迫り来るアポピスを討伐し国を守った。
当時武において誰にも敗けぬと謳われた、ラムセスと名乗る我も数え切れない程のアポピスと対峙し、討伐した。
だがある時全く互角の力を持つアポピスと対峙し、相討ちとなった。
互いに息の根は止めなかったが、互いに永い眠りに就く必要があった。
死を克服し、太陽神の力をこの身に宿し、奴を討ち、国の平穏を取り戻すため。
我は死に在りながらも生を失わなかった。
精と呼ばれる生命エネルギーを守りきったのだ。
その結果太陽神の力をこの身に宿し、生還することに成功した。
王の帰還を国民に知らせ、更なる昇華を果たした事を告げ、鼓舞し、奴を討ち果たすのだ。
全てはファラオとして国民を愛するが故だった。
決意を新たに棺の蓋を開けた。
「王が復活なされたぞおおおお!!!」
『うおおおおおおおおおおおお!!!』
目の前に拡がる国民の半分程は、儀式でしか姿を見せない筈のアヌビスやスフィンクスを模した姿をしていた。
「……それで?魔物は共存の道を選び、我の決意は無駄であったと。」
「ええと、そのう……」
「はっきりと申せ。」
「クゥゥン、その通りです。王よ」
現代のアヌビスはこれ程までに情けなく鳴くのか。
「まぁまぁ結果オーライですニャン。」
現代のスフィンクスはこれ程までに適当なのか。
「まあいい、確かに結果として平和ならそれでいいのだ。それよりも、奴はどうしている?」
「奴とは?」
「ネフェルタリと名乗ったアポピスだ。」
「彼女ならば王が眠りに就かれて以来未だ目を覚ましません。」
「女にはなっているのか?」
「はい。それは確認済みです。」
かつてあの強大な力が我が国のものになったらどれ程良いかと思ったものだ。
今ならば可能かもしれん。
「よし、かの地に出向こう。一人で行く。誰も付いてくるな。」
「危険です。王よ。」
「舐めるな。」
巨大なクレーター。
今は砂に埋もれかけているそこの中心に奴はいた。
あれほど破壊力を誇った巨躯は人間とまぐわうために小さくなっていた。
人間と比べれば十分な巨躯だが。
こうして大人しい姿を見てみると闇色の鱗はとても美しい。
黒、というより闇色。
とぐろを巻いている頂点には紫色の肌をした女体がある。
安産型の骨盤の上は折れそうな程細く括れている。
更に上はうつ伏せでも背中越しに見える大きな乳房。
結界を張って眠りに就いているが、少し時間を掛ければ直ぐに解けるだろう。
結界を解いて顔を覗くと、先ほど見た魔物娘の誰よりも美しかった。
目を開ければつり目ぎみの切れ長であることが想像出来る。
長い髪も鱗と同じ闇色だった。
我は手から魔力で出来た蛇を生成した。
赤い蛇。
太陽神の遣いの象徴を魔力で作り出し、使役することができる。
まだ眠っている間に蛇体を蛇で縛っていく。
更に両腕も小さい蛇で縛る。
太陽神の力を宿して肉体は全盛期に、蛇を操る力に言霊を操る力など、様々な恩恵があった。
声に魔力を乗せて命じる。
『目を覚ませ、表を上げよ。』
「……うん?わ、妾は一体、ん!?これは!?」
「久しぶりだな、ネフェルタリ。とりあえず縛らせてもらった。」
「貴様っラムセスか!ここで会ったが百年目!この身体は何だ!」
「まあ落ち着け、それは我のせいではない。」
「なるほど?時代は変わったと。」
「それでだ、我の嫁にならんか?」
「断る!どの面下げて果たし合いをした仲を誘う!」
「それはお互いの力を認めあった仲と解釈出来んか?」
「出来ん!であれば力ずくでやってみせよ!」
縛られた状況でよく啖呵を切ったものだ。
「なるほど、では、『口を開けろ』」
「何をぉあ!?」
「我の言葉に逆らえんだろう、貴様が寝ている間、此方はただ寝ていただけではないのだ。ところでネフェルタリ、これはギルタブリルの女から聞いたのだが、毒を持つ魔物娘は毒を射つ時快感を感じるそうだ。やってみるか?」
「な、何をする、うああ!?」
ネフェルタリの毒牙に吸い付いて
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