「まてぇ〜♪男だけ待てぇ〜♪」
「誰が待つかあああっ!!」
「ユウロは渡さない!!」
「おとといきやがれ!」
現在16時。
私達は魔物が多く棲む森に入って……今全力で走っていた。
「あ〜ん男の子〜!」
「アメリちゃん!」
「ごめんねワーラビットのお姉ちゃん!『メドゥーサグレア』!!」
「あうっ!?」
アメリちゃんの魔法を受けた私達を……正確にはユウロを追っていたワーラビットは痺れて倒れた。
「はぁ……はぁ……なんだよこれいったい……」
「む、無法地帯にも……はぁ……程がある……」
「俺……はぁ……貞操護れる自信が無い……」
「あきらめたら……はぁ……ダメだよユウロお兄ちゃん……」
ナーラさんやフランちゃんと別れた後、お昼ご飯を食べてから森に入ったが……それからずっとこんな感じに何かしらの魔物に追われていた。
森に入って少ししたらハニービーの群れに襲われたがスズの糸に引っ掛けて何とかやり過ごし、その後しばらくしたらグリズリーが草むらから飛び出してきたが私のもこもこホールドで眠らせ、木の上から話しかけてくるドリアードは無視した。
そして少し開けた場所にいたワーラビットに追われ現在に至ると言う事である。
「くっそ…今どこら辺だ?」
「さあ…闇雲に逃げてたからもうさっぱりだよ……」
「地図はあっても意味無いってのはこの事だったんだね……」
「そうだね……けっきょく大きな道からもはずれちゃったもんね」
町で地図を購入した際、そのお店の人に「少しだけ広い道をずっと通って行けば森を抜けられるだろうけどおそらく不可能だと思うよ」と言われ、その時何の事かわからなかったが……どうやら多くの魔物があの道の傍に待機しているらしく入ってすぐに襲われたので道の無い森の中に逃げ込む事になってしまった。
更には「まあその地図も気休めにしかならないと思うよ。なんせ同じような景色ばかりなんだからね」と言われた通り、地図を見ても現在地がどこかすらわからない。
そう……今現在私達は完全に迷子になっているのである。
「まあ…全く日光が当たらない程生い茂っている森ってわけじゃないから大体の進行方向がわかるのが救いだな」
「だね……あとは魔物対策か……私達が居るのにユウロがフリーだってわかるものなんだね」
「ユウロお兄ちゃんにアメリたちの魔力が付いてるって言っても気休めていどだもん。それにユウロお兄ちゃんの精のにおいがアメリたちからしないから……」
「バレるって事か……」
迷子なのはまあ問題無いとしても、やっぱり魔物の追跡や罠をどう避けるかが問題だ。
この森の至る所にいるから、完璧に避けて通る事は不可能だろう。
唯一の救いはユウロ自身が誘惑や魅了に屈しないので、自ら私達と離れる心配が無い事か……
「……ねえみんな……もう動ける?」
「……まさか近くに何か居るのアメリちゃん?」
「うん……この森いろんな魔力がただよってるから魔物の場所はわからないけど……ほらあれ」
「あれ…………あーあれかぁ……」
こんな感じで森の中を全力で彷徨ってるわけで、体力的にちょっと辛いけど……そうゆっくりしていられはしないようだ。
今は周りに魔物がいなさそうだったから休んでいたのだが……どうやら近くでこっそり隠れていたようだ。
「アラクネが近くにいるのかな……」
「たぶん……さっきまでなかったし」
「仕方ない……本人には悪いけど破って行くか……アタイもアラクネの一種だからどうすればいいかぐらいわかるっつーの」
いつの間にか近くの木々の間に白い糸が張り巡らされていた。
ここはジパングでは無いのでおそらくアラクネがいるのだろう……
足止めのつもりか罠のつもりかわからないが、みすみす引っ掛かるわけがない。
「ていっ!」
「よし行くか」
という事で少し悪い気もするが、張り巡らされていた糸を切り裂き正面突破させてもらう。
スズの爪で引っ掛かる事も無く糸は無残にも散っていく……
「ひど〜い!!折角張ったのに〜!!」
と、木の上から思った通りアラクネが姿を現した。
予想外だったのは、そのアラクネが思ったより若かった事だ。たぶん私より3つくらいは下なんじゃないかな?
「悪いけど、だからってわざわざ引っ掛かるわけないよ」
「あんた達のじゃないならいーじゃんか〜!!」
「本人が拒否してるのでお断りさせていただきます」
「ばーかばーか!」
罵声を浴びせられつつも私達はその場から急ぎ足で立ち去った。
森にいる間ずっとこの調子かなぁ……疲れるなぁ……
…………
………
……
…
「ふぅ……やっとこさ一息つける……」
「本当に大丈夫なんだよねアメリちゃん?」
「うん!テント立ててるとこを見られてないなら大丈夫だよ!!魔物にも人よけのこうかあるからね
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