旅36 コラボな散歩

「うわあ〜!どこを見ても美しい景色だね〜!!」
「……そうか?」
「そうかって……まあユウロがわからないのもなんとなくわかるけどさ……」
「人間にはおそろしい場所として見られるらしいですからユウロさんがぎもんに思うのも仕方ないですね」

現在12時。
私達は無事に魔界に辿り着く事が出来た。
見た事ないような形をした植物…例えば淡く光る花なんかが生え、家の形も人間界とは少し違った雰囲気が出ているし、空気も濃くて深呼吸すると気持ち良い。
そして何よりも違うのが、今は12時だというのに薄暗いのだ……だが決して不健康な感じでは無くて、むしろ過ごしやすい。
でもまあそれは魔物だからだろう…人間であるユウロはどこか禍々しいものを見ているような顔をし続けているし、空気だってどこか甘ったるいなんて言っていた。
言われてみればたしかに禍々しいかもしれないが…それでもやはり私には美しく感じる。
あまり自覚は無いが、やはり魔物化した際に価値観などが変わったのだろうか……


「はうぅ……」
「アメリ大丈夫か?」
「うん……魔界に入ってからはちょっと元気になったよ……」

昨日のシーボとの戦闘で魔力を使い過ぎて倒れてしまったアメリちゃん……歩くのもままならない程なので今はスズに背負われている。
ちょっと前に魔界に入ったところだが、さっきまでは身体を起こすのも大変そうだったのに今は身体を起こしてお話しているので、本人が言うように魔界に入ってからちょっとは元気になったようだ。
それでもやはり辛そうではあるし、それに……




ぐうぅぅぅぅ……
ぎゅるるる……




「……」
「うぅ……おなか空いて力が入らないよぉ……」

いつも以上に空腹を訴えてくるアメリちゃんのお腹の音…昨日の夜からずっとこんな調子だ。
もちろん昨日の夜も今日の朝も一応ご飯は食べている…が、少ししたらまたお腹が空いてしまうようであった。
そもそも毎回魔力が減り過ぎるとお腹がよく空いているし、今のアメリちゃんは物を食べる体力も無く、いつもと比べたらあまり食べて無いのでずっとお腹が空いている状態だ。
できればアメリちゃんの魔力を補充したいのだが……前カリンがアメリちゃんにあげていたような子供でも飲める精補給剤みたいなものでもあればいいけど……

「最終手段はユウロがアメリちゃんに精を注げば……」
「おい……」
「実際に挿入するんじゃなくて私がおちんちんを手で扱いてアメリちゃんの口の中に…」
「お前俺を精神的に攻めて殺す気か?」
「……冗談だからそんなに怒らないでよ……」

本気で危ない状態になった場合はユウロに射精してもらうしかないと思ったが…ユウロが珍しく怖い顔して怒ってきたのでこの話はやめにしよう。

「はぁ……もう昼だし、アメリちゃんもこんな調子だからどこかで昼飯食べようぜ」
「そうだね…でも魔界に人間がご飯を食べられるお店ってあるのかな?」
「いくらなんでもあると思いますよ。サマリさんだって人間とかわらないごはんたべてますよね?」
「それもそうだね……じゃあお店探してみようか」

まあお腹の音も鳴り続けているし、時間的にもちょうど良いので、私達はお昼ご飯を食べる為にどこか食事が出来るお店を探す事にした。




ぐうぅぅぅぅ……
ぐぎゅるるるぅぅ……



「……凄い音だな……」
「うぅ…言わないでスズお姉ちゃん……」
「アメリはしたない……」
「フランも言わないで……おなか空いたものは空いたの……」

アメリちゃんのお腹が限界を迎えそう…というか既に限界突破しているので、急いで探し出す事にした……




…………



………



……








「うーん…どこかにないかなぁ……」
「ん?なあサマリ…あの建物って飲食店じゃないか?」
「え?ああ、あの周りとちょっと違う感じの建物の事?」
「おう…というか魔界以外では大体あんな建物だから違う感じって言うのも違うかと……」
「ごはん〜……」

お店を探し始めてから20分程経過。
それらしきものが見当たらず探し続けていたら、ようやくそれらしきものが目の前に現れた。

「『狐の尻尾』かぁ……カリンがいたら絶対拒否してそうだよなぁ……」
「たしかにそうかもね」
「ごはん〜……」

他の建物と違って人間界と変わらない建物の『狐の尻尾』というお店。
営業中と書かれているし、アメリちゃんがさっきからご飯としか言わなくなってしまったので早速入る事にした。



……………………



「お店の見た目通り普通のメニューだな……何食べようか?」
「うーん…とりあえず何か頼んだ方が良いかな……」
「ごはん〜……」
「アタイはもう決めたよ」
「あたしも決めました!」

お店に入った後、男の店員さんに案内された私達は早速何かを注文しようとして
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