前編

キーン、コーン、カーン、コーン……


「ふぁ〜……帰ろっと!」

時間は数時間前に遡る。
今日の授業が全て終わり、わたしは欠伸しながら帰る準備をしていた。

「八木さん、そんなに堂々と帰る宣言しないでよ……嫌がらせ?」
「あ……いや、そんなつもりじゃなかったんだけど……」
「そんな事わかってるわよ…」

今は2月中旬。わたし達は高校3年生。
この二つのワードから導かれるもの……そう、わたし達は今前期試験に向けて最後の追い込み中だ。

いや、わたし達というのにはちょっと語弊があるか。

何故ならば、わたしはもう既に大学への進学は決まっているからだ。
簡単に言えば、わたしは少し前に推薦入試で洛出(らくしゅつ)大学に合格していたのでもう勉強に勤しむ必要がないのだった。
だからわたしは帰る……今からの補講を受けずにだ。

「八木さんもう大学決まってるもんね羨ましい」
「べ、別に楽に入ったわけじゃないわよ!?」
「それはわかってるけど……」

一般入試組の恨めしそうな視線が痛い……
しかしわたしだって別に楽して合格した訳ではないので言わせてもらったが……やはり今勉強している組からは羨ましがられるようだ。

「そ、それじゃあ……」
「ん。また明日ね八木さん」

だからわたしはそんな視線からそそくさと教室を出る事にしたのであった。
本気では無いにしても、皆の目が恐いし、何より他の推薦合格組もそそくさと帰っているからね。


「ヒカリ〜帰ろ〜」

帰宅する為に教室を出て昇降口に向かうわたし。
でもその前に、わたしは親友と一緒に帰ろうと思い、その親友がいる4組(わたしは6組)まで会いに向かった。

「悪いがしょーこ、少し待っててくれないか?」
「いいよ。でも早くしてね」

教室の外から声を掛けたが……わたしの親友で幼馴染みである、金髪で金の輪を頭上に浮かべ、白い翼を生やした幼女……エンジェルの天野光里(あまのひかり)はまだ帰りの準備をしているところであった。
ヒカリもわたしと同じ大学の別の学部を同じように推薦で受け合格しているので、このように一緒に帰れるのだ。
だが、あまり待つ事になると、わたしの教室と同じように皆の視線が痛く感じるのでなるべく早くして欲しい……

「お待たせ。じゃあ帰るか」
「そうだね。でも今日はちょっと買い物付き合ってくれない?」
「は?」

ようやく準備が終わり教室から出てきたヒカリに、わたしは買い物に付き合ってと頼んだ。
しかし、予想通り露骨に嫌な顔をされてしまった。

「しょーこ……まだ他の皆は頑張ってる時期に遊びに行くなんて申し訳ないと思わないのか?」

何故ならは、ヒカリはエンジェルらしく真面目だからである。
いくら自分達が合格しているからといって、学校全体では受験モードだから控えるべきと考えているのだ……流石元生徒会長といったところだ。
だが、わたしは別にただ遊びで買い物に行くわけではない。

「いやさ、わたし達もう卒業じゃんか?」
「ああ、そうだがそれが?」
「それで、記念にサバトの後輩達に贈り物をあげようと思ってね。その贈り物を一緒に選んでほしいのよ」
「ああ、そういう事か」

わたし達はもうじき卒業する。
だからこそ、わたしはサバトの皆に何かプレゼントを贈りたかった。
わたしのサバトは科学部に魔術を融合させた『部活』だから、この先も月1回で黒ミサを開催して会う事になっていたとしても卒業記念としてプレゼントを贈っても問題はないはずだ。
だからわたしは今日、この後に特に用事もないから何を贈ろうか考えるために買い物に行こうと思ったのだ。
ただ、わたし一人の考えだとわたしの趣味に偏るかもしれないので、ヒカリを誘ったのだった。

「それで、結局いいの?」
「まあそういう事なら……私も今の生徒会のメンバーに何かプレゼントしようかな……」
「じゃあ決定で。じゃあ直接デパートに向かおう!」

買い物に行く理由をきちんと言ったらヒカリも納得してくれたようだ。
それどころか、自分も後輩の為に何かプレゼントを贈ろうかと考え始めたようだ。

「あ、悪いが一旦家に寄っていいか?今日は財布持ってきてないんだ」
「あらま……じゃあまずはヒカリの家に寄ってからでいいか。わたしは準備万端だしね」
「そうだな」

だからヒカリも一緒に行く事になった……が、最初から行く事を決めていたわたしと違いヒカリは買い物の準備などできていない。
なので、まずはヒカリの家に寄ってから買い物に出掛ける事になった。
どうせ目的地であるデパートまでの途中にあるし、たいした遠回りでもないという事で二人でヒカリの家に向かったのだった……



「それじゃあ急いで取ってくる。中で待ってるか?」
「んー……いいや外で待ってるよ」
「わかった。じゃあなるべく早く戻ってくる
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6..12]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33