「あーめあーめふーれふーれ♪」
「アメリちゃん楽しそうやな〜ウチ雨嫌いやわ〜……」
「私も……ワーシープになってからは湿気で毛皮がゴワゴワしちゃうからあまり……」
「えー、雨は雨で楽しいじゃん!」
現在14時。
無事に人体実験されていた人達も皆魔物になったし、スズとのお別れも済ませたので、ルヘキサを出発し、カリンの荷物の届け先である『ヘクターン』を目指して旅をしていた。
それから一週間……いろいろあったけど、私達は順調に旅を続けていた。
ただ、今日は生憎の雨だ……傘を差しているので直接雨は当たっていないが、じめじめとして鬱陶しい。
でもアメリちゃんはそんな雨でも元気に明るくはしゃいでいる……流石は子供だなって思う。
「今日は早めに切り上げたほうが良いかな?」
「これ以上酷なるようならそのほうがええやろな……」
「逆に止みそうならいつも通り進めばいいだろ」
「るんるんっ♪」
今までも雨の中の旅が無かったわけじゃないけど、ほとんど晴れていたから新鮮と言えば新鮮だ。
でもだからといって楽しい物では無い。地面もぬかるんで歩きにくいし、服や毛皮が雨で濡れて重くなるから疲れも溜まる。
「そういえばカリン、届け先にいるリリムの名前ってわからないの?」
「リリムの名前はわからん。それに客の情報はたとえサマリ達でもそう漏らしてええもんやないからな」
「カリンってそういうところは意外としっかりしてるよな」
「意外とはなんや!商人としてお客様の情報を厳守するのは当たり前やろ!!」
そういえば私達は届け先にいるリリムに会いに行っているのだが…そのリリムの名前を聞いていなかった。
カリンなら知っているかなと思い聞いてみたのだが、そうでもないらしい。
なのでもしかしたら会った事あるお姉さんかもしれないけど……まあ行った事の無い街に居るリリムだし、会わないとわからないか。
「じゃあここからヘクターンって何日ぐらいかかる?」
「せやなぁ……まだ1週間以上は掛かるやろうな。ここまでもそうやったけど、いくつか間に町とかもあるしな」
「へぇ……まあ途中で町があるなら食料の問題はなさそうか……」
それであと何日ぐらい掛かるのかと聞いてみたけど……どうやら1週間以上は掛かるとの事。
ひとつ前の街で買わなかったので一瞬食料もつかなと思ったけど、辿り着くまでにいくつか町があるなら問題は無いだろう。
とまあ、こんな感じにのんびりと歩いていた、その時だった……
「らんらんっ♪……あれ?」
「ん?どうかしたのアメリちゃん?」
先を行くアメリちゃんが道の先で何かを発見したようだ。
「……ねえあれって……」
「ん?どれの事だ?」
動きを止めて、アメリちゃんが指をさしたその先には……
「……なあ、あれヤバいんとちゃうか?」
「アメリちゃん!早く『テント』を出して!!」
「うんわかった!!」
雨が降っているのにもかかわらず、全身が真っ赤に……おそらく血で染まっていたエンジェルが倒れていた。
しかもその血はそのエンジェル自身から流れているようだ……だれがどう見たって尋常じゃない状況だ。
この近くには町なんかないので、助かるかはわからないけど私達で応急手当てしなければならない。
だから私はアメリちゃんに急いで『テント』を用意するように言って、そのエンジェルの下に駆け寄った。
「なあおい……このエンジェル……」
「ん……あれ?もしかして……」
「なんや?もしかして知り合いか?」
とにかくこのままでは危ないので、『テント』の中に運ぶためにそっとそのエンジェルを持ちあげたのだが……エンジェルには見覚えがあった。
「セレンちゃん?」
「だよな……」
この場に何故か居ない勇者セニックと共に何度か私達の前に立ち憚った、エンジェルのセレンちゃんだった……
…………
………
……
…
「……これで大丈夫かな?」
「とりあえず流血は止まったし、呼吸もしてるから大丈夫だとは思うが……早めに病院で見せたほうがいいとは思う」
「せやな……でも大怪我やで無暗に動かせんしな……」
現在15時。
私達は大怪我していたセレンちゃんへの一通りの手当てを終え、一息吐いていた。
治癒魔法なんて豪勢なものは使えないが、とにかく止血や消毒は済ませたので一安心していいと信じたい。
テキパキと出来たのはルヘキサでの経験が役に立ったと言えるだろう。
「しかし……なんでこんな事に……」
「セニックお兄ちゃんはどこに行ったんだろうね?」
「さあな……よっぽどの事が起きているのは間違いないとは思うが……」
とりあえず応急手当をしたので一安心……だから私達に、どうしてセレンちゃんがこんな事態になっているのかという疑問が生じた。
脇腹には斬り
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