九日目

「ふう・・・何とか着いたな・・・」
「ですねー・・・」
目的地の村の入り口(ようこそというアーチが作られていた)の前。
太陽が真上に来るちょっと前、お風呂を取るには少し早いくらいの時間に到着した。
ざっと見回しただけだと、うちの村の3分の2くらいの大きさかな。
あまり大きくはないが、小さすぎるというほどでもない。
「とりあえず、泊まる場所を探そうか」
宿は・・・正直あるかどうか期待してないけど、魔女がいるならサバトの建物があるかもしれない。そこにでも泊めてもらえるといいけど・・・。
いや、ようこそとか書いてあるアーチあったし宿屋あるかな・・・。
とか考えながら村に入ろうとすると
「そこの君たち、ちょっといいかな?」
「はい?」
突然声をかけられた。
振り返ると、なんか甲冑を着た人がいた。
・・・え、もしかして騎士団?マジで?
ちょっと待って騎士団くるとか聞いてないよ?
背は俺より高いし、甲冑着てるだけあってガタイもいい。襲い掛かられたら勝てるかわからないな・・・。
「ここが何の村か、知っているかい?」
「さ、さぁ・・・?」
とりあえず知らないということにしておいてみる。
実際、詳しくは知らないし。
「そうか・・・。いや、すまないね、余り大きな声では言えないんだが、迷子になってしまって・・・」
「は、はぁ・・・そうですか・・・」
迷子って・・・。
「ヴェルさん・・・あの・・・私たちどうすれば・・・」コソコソ
「・・・お腹空いた・・・お昼ご飯食べたい・・」コソコソ
俺にきかれてもどうすればいいのかわからないよ。
あとルゥちゃんはもうちょっと我慢しなさい。俺も腹減ったけど。
「あの・・・もうすぐお昼の時間ですし、とりあえず村に入りませんか?」
「あ、そうだね、そうしようか」
エタイノシラナイムラニナンカーとか変にごねられなくて良かった。

「いらっしゃいませー♪」
村の中の酒場。店員さんは人間(多分)のお姉さんでした。少なくとも見た目は人間。
気配とか感じ取れないからわからないけど。
「4名様ですねー?お好きな席へどうぞー」
丸テーブルの席が十何個か並んでいたが、ちょっと時間が早いせいか、お店はがらがらだった。
一歩動くごとにガチャガチャ言って正直五月蠅い。というか甲冑着たまま椅子に座って大丈夫なのかな・・・。
「ここにしましょうか」
とりあえず入り口から一番遠い席へ。椅子が頑丈なのか、甲冑が見た目より軽いのか、普通に座れていた。
「・・・あの、兜、とらないんですか?」
「あ、すいまないね。忘れていたよ」
そういって兜を外すと・・・
「「「えっ」」」
「えっ?」
中から出てきたのは、女の人の顔でした。
思わず「えっ」て言っちゃったよ・・・。
「・・・あ、普通女だとは思わないよね」
「え、あ、す、すいません・・・?」
男にしては声が高いなーって思ったら・・・。
というか、ワーウルフの二人ならそういうのわかるんじゃないの?
ちらりと伺ってみたら思い切り目をそらしていた。
・・・こいつら実は狼の耳と尻尾つけただけの人間だったりしないよね?
「あ、そういえばまだ名乗っていなかったね。私の名前はリアっていうんだ」
「あ、ヴェルクルス・セイラル・フォーケインです。ヴェルでいいですよ。で、こっち(右手側)が嫁のワルフで、こっち(左手側)がなんか付いて来たルゥです」
「どうも・・・」
「・・・どうも・・・」
相手が女だとわかったからか、少し警戒したような声音になっていた。
「はい、サービスのミルクです!メニューは今日のお勧めしかないけど、それでいいですよね?」
簡単な自己紹介を終えたところで、さっきの娘がミルクを持ってきた。
「あ、はい、じゃあそれで」
「私もそれでいいよ」
「かしこまりましたー♪」
注文をとるとパタパタと戻っていった。
「・・・それじゃ、私たちの出会いに、乾杯!」
「か、乾杯!」
「乾杯?」
「・・・ん・・・」
ルゥちゃんもうちょい愛想良くしてあげて!


続く
13/12/09 04:37更新 / マオ・チャルム
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