旅48 ルージュ街の幼き王女

「へぇ〜……まだ会った事の無い姉妹に会う為の旅か〜……」
「うんそうだよ!レミィナお姉ちゃんはなんで旅してるの?」
「わたしはね……楽しいから、かな。アメリは旅していて楽しい?」
「うん!」

現在9時ちょっと過ぎ。
大怪我をしているセレンちゃんを病院で治療してもらう為『ルージュ・シティ』に向け出発しようとしたところで、突然上空に飛行機なるユウロがいた世界の乗り物が現れたと思ったら、そこから一人のリリム……レミィナさんが降りてきた。

「ところでレミィナお姉ちゃん。あのひこうきっていうお空とんでるの何?お姉ちゃんあそこからとんできたよね?」
「ああ……あれはね、ヴェルナー……わたしの親衛隊兼御者兼伴侶の人が操縦してる、空を飛ぶ馬車みたいなものよ」
「へぇ〜……レミィナお姉ちゃんのだんなさんか〜…………」

どうやらあの飛行機という物はレミィナさんの旦那さんが操縦しているらしい。
異世界の物を良く操縦なんか出来るな……って思ったけど、もしかしたらレミィナさんの旦那さんのヴェルナーさんもユウロと同じ世界の人間かもしれない。

「あれ……というか飛行機は知ってるの?」
「今ユウロお兄ちゃんから聞いた」
「ユウロ……って、たしか君だよね?」
「はい」
「ユウロ君……なんで知ってるの?」

そんなレミィナさんは、何故アメリちゃんが飛行機という物の名称を知っているのか気になったらしく、ユウロの方を向いて質問を始めた。
ちなみに自己紹介は先程簡単に済ませておいた……まあセレンちゃんだけはやはりリリムが相手だからと自己紹介をしようとしなかったので私が代わりに言ったけど。

「あーまあ……俺は異世界から来た人間で、あの形と似た飛行機を写真……資料として見た事あるからです」
「へぇ。なるほど……君『も』異世界から来た人なんだ」
「『も』って事は……」
「まあ、それは本人に言ってもらいましょ」

ユウロが自分は異世界出身の人間だと言った時の反応から、おそらくそういう事なのかもしれない。
まあどちらにせよ、こちらに向かってゆっくりと降下している飛行機の操縦者であるヴェルナーさんに聞けばいいだろう。

「異世界……そんなもの、本当にあるのですか?」
「ん?ああそっか。セレンは知らないんだっけ。俺はこの世界じゃないところ出身で、他にも旅してる間に何人か見掛けたぞ」
「そうですか……それは、魔物のいない平和な世界の事?」
「そうだな……半分正解ってとこだな」
「?」

ヴェルナーさんが降りてくるのをジッと見ていたら、私の背中で相変わらず暴れていたセレンちゃんがユウロにこう質問をした。
そういえばセレンちゃんにはユウロが異世界人だと説明してなかったな……
たしかに、ユウロは魔物のいない世界から来た人間だ。
それはユウロと、そしてユウキさんからも証言を得たので本当だろう。

でも……きっと平和ではないだろう……



『吉崎君の事……しっかりと支えてやって下さい。詳しくは僕の口から軽々しく言っていい事ではない為言えませんが、彼は相当辛い経験を僕達がいた世界でしているので、きっといつか不安や責任に押し潰されてしまうかもしれない……だからサマリさん、吉崎君の近くに居てやって、あいつが何かをした時は、しっかりと受け止めてやって下さいね』



ルヘキサから出発する時、私一人ユウキさんに呼びだされてこう言われていた。
その経験が何かは聞き出せなかったが……相当辛いと言う程だ、そんな経験をする世界は決して平和な世界だとは言えないだろう。


「まったく……姫、急に飛び出さないで下さいよ……」
「ゴメンね。ビックリした?」
「飛べるとわかっていても急に飛び降りたら驚きもしますよ。何があったのです?」

とまあこんな感じで考え事をしているうちに、飛行機は私達の近くに着陸した。
飛行機からレミィナさんに向けて言葉を発しながら……金髪で、服は黒い服を着た男性……おそらくヴェルナーさんだろう人物が降りてきた。

「偶然わたしと同じリリムの魔力を感じたから確かめにね。結果はこの通り」
「わわっ!」
「なるほど……たしかに姫にそっくりだ……はじめまして、私はヴェルナーです」
「アメリだよ!よろしくねヴェルナーお兄ちゃん!」
「わたしのように会った事の無い姉上に会う為に旅してるんだってさ」

やはりヴェルナーさんだったらしい。
さっと身体の向きを変えさせられたので少しよろめくアメリちゃんだったが、すぐに体勢を整えて元気に自己紹介を始めた。

「それでこっちがそんなアメリと一緒に旅してる御一行さん」
「どうも、ワーシープのサマリです」
「……」
「後ろのエンジェルはセレンちゃん。ちょっとまだ魔物やインキュバス相手にはこんな感じですのでご了承ください」
「ウチは花梨!よろしゅうな!!」

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