旅人がいちゃいちゃするだけ

晴れという天気は総じて良いことと思われやすいと思う。
ボクも事実、そうである。
親がどういうかはわからないが、カラッと晴れた雲ひとつない青空、優しく頬を撫でる微風、あたり一面に続く草原と地平線、想像しただけで胸が踊る。
そして、今日はそんな理想的な晴れであった。
太陽は燦々と輝いて、そよ風がふわりと吹いて、それに煽られて背の低い草たちがそよそよと揺れている。

……ついでに、そこらへんの木から聞こえる、セミの大合唱付きで。

「ぜぇっ、ぜえっ、ぜーっ」

「ん……はぁ、はぁ」

暑い、暑い、もはや熱い。
恐ろしいほどの暑さに打ちのめされながら、ボクと相棒は肩で息をしながら炎天下の下を歩いていた。
ちょうど正午頃か、中天からこちらを焼付くさんと光る太陽から隠れるように、ボクは帽子のツバを、相棒は真っ白なローブを深く被ってはいるがあまり効果はない。
だってそもそも気温が高い、直射日光に焼かれるよりはよほどましだが、あたり一面にむわっと広がる熱気は、その手の魔法を使えないボクらにはどうしようもなかった。

「はぁ、はぁっ、んっ、キティ、大丈夫?」

「君こそ、平気か?」

キティと呼ばれ、ボクは相棒に答える。
キティとはボクの愛称であり本名はキトリー(Quitterie)である。
この愛称を呼ぶことを許したのは今の所相棒以外にはいない。

「んっ、当然、ですよ、この程度、ぬるい風呂みたいな、もん……ぜぇ、ぜぇ」

低い背と薄い胸板をそらしてダヴィは強がるが、最後まで言い切る前に息を荒くしているあたり相当辛いのだろう、わかるよ、ボクも辛いもん。
ぐぅ、胸の谷間がむわむわでびちょびちょだ、気持ちわりー……

「意地は、張らなくて、いい……はぁ、しかし、まだ、次の街は見えないかな……」

「くっ、こんなことなら、涼しい夜のうちに、動いて、朝は休む、べき、でした」

「後悔、先に、立たずって、やつかな」

「なん、ですかぁ、はぁ、それ」

「ジパングのコトワザ……ふぅっ」

額の汗を拭う。
お互い顎から汗を滴らせながらも軽口を叩き会えば、少しだけ気分が楽になった。
もう少し、もう少しのはず……

それからしばらくとろっちく歩くうちに、突然ダヴィが声を上げた。

「……!キティ!あれ!」

「おぉ……見えてるよ、ダヴィ」

ダヴィが顔を輝かせて前を指差す。
ボクもその方角をみた、思わず笑みがこぼれた。
前の街を出てから十一日、ついに、ついに見つけた……!!

「やっと、街だ……街が見えた……やったぁぁぁぁ……!!」

大声をあげる気力もないか、ダヴィが崩れ落ちて歓喜の声を絞り出す。
そう、この灼熱の道を抜けて、ようやく僕たちは目指していた街、ラムルピュールにたどり着いたのだ!

……いや、街が見えただけだからまだ歩かなきゃいけないけど。
目的地を視認さえすればあとは早いもの、ボクとダヴィは先ほどまでの芋虫にも劣る歩行速度から打って変わってコカトリスのごとき速度で街へたどり着いたのだった。
街の門に着く頃には脱水症状でくたばりかけてしまったが、てへぺろっ☆



ーそれからどーしたー



「っはぁー……いい湯だったぁ……」

ダヴィはゴシゴシとその長めの茶髪をタオルで拭いながら、浴室から上機嫌で出てきた。
薄手のワイシャツににハーフパンツという格好のダヴィに思わずボクは釣られて目で追ってしまうが、すぐに視線をそらす、恥ずかしいし。

「シャワーはいい……私にはこれが必要なんだ」

「あぁ、4日前に川で水浴びして以来だからな、やはり文明人たるもの、熱いシャワーは欠かせないね」

かくいうボクもダヴィの前にシャワーをいただいていた。
ダヴィも同じく汗だくだったけど、レディに譲るのは紳士のたしなみと譲ってくれた、ダヴィ様様だね。
そんなわけでボク、ダヴィの順番で旅の汗とチリを流したのであった。
いやぁ!シャワーというのは素晴らしいね!魔法技術バンザイ!武器とかそんなんよりこういう日常を豊かにする技術こそが真の技術だよね!
さすがこの地方でも大きな村だけあって、宿の設備はかなりE感じだ!

「ほら、ダヴィ」

「あ、ありがとうキティ……おっ!キンッキンに冷えてる……!乾杯!」

「はいはい、乾杯」

風呂上がりのダヴィに、僕は注文しておいたラガー酒とソーセージを差し出した。
ダヴィは目を輝かせてすぐさまその中身の黄金の雫を喉に流し込んで、僕もそれを横目で見たあと、同じく中身をあおる。
っーーー!!犯罪的だ……!うますぎる……!
日持ちのいいぬるいワインを口慰みにチマチマやるのとは違う、贅沢極まりない一気飲み……頭がキーンと痛くなるのさえ心地よい!
思わず僕は一気にジョッキの中身を空っぽにしてしまった。

「ーーーーーっぷあ!んーーーー!!お酒サイコー
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