「やれやれ……なんか下の階から破壊音が聞こえてきたと思ったら、まさか階段を使わずに下りていたなんてな……」
アタイ達が攫われた人を含め人体実験されていた人を解放し、ここから移動して皆と合流しようとしたら、階段からサーベルを持ち赤茶色の髪と藍色の瞳を持った一人の男が現れた……
「あ…………えーっと……たしかエルビさんといっしょにいた……」
「チモン。まあまともに名のってないから君が覚えて無くても仕方ないかな」
階段から下りてきた人物……それはどうやらアメリの知っている人物らしい……
いやまてよ、たしかチモンという名は……
「ちっ……ここにきて実力者のお出ましか」
「実力者として知られているとは光栄だね」
父ちゃんと同程度、もしくはそれ以上の実力を持った者の名前だった。
「それでお前達、こいつ等をどうするつもりだ?」
「助け出すつもりですが……通してもらえませんかね?」
「そうだな……この教会の黒い部分を表に出せると思うかい?貧困層とはいえ国民だ、おそらく外に出てやっている事を伝えられでもしたらこの教会どころかこの街がおしまいだろう」
「やはりそう言うと思いました。ここを通るにはあなたを倒すしかないのでしょ?」
「まあな。私個人としてはこんな実験貧困層とはいえ自分達の街の住民すら使ってやっているから嫌いだけど、上からの命には逆らえないからね……というかあなた、やはり生きてたのですね」
「ええ、エルビが言った通りルヘキサの自警団の皆さんに助けてもらいましたよ」
どうやらアタイ達を足止めしに来たらしい……
ここにきて厄介な奴が出てきたものだ……でもどうにかして階段まで行きたい……
「なあホルミ、アメリ……」
「何スズお姉ちゃん?」
「ここはアタイにまかせて先行ってくれないか?」
「ええっ!?」
だから、ここはアタイ一人でチモンの相手をする事にした。
全員で掛かった方が勝てる可能性は高いけど、確実じゃない上にこっちは助け出した人達を連れて行かなければならないからだ。
「何を言ってるのですか?全員で相手を……」
「いいから!全員で戦って負けた場合どうする?」
「ですが……」
「大丈夫、秘策はある。でもこんなに人が居たらやりようがないからね」
「……わかりました……隙を見て階段まで走り抜けます」
父ちゃんと同格以上と言われている奴相手じゃ正直勝てる気はしない……
でも時間稼ぎぐらいは出来るだろうし、一応作戦もあるからある程度は大丈夫なはずだ。
「させると思いますか?」
「させられるんだよ!!」
だからアタイは一人、チモンに向かって飛び掛かった。
「ボディががら空きです。それじゃあ私に斬ってと言っているようなもので……」
「ああ、斬ってみろよ。そうしたら高濃度の魔物の魔力がお前に振り注ぐ事になるけどな!!」
「なっ……くそっ!」
サーベルを持っているという事はそれをメインで戦うという事だろう。
でもそれでアタイを刺したり斬ったりした瞬間、アタイに流れているウシオニの血がチモンに降り注ぐ事になる。
高濃度の魔力が凝縮された血を被ればどんな人物であれタダでは済まないはずだ……少なくともインキュバス化は免れない。つまりサーベル……主流武器はなるべく使わないでアタイと戦う必要があるという訳だ!
「今だ皆!いけーっ!!」
「頑張って下さいサクラさん!」
「スズお姉ちゃん、死んだらイヤだからね!!」
サーベルが使えずアタイの攻撃をかわし続けるチモンの隙をついて、アメリ達は全員階段で上に登って行った。
「さて……どうする?アメリ達を追うのか?」
「いえ……まずはあなたを倒させてもらいます。要するに血を浴びなければいいだけですからね。斬ったりせずなるべく血が出ないように殴り殺せばいいだけですよ」
「まあね……でもそう簡単にはやられないよ!!」
アタイが攻撃を一旦止めたのでチモンもすぐに追いかけていくかと思いきや、どうやらアタイの相手を優先してくれるらしい。
でもそれは、アタイを倒す事に集中される事になる……油断なんかしたら即殺されるかもしれない。
「では……行きますよ!」
そう言ってチモンはサーベルを上に放り投げ、鞘を手に持ちアタイに向かってきた。
「この鞘にも加護は掛けられています!たかが鞘だと嘗めない方が良いですよ!!」
「くっ……ご忠告ありがとな!」
さっきまでの兵士達の剣と比べて格段に鞘の振りが早い。おそらくアタイのようにサーベルで戦えない相手に同じ事をした経験があるのだろう。
しかもチモンの言う通り、鞘に不思議な力が宿っているのを感じる……下手に当たるとマズいだろう。
だからアタイは当たらないように必死に避け続けていたのだが……
「はっ!やっ!掛かった!!」
「へっ……っ!?」
廊下を戻る様
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