―――もうこの家に居ても仕方がないかな。
そう考えて家から出たが、特に行くあても無い。
いつから溜まり始めただろうか。自分の抱えるいくつかの借金の額を頭の中で計算してみる。
売れる物は全て売った。家具やアクセサリと言った高価な物はもちろん、日常品や母からもらった服までも。
最後に家を売ったが、それでもまだ借金は残っている…。
街で働いて稼ごうともしたが、昔から自分は仕事もロクに出来ない。何かとドジを踏んでしまいすぐに辞めさせられるのだ。
いくつかの職を転々としたが、どれも長続きはしなかった。
母は私が生まれてすぐ病魔により他界、男手ひとつで漁師の父親に育てられ今まで生きてきたが、その父もしばらく前に海に出たきりで消息不明。
この街の海は魔物が出ると言われていたから魔物に連れ去られてしまったのだろうか…。
それ以来は借金を繰り返し、今まで何とか生き長らえて来たが、最近では毎日借金取りに怯え、逃げ回る暮らし。
もう精神的にも限界だった。
いっそ自分の身体を売ろうかとまで考えた。
けれど、自分には想い人がいた。遠目でしか見たことは無いが…。どんな人かは街のウワサで聞いていた。
『彼』の事を考えると、身体を売るのは気が引けた…。
そんなことを考えながら歩いているといつの間にか海沿いの崖に来ていた。
高さは20m近くあるだろうか、下を覗き込めば足がすくみそうな高さ。
足が勝手にこの場所を選んだ理由はなんとなく分かっていた。…もう他に、道は無い気がする。
せめて最後に私の想い人、『彼』に、会いたk
ガラッ
嫌な音、足場が少し崩れたかな。うん、証拠に身体が軽く…なって…ぇ?
「ってちょっと待ってぇ!まだ心の準備がああぁぁぁっ!!!」―――
―――「おお!またこいつは大物だねぇ!ほんっとお前漁の才能があるんじゃないか?」
朝漁に出て、まだ昼間、街の人がお腹を空かせているような時間を見計らって、魚を売りに歩く。
大物と言われたが…割と小柄の魚なのだが、大袈裟な…。まぁ褒められて嫌な気持ちはしないが…。
「いや、今日は運が良かっただけですよ、きっと。あー、えっと。今日も…だったかな。あはは…」
その街では今、漁師が不足している。だから、そこで漁師として働けば結構楽できるんじゃないか?
そんな話を聞いてこの街にやって来てまだ2カ月、確かに漁師は少なく、腕の立つ漁師などいなかった。
せっかく海に面した街なのだ、魚を取らずしてどうする。
と街の人に聞いてみたのだが、どうも海では魔物が出るのだとか。それで漁師が減ったらしい。
反魔物思想のこの街では、どうも魔物が恐ろしいものらしい。
魔物は人間を襲い喰う生き物だと、日夜教会で騒がれている。
親魔物思想の街から来た自分としては、大儲けの機会であり、この上ないチャンスだ。
実際魔物に何度か会ったことがあるが決して話の通じない連中ばかりではない。喰われるようなことはまず無いだろう。と言っても連れ去られて海から戻ってこれないは最悪ありそうな話だが…。
だから、たとえ海で魔物に会っても(別の意味で)襲われないように気をつければいいだけなのだ。
「しっかし、お前は海が恐くは無いのか?魔物に襲われた人間は帰ってこないと言うじゃないか…」
「そうですね…もし自分が海から帰ってこなくなったら、魔物にでも喰われたとでも考えといてくださいね」
「…はっはっは!そんな冗談まで言えるか!せっかくうまい魚が食えるんだ!まだ死なれちゃぁ困るぜ!」
「ははっ気をつけることにしますよ。では、俺はこれで。毎度ありー!」
相手に話を合わせておかないと、もし自分が親魔物派だと教会にばれたら面倒なことになりそうだ。
せっかく順調に生活が始まったのだから、なるべく面倒事は避けたいのだ…―――
―――…波の…音…?ここ…どこ…浜辺…?
目を覚まして最初に感じたのは妙な身体の火照り、
そして、誰かを想う強い心
「……そうだ…。『彼』を…探さなきゃ。私の…大切な…」
独り言をつぶやいて立ち上がると、自分の体の変化にも気付かず、おぼつかない足取りで街へと向かった―――
―――「…よし、これで全部かな」
今日獲った獲物を全て売りさばき、やっと家に帰れる頃には空に星が見えていた。
まだ自分が10歳ぐらいの頃から、生まれ育った街で8年間漁師修行をしてきた。
かなり鍛えていたので体付きもよく、身長も高かった。体力にはある程度自身がある。
父親が腕利きの漁師だったことから、自分もいつか親父を超えてやる!と当時は意気込んでいたが、元々漁業が盛んな街で、生き残るには高い技術が必要だった。
そんな中、自分は才能が無かったらしく、父から「お前はこの街で漁師になるのは難しいかもしれないな」と言われたのだ。
ある日漁
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