旅人がむしゃむしゃするだけ

「いやぁ助かりました。おかげで無事にたどり着けました」

「いえいえ」

「では、約束の報酬の方を」

俺はペコペコと頭をさげる人の良さそうな商人から、分厚い封筒を受け取った。
なんだか、事前に提示されてた金額通りだとすると妙に分厚く感じる。

「迅速な対応のおかげで、スムーズにことが運びました、ほんの気持ちです、お納め下さい」

「……では、お言葉に甘えて」

商人さんの言葉に、俺は甘んじてその封筒を懐に収めた。
善意は遠慮せず受け取ることが、自分にも相手にもいい結果をもたらす。
それに傭兵っていう仕事は貰えるものは貰うというのが常識だ。

「いやぁしかし、いいお嫁さんがいると羨ましいですねぇ、私も結婚願望が刺激されてしまいました」

「いや、それほどでもないデスヨ!」

商人さんの言葉に、俺の隣に立つハーピー、ヴェロニーカ(Вероника)は照れたように後頭部をかいた。

「上空にいるとヴェロニーカさんがいち早く野盗共を見つけて、アデルさんがすかさず迎撃に向かう、いやぁいいですね、チームワークですね」

そう、今回請け負った商人さんの道中護衛任務では、どこから情報が漏れたのか野盗どもが襲撃を仕掛けてきたのだ。
あらかじめ上空で張っていたヴェロニーカがすぐさま知らせてくれたおかげですぐさま迎撃に向かい難なく切り抜けたが、あれがなければ全滅はなくとも商品の一つか二つはダメにされていたかもしれない。
野盗どもはその場で縛り上げて、ヴェロニーカか近くの魔物娘にその情報を伝えた、彼らは今後野盗などから足を洗い幸せな生活を送ることだろう、いいことをした。

「そうだな、ヴィーカのお陰で、無事にことが済んだ、ありがとな」

「アッ……エヘヘ、アデル〜」

頭を撫でて、軽く額にキスをしてやるとヴィーカはうっとりとして俺の腰元に抱きついてきた、ふわふわの羽がくすぐったい。

「ははは、お熱いですな……では私はこれで、しばらくはこの街で露店を開いてますから、興味がありましたら是非来てください。今回は本当にありがとうございました」

「ええ、また縁がありましたら」

「Пок
#225;!」

フリフリと手を振るヴィーカに合わせて俺も会釈をする。
これで、今回の護衛任務は完遂である。
気持ちよく分かれるところまでが仕事なのだ。
特に商人相手には好印象を持たせたい。



ーーーそれからどーした



「さーてと……どこで食うかね」

「предвкушение……ココは、酪農盛んだから、たのしみダネ」

商人と別れた俺たちは、宿に荷物を置いてシャワーを浴び、街へと繰り出した。
俺は背中にしがみついて真横に顔を置くヴィーカの言葉に頷きながら、活気あるメインストリートを見渡す。
このラムルピュールの街は温暖な気候の明緑魔界で、人界魔界問わず様々な家畜や農産物を生産していることで有名だ、ラムルピュール産の陶酔の果実はけっこうに値の張る贅沢品である。

で、そんな街であるから、否が応にでも飯への期待は高まってくる。
うきうきと擬音が聞こえてきそうなほどご機嫌なヴィーカの頭を撫でてやりながら、俺は道を行く。

(活気のある街だなぁ……まぁ、セックス以外のやりがいを求めた魔物達が集まるんだから、当然か)

こういう雰囲気は嫌いじゃない。
石造りの道路はあちこちへと細い路地へ通じ、右を見れば肉屋左を見れば雑貨屋と、どこをみたって騒がしいほどに熱気溢れている。

(おっ、アレは)

ふと目についた店が、俺の足を止めた。
オリエンタルな雰囲気の清潔な入り口脇に、木製の渋い看板に『特産魔界豚!』と書かれている。

(よし、ここにしよう)

「アデル!ここがいいデス!」

「あいよ」

ヴィーカもここが気に入ったらしい、全く似た者同士だ。
俺は平均的なサイズの、俺基準で言えば若干小さいドアを開た。

「いらっしゃい!」

店内に入ると気持ちのいい声で店員のゴブリンに挨拶された。
軽く会釈しながら手頃なテーブルに腰掛ける、ヴィーカも直ぐに俺の向かい側にちょこんと座った。

「さーて、何がいいかな……」

「ンー……どれも美味しそうデス!」

ヴィーカにも見えるようにメニューを開き、考える。
書き連ねられた料理名はどれも美味しそうで食欲をそそる、懐に余裕はあるし、少し贅沢しても……

(……よし、この魔界豚の炒め物と、ライスをいただこう、それと……おし、んこ?)

聞いたことのない食べ物だ、なんだろう、すごく気になる。

「はい、お冷でーす」

オシンコという未知の言葉に想像を膨らませていると先ほどの店員が水を置きに来た、お、透明なグラスのコップなんて、高くないんだろうか。
まぁ良い、注文だ注文。

「この、魔界豚の炒め物とライスをお願いします。ヴィーカ決まったか?」
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