シャアアアアア……
「いてて……」
「あれ?やっぱりまだ沁みるの?」
「いえ……強く擦ると少し痛いだけなんだけど……強く擦っちゃって……」
「今日は砂埃酷かったもんなぁ……尻尾の先まできちんと洗っとこ……」
「出してないのに?まあいいけど……私もしっかり洗っておこう……」
現在20時。
私達は夕飯を食べ終わり、女性全員でお風呂に入っていた。
女性全員という事は……もちろんセレンちゃんもカリンも一緒だ。
しかもカリンはお風呂では絶対に人化を解くようで、刑部狸そのものの姿をしている。
「しかしなんというか…カリンの刑部狸としての姿はやっぱ見慣れないなぁ……」
「まあお風呂以外やと基本人化の術使っとるからな。最近はちょくちょく解除しとる気もするけど……」
「たしかにさいきんすぐ気付かれること多いもんね〜。セレンお姉ちゃんもすぐカリンお姉ちゃんが刑部狸だってみやぶったよね?」
「ワタシは魔力を読み取る訓練してたし、元々それが得意でしたからね。初めてアメリに会った時もすぐあなたが魔物だって見破れましたよ?」
「そういえばそんな事もあったねー……」
ふりふりと揺れ動く泡まみれのカリンの尻尾……ふわふわとしてそうだが、触ったりすると私も触られたりするかもしれないので止めておく。
そんなカリンの人化の術をいとも簡単に見破ったセレンちゃん。どうやらそういった変化の類を見破るのが得意らしい。
そういえば以前にも簡単に人化の術を使っていたアメリちゃんやローブを着ただけの私を見破っていた事があった気がする……
懐かしいなぁと思ったけど、まだあれからそんなに経ってないんだよね……
やっぱり旅が楽しくて、毎日充実してるからたった数ヶ月前の事でも懐かしく感じてしまう。
「でも作り笑顔は下手やな」
「なっ……人が気にしてる事を言わなくても良いじゃないですか!!」
「そういえば、なんだかんだ言ってあまり敬語も抜けてないね」
「ま、まあそうですけど何ですよ?」
「……意識して実行しようとすると酷くなるみたいだね……」
「う……」
カリンに指摘されてそれも思い出したが、セレンちゃんの作り笑顔は本当に恐い。
自然と出た笑みはアメリちゃんに負けないぐらい可愛いのに、作り笑いは「今から酷い事するよ」とでも言われたような錯覚に襲われる程だ。
それはどうやら自分で意識してやるのが苦手らしい……意識してタメ口を使おうとして訳分からなくなっているのがいい例だ。
「まあ無理な喋り方はしなくていいよ。自分が喋りやすい感じでいいからね」
「わかりました……ではまあこんな感じでよろしく」
「うん」
それでも一応タメ口と敬語を混ぜた感じで行くようだ……まあ自然な感じになるまではそれが一番いいだろう。
無理に変えようとしたり笑顔を作ったって可愛さが半減未満になっちゃうからね。
「ところで……今更ですが一つ聞いて良い?」
「ん?何セレンお姉ちゃん?」
「このお風呂……というか『テント』大きくないですか?」
「あ、やっぱりセレンちゃんもそう感じたんだ」
「う〜ん……やっぱり大きいのかなぁ……」
そしてやはりというか、アメリちゃんのこの『テント』の異様な大きさについてセレンちゃんがツッコミを入れた。
確実に全員が思う事のようだ……アメリちゃんは相変わらず不思議そうだけど。
「そもそもこれどういう原理なのです?」
「わかんなーい。そういうのはおうちにいるこのテント作ったお姉ちゃんたちに聞いて」
「それが出来るのなら苦労はしませんよ……」
言われてみれば、どうしてあんな2,3人程度が入るようなテントの外見なのにこんな大きな小屋みたいになっているのか不思議だ。
魔法ってそういうものだと思っていたけど……魔王軍に伝わる秘伝の術とかだったりして……
シャアアアアア……
「それにしてもさカリン……」
「なんやサマリ?」
「ヘクターンってあとどれぐらい掛かりそう?」
「せやな……1週間もあれば着くんとちゃうかな?」
「へぇ〜……」
髪を洗いながら、私はカリンにあとどれぐらいで目的地である『ヘクターン』までどれぐらい掛かるのか尋ねた。
そしたらどうやらあと1週間もあれば着くようだとの回答が返ってきた……
「じゃあ……カリンとの旅も後1週間かぁ……」
「せやな……」
それは、カリンと旅が出来るのも後1週間だけだという事だった。
そもそも今回カリンはたぬたぬ雑貨の店員として荷物を届ける為に旅をしているのだから、届け終えたら報告しに戻らなければいけなかった。
だから、ヘクターンの到着はカリンとの別れの時だ。
「まあ、帰った後オトンの怪我が完治したらまた大陸向かう。んで皆と合流する予定や」
「うん……また、必ず一緒に旅しようね」
「ああ」
でも、それは一生の別れ
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