「んぁぁ~っ・・・ん・・・?」
右腕に違和感。
「わぅん・・・」
やっぱりワルフがくっついていた。
「・・・ふふ」
撫でてあげると、幸せそうに耳をパタパタと動かした。
なんか・・・いいなぁ、こういうの。
ワルフを撫でていると、不思議と幸せな気持ちになってくる。
「わぅ・・・わぅ?」
「あ、ごめんね、ワルフ。起こしちゃった?」
「いえ、いつもはこのくらいの時間に起きるので・・・おはようございます、ヴェルさん♪」
「おはよう。さてと・・・ご飯食べて、また探しに行こうか」
「はい♪」
「・・・」
「・・・」
あっれー。ここどこ?
森の中で、壮絶に迷子。
・・・どうしてこうなった・・・。
――1時間前。
「くんくん・・・あ!みんなの匂いがする!」
「え!?あ、ちょっとワルフ!?」
突然、何かを嗅ぎつけたらしいワルフが、森の奥に走っていった。
あわてて追いかけて・・・。
※一人目の迷子が完成しました。
「ワルフー、どこだー?」
返事が無い、ただの木々のようだ。
「・・・ワルフー?」
「・・ヴ・・さ・・・」
「・・・ん?」
何か聞こえた気がする。
「ワルフー!?」
「ヴェルさん!そこ動かないでくださいね!」
「わ、わかった!」
※迷子が合流して二人の迷子になりました。
「・・・現在位置、わかる?」
「くんくん・・・うぅ~・・・無理そうです・・・」
森に入ってから、ワルフの鼻はまた不調になっていた。
「うーん・・・コンパスも使えないし・・・」
さっきからずっと針がぐるぐると回っている。
磁性の鉱物でも埋まっているのだろうか・・・。
「うぅ・・・ごめんなさい・・・」
「ワルフのせいじゃな・・・くないけど、気にしないで。もしかしたら、この森のどこかにいるかもしれないし」
ワルフは悪くないと言おうと思ったら、迷子になった原因はワルフだった。
・・・流石にフォローできなかった。
「・・・あ、あの、ヴェルさん・・・?」
「どうしたの、ワルフ?」
「そ、その・・・あの・・・ねぇ?///」
「いや、ねぇ?って言われても・・・」
頬を染めて切なそうに瞳を潤ませながら、甘えるように尻尾を振って抱きついてきた。
貞操の危機の予感。
「流石に、ここでそういうのは危ないと思います・・・」
突発的発情は止めてほしい・・・。
しかも寝る前ならまだしも、こんな昼間(空が見えなくてずっと薄暗いので予想でだが)で森の中で。
「ダメですかぁ・・・?」
「う・・・だ、ダメです!流石にダメ!」
あ、危なかった・・・。
「わかりましたぁ・・・」
シュンとうなだれてしまった。
何このすばらしいまでの罪悪感。
「・・・夜までちゃんと我慢したら、ご褒美あげるから、ね?」
「ほ、本当ですか!?」
「う、うん、本当だよ」
正直何も考えてなかったのだが、とても嬉しそうに尻尾を振られてしまった。
・・・どうしようこれ・・・。俺の馬鹿・・・。
「早く夜にならないかなぁ・・・♪」
・・・もうだめだ、何も考えてなかったなんて言えない・・・。
覚悟を決めよう・・・。
続く
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