「……」
気がついたら、僕は森の中をふらふらと歩いていた。
無意識のうちにこんな場所まで来てしまったのか…
僕はこれからしっかりしなければいけないのに……
「……」
少し前のある日、僕の両親が事故で死んでしまった。
その日の朝までは普通に生きていたのに、食料を買いに隣町まで二人仲良く買い物に行く途中に落石が二人を襲い…そのまま死んでしまった。
一週間前に葬式が終わり、墓に埋めたところも見たけど…今でも両親が死んでしまった事が信じられない。
だからなのか、僕は両親が死んでから笑うことはもちろん、泣いてすらいない。
まるで心が凍ってしまったようだ。
両親が死んでから、自分が何をしているのか時折かわからなくなる。
今日のようにふらふらと、無意識のうちに外に出ては、何も考えずにどこかを歩いていることが多い。
「……」
近所の人たちは優しく接してくれるけれど、あまり僕を助けてくれたりはしない。
まあ僕が住んでいる村は全体的に貧しいから仕方が無い…だから僕は自分の力で生きなければならない。
だけど、なにもする気が起きない。
なにも考えられない。
「……」
だから、このまま僕は森の中をふらふらする事にした。
家に帰っても誰もいないから、怒られる事もないし、心配される事もない。
そう、誰も、いないのだ………
♪〜〜♪〜〜〜……
「……ん?」
森の奥の方へ踏み込み、そのまま当てもなくふらふらとしていたら、どこからか歌みたいなものが聞こえてきた。
この森は人間はもちろん、動物ですら住んでいる者はいない…もしかしたら魔物が居るかもしれないけど、今のところ発見されたことは無い…つまり普通の植物と虫しかいない森のはず。
だから歌なんて聞こえてくるはずが無いのだが……
♪〜♪〜〜♪ーー……
やはり気のせいではなく、はっきりとまでは言わないが歌が聞こえてくる。
(いったい誰が歌っているのだろうか…声の高さから女性だとは思うけど…)
そう考えながら、僕の足は自然と歌が聞こえる方に向かっていた。
====================
「♪〜♪〜〜〜♪ーー……」
更に森の奥まで歩くこと数分。音の発生源…歌っている者が視界に入った。
「♪ー♪〜〜♪ーーー……」
その者は、他の木よりも少し大きな木の上で歌っていた。
「♪〜〜〜♪〜〜〜〜……」
おもわず聴きいってしまう歌を、綺麗な声で歌っている者…
「♪ーー♪〜♪♪〜〜……」
だが、その者は…やはり人ではなく、魔物だった。
「♪ーー♪〜♪ーーー……」
顔立ちこそは人間と同じで、茶色の瞳で空色のツインテールな髪型をした可愛らしい女の子だが…
「♪♪♪〜〜〜♪〜〜……」
本来腕があるべきところは青い翼がついていた。
「♪ーーーー♪ーーー……」
足は、鳥類の足とそっくりだった。
「♪〜〜♪♪〜〜〜〜……」
つまり、歌っている少女は…魔物は……
「♪♪〜♪ーー♪〜〜……」
これらの特徴を持っている魔物は……
「青いハーピー…」
「失礼ね!!私はセイレーンよ!!」
小さな声で言ったうえ距離もあったけどどうやら聞こえたらしい。キッとこっちを睨みつけビシッと翼の先端をこちらに向けてすぐさま大きな声で訂正してきた。
「そもそも歌ってたのになんでセイレーンって思わないの!?」
「だって…セイレーンがこんな森に居るなんて思わなかったから…」
セイレーンの主な生息地は海辺だったはずだ。少なくとも植物と虫ぐらいしかいない森に居るとは思わない。
だから青いハーピーだと思ったのだが、その結果目の前のセイレーンさんを怒らせてしまったようだ。
「まあいいわ…ところでキミ、ずっと私の歌を聴いていたよね?」
「う、うん…」
確かに、魔物が歌っているとわかった後でも僕はずっと立ち止まって聴いていた。
そう言ってくるという事は、僕が居る事に気づいていたという事か。まあ隠れて聴いていたわけじゃないから不思議ではないけど。
「私の歌、どうだった?」
「どうって…」
「私の歌で皆が幸せに、笑顔になれそう?」
先程までとは違い、今度は真剣な眼差しで僕に感想を聞いてきた。
嘘をついても何されるかわからないので素直に言う事にする。
「綺麗な歌で…おもわず聴き続けていたよ…凄く良かった。笑顔になれると思うよ」
「ふーん……嘘ね。お世辞はいいわよ。本当の事を言って!」
本当の事を言ったのだが…何故か嘘だと思われてしまったようだ。
でも実際彼女の歌なら皆かどうかはともかく笑顔になる人は居
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