「さあて、地上へ向かいますか」
誰に聞かせるのでもなく……というか、自分にそう言い聞かせて、天界から地上へ続く道を抜ける。
私は下位神属のエンジェルの一人だ。主神様より命を受け、人間と共に地上に蔓延る魔物を殲滅させに行くため、勇者の待つ教会へ向かっていた。
争いは嫌いであるが……欲に溺れるだけでなく禁欲的な人々まで欲に溺れさせようとする憎き魔物へ主神様の名のもとに罰を与える為、私は戦う訓練もした。攻撃魔術から戦闘補助的な魔術まで完璧に覚えた。
つまり、準備は万端だ。満を持して私は地上の遥か上空を飛ぶ。
「さてと、主神様に言われた教会はっと……」
高い上空から向かうように言われた教会を探す。
転移系の魔術は得意ではないので、こうして地道に探すしかない……こういった戦闘向きでは無い魔術の勉強もサボらなければ良かったとこれほど思った事は無かった。
「ううむ……どこでしょうか……」
特徴は覚えているので肉眼で地道に探す事は可能だが……詳しい場所まで聞いていなかったからそれっぽいものを探す事になる。
教会なのでそう間違える事は無いと思うが……遥か上空からでは探しにくい。
そう、今私は遥か上空……かなり高い場所にいたのだ。
「もう少し降りてみる必要が……あれ?」
上空は地上と比べ寒い。
圧力やら気温やらが関係してくるようだがそんな専門知識持ってない私は仕組みなどまったくわからないが、とにかく地上と比べ空は寒い。
特に今この地域では冬なので上空の気温は零下になるほど寒い。
私自身は寒さに強い事と教会を探すのに夢中になって気付いていなかったが……私の腰から生える翼は寒すぎて凍りついていた。
今までは動かし続けていたからなんとか飛べていたが……少し下降するために止めた途端、自分の意志ではほとんど動かせなくなってしまった。
「あ……ああ……おち……!?」
もちろん、翼がまともに動かないのでは飛べるはずが無い。
「ひ、ひゃあああああああああああああああああっ!!」
私は悲鳴を上げながら、自分の意志とは無関係に地上へゆっくりと、段々加速しながら墜ち始めた。
「ああああ動けえええええええ私の翼ようごけえええええええっ!!」
必死になって翼を動かそうとする私。
このままでは魔物を討伐するどころか地面に叩き付けられてぺちゃんこになってしまう。
それだけは避けなければ……パニックになっている私の頭の中ではもはやそれしか考えられず、墜ちて行く中ひたすらに翼を動かそうとしていた。
「よおおおし少しずつ動いてきたああああああってもう地面がすぐそこにいいいいいっ!?」
必死に動かそうとしたのが功を奏したのか、それとも地面に墜ちていくうちに解凍されてきたのか、少しずつだが動くようになってきた。
一安心したところで目の前……というか下を見てみたら……もう地面衝突まで数百メートル程しかないところまで墜ちていた。
このままでは結局ぺちゃんこなので今度は必死になって翼を動かしてどうにか落下を止め浮かび上がろうとするが……
「ぶーーーつーーーかーーーるーーーーーーーーー!!」
人間(じゃなくてエンジェルだけど)死ぬ気でやればなんとかなるようで、結構墜落の勢いは弱まった。しかし、地面にぶつかる事は回避できなさそうだ。
ぺちゃんこになるような勢いは既になく、命こそは助かりそうだがかなりの痛みは襲ってくるだろう……その怖さに私は思わず目を瞑ってしまった。
「うわああああふにゅっ!?」
「ごはっ……!?」ビリィッ
そのまま何も見ずに墜ち続けていき、地面にぶつかると思った瞬間……何かが破れる音と共に柔らかいものにぶつかった。
「にゃへ……ごふっ!!」
「が……あ……」
そのまま地面に背中から叩き付けられた私……途中でクッションがあったおかげでそこまで痛くは無いものの、衝撃が身体を走り変な痺れでふらふらとする。
「いてて……」
「ぐ……な、何が……」
それよりも、先程から私以外の女性の声が聞こえてくる。
もしかして……というかもしかしなくてもやっぱり私は落ちた時誰か他の人にぶつかったのだろう……柔らかかったのはおそらくこの女性の身体だろう。
「すみません……ついうっかり翼が凍っちゃ…………」
いきなり人様に迷惑を掛けてしまった。それはいくらなんでも不味い。
だから私は痛みを堪えつつ、どうにか起き上がって私とぶつかったであろう人の無事を確認するため声がする方を見たら……
「な、何だよいったい……天使?」
「あ、悪魔……!?」
その女性は、人間ではなかった。
一見普通の女性のようにも見えたが、人間には存在しないパーツ……頭から捻じ曲がった角、腰からは蝙蝠の様な翼と先端がハート型に膨らんだ群青色の尻尾をはやしていた……つ
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