「今日からあなた様のアシスタントを担当することになりました、『リティム=フィリアラム』と申します!これからよろしくお願いしますね、マスター!」
ただでさえ訳が分からない言葉だった。
その上寝起きでそんなこと言われたら、また変な夢を見てしまった、という程度にしか思わないだろう。
ライトノベルの読み過ぎとアニメの見過ぎが影響したか、羽の生えた人形サイズの人型生命体、妖精が見えてしまっている。悪くない夢だ。
「……いいなー、妖精さん欲しいなー」
「えっ……!あ、はい……。えと、い、一応マスターに私をプレゼント……ってことになりは……なるんですが……」
「やったー、じゃあ俺は毎日妖精さんをオナホ代わりに使って性欲処理が出来るんですねわかりm」
「ちょっ!?ちょちょいきなりそんな……っ!?まま、ま、マスターの変態っ!!!」
「ふがっ!」
出会いから1分で変態認定+目覚まし時計を全力投球(小さい体のどこにそんな力があったのか)を貰ったこの瞬間から、すでにお互いの力関係は決まっていたのかもしれない。
この日から、一人の物書きの青年は、ちょっと口うるさくておせっかいなアシスタントと共に過ごすことになったのだった―――
―――「あれ?マスター、何見てるんですか?アルバム?」
「あー、うん。お前が最初ウチに来た時に記念に撮った奴だなー。最初はビックリしたよなぁ……ほんとおとぎ話か、って感じだったもんな、今もう慣れちまったけど。てか、最初のころはお前可愛かったよな……、何言っても従順に働いてくれたし、気は利いたし……」
「へぇ、まるで今の私が従順じゃなくて気が効かないフェアリーみたいな言い方ですね?コーヒーに入れる砂糖と塩を間違えてしまいそうな発言です」
「はい、ごめんなさい何でもないです、そんなドジっ娘属性なんて今いらないです」
瞳以外を満面の笑みにしたフェアリー、リティムは慣れた手つきでスティックシュガーの先をちぎると、中身を半分ほどコーヒーに入れる。
彼女にはシャベルのようなサイズのスプーンで砂糖をかき混ぜて溶かすと、コーヒーカップを両手に抱えてアルバムを枕に机に突っ伏した自分の主のもとへと運んで行く。
「大体ですね、私はお母様からマスターの創作活動の手助けをして来い、って言われてるんですよ?それが実際どうですか?毎日毎日夜も遅くまで課題の手伝いをさせられるだけで短編の小説すら書いてないじゃないですか。こっちだって嫌気がさして仕事も雑になりますよ……」
「おう……それを言われるとつらい……。仕方ないんだ……俺は筆が遅いから……同情するなら才能くれ」
「……ま、私がちゃんと本来来るはずだった、リャナンシーだったらこんなことにはならなかったんですよね」
「それは、言わない約束だろ。あー、才能とか言った俺が悪いのか、うん、課題するわ……」
そう、彼女は少々ややこしい事情でこの家に来てしまっている。
代々この家では有名な書道家や画家、小説家を輩出して来ており、その先祖全てが創作家によっての女神のような存在、リャナンシーと何らかの関わりがあったとされている。
このフィリアラム家は青年の家と代々協力関係にあり、新たな世代が生まれるごとに新しいリャナンシーをアシスタントとして送り込んでいたらしい。
しかし、青年の親とリャナンシーの間には残念ながら子宝に恵まれず、仕方なくフィリアラム家では、当時孤児だったリティムを養子に取り、この家に送り込んだのだという。
そして送り込まれたのがリティム、だが彼女はリャナンシーではなく、フェアリーであることをフィリアラム家に隠していたのだ。リャナンシーでないことがバレてしまうと、また捨てられるのではないだろうかということを危惧して。
結果、リャナンシーからの才能と実力を受け取り損ねた青年と、優れた創作物を出してくれないと家に戻れなくなったフェアリーという妙な関係が出来てしまったわけである。
青年はしばらく机に広げたレポート用紙とにらめっこしていたが、やがて観念したように淹れてもらったコーヒーを一気に飲み干し、大きく伸びをしてアルバムを本棚にしまう。
「よしっ!めんどい!やめよ!寝よ!」
「なんでそうなるんですか!課題は!創作は!?」
「明日考えるさ!ケセラセラ!ではおやすみなさい!」
そういってそそくさとベッドへ潜り込んでしまう、そんな主をリティムはあきれた表情でしばらく見ていたが、早々に寝息を立て始め本格的な睡眠に入ってしまったのを見て、今度はため息をこぼした。
「まったくこのマスターは……これじゃれっきとしたリャナンシーでも手を焼いたんじゃないかなぁ。それともリャナンシーにはこの怠け者すらを動かすだけの魅力があるのかな……」
机の上に散らかったレポート用紙や参考書をまとめ、電源を落とさずに
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