旅32 都市『ライン』の非日常 とあるコラボのお話

「う〜ん……」
「ん?どうしたのスズ?考え事をしているようだけど……」
「いや…ちょっとね……」

現在21時。
セレンちゃんとセニックの襲撃を受けた後、特に何も起きる事無く数日間旅を続けていた私達。
そのおかげで明日にはラインに到着する所まで順調に進む事が出来た。

「何?記憶の事?何か思い出したの?」
「まあ…間違っては無いかな…」

それで今は『テント』で夜ご飯も食べ終わって、女子はお風呂から出てゆったりとしている時間。ちなみにユウロは今お風呂に行っている。
アメリちゃんはテーブルの上でライムちゃんから貰った独楽を回しており、私とスズはベッドの上でボーっと腰掛けていたのだが、スズが考え事でもしているらしく突然悩ましげに唸りだした。

「アタイは何も記憶がない…けどさ、たまにあれっ?て思う事があるんだよ」
「ん?どういう事?」
「いや…ほら、アタイの喋り方…特に気にしてなかったけど、どうしてアタイ記憶ないのにこういう喋り方を自然に出来るんだろうって」
「ああ…言われてみれば確かに……誰かに影響されたとかじゃなくて?」
「いや…自分の事をアタイって言ってるのは皆と旅に出るまで誰一人としていなかった…」
「ふ〜ん……」

どうやら自分の記憶の事で考えていたらしい。
たしかに、初めて会った時から記憶を無くしているというのにやたら喋り方とかは安定していたなぁ…

「たぶん…それは記憶が無くなる前からスズが使っていた喋り方だよ」
「そう…なのかな?」
「ほら、記憶が無くなってても言葉自体は忘れてないでしょ?それと一緒で…なんていうんだろ…頭じゃなくて身体が覚えているっていうか…ほらスズ、前に私が二日酔いでダウンしてた時に料理手伝ってもらったけどさ、その時普通に包丁とかの調理器具使えたよね?」
「まあ…そういえば普通に使い方がわかったなぁ…」
「でしょ?そんな風に記憶が無くても自然と覚えている事もあるんだよ!喋り方もその一つだって!」
「そうなのか……へへっ、なんか覚えてる事があると思うだけでも嬉しいや!」

全く記憶が無いのでは無く、少しは意識しないところで覚えている事もあって嬉しいのだろう…
今まで一緒に居ただけでもほとんど見た事無い程の満面の笑みを浮かべている。

「ふい〜、良い湯だったぜ……ん?なんかスズやけに嬉しそうにしてるな」
「あ、ユウロ出てきた。無意識でも覚えてる事があって嬉しいんだよ」

と、しばらくスズと話していたらユウロがお風呂から出てきたようだ。
きちんと寝巻を着てタオルで髪をゴシゴシしながら私達の近くまで歩いてきた。

「ふーん……言葉遣いとかか?」
「そうだ!まあ確証は無いけど、無意識に使ってるって事は可能性あるよな!?」
「まあな……」

そのまま私達の会話に入ったユウロ。
いつもの様な感じだと、こうなると大体……


「アメリもお話するー!!」
「ん?もう独楽回しはいいのかアメリちゃん?」
「うん…アメリもみんなとお話したいもん」

一人で遊んでるのが寂しくなったアメリちゃんが話の輪に入れて欲しそうな目でこっちを見ながら寄ってくるんだよね……



……かわいいなぁもぅ……



「もちろんいいよアメリちゃん!!」
「むきゅっ!」
「あ、ゴメンねアメリちゃん」

私はあまりもの可愛さに近寄ってきたアメリちゃんを抱き寄せた。
ちょっと勢いがあり過ぎて一瞬だけアメリちゃんが苦しそうな顔をしたので謝っておく。

「やっぱアメリちゃんみたいな可愛い妹欲しかったなぁ……」
「そういえばサマリって一人っ子なの?」
「そうだよ。一度親に私が妹欲しいって言ったら両親二人とも何故か悲しそうな顔したからそれ以来言えなかったけどね。スズ……は記憶無いからわからないか」
「うん……でもアタイも妹とかいたらいいなぁ…」
「アメリはお姉ちゃんいっぱいいるよ!妹もね!!」
「そうだね…って妹もいるんだ…魔物って子供出来にくいって聞いたからてっきりアメリちゃんが一番下かと…そういえばユウロは兄弟とかいるの?」
「……」
「……ユウロ?」

そして何気なく呟いた「妹が欲しかった」発言で、話題は兄弟姉妹の話になった。
スズは…まあわかるわけ無いし、アメリちゃんの場合はその姉妹に会う為に旅をしているから当然いる。

まあアメリちゃんの『妹』がいるのには驚いたが……アヤメさん達が言ってたけど魔物って人間と比べて子供が出来にくいらしいからアメリちゃんが末っ子だと思ってたけどそうでもないんだ……
ってそういえば初めて会った時のお昼ご飯の準備をしてる時にたしか魔王様が旦那様と喧嘩してアメリちゃんやお姉ちゃん達や『妹達』に泣きついてくるって言ってたような気もするなぁ……

そして順当にユウロにも話を振ったが……何故か黙りこんでしまった。

「どうした
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