「何?急に呼び出したりなんかしてどうしたの?」
「いや、ちょっと聞いて欲しい事があってね…」
これは夢かな…それであの思い出の日の事か…
「本当に何よ、こんな夜遅くに呼び出して…」
「ゴメンね。どうしても今聞いてもらいたくて…」
輝く星空の下で、わたしは幼馴染みに呼び出されて、近くの誰も居ない海岸にいた。
「まあいいけどね…それで、話って何?」
「ああ…そうだね…」
わたしは平然を装いながらも、内心ドキドキしていた。
彼が何を言うつもりなのかはなんとなく予想できてたし、それに対する回答も用意していた。
それでも、この雰囲気や事の大きさから、わたしは緊張していた。
「よく聞いてくれよ…林檎…僕は…」
そして彼はわたしの名前を言い…
「僕は…林檎の事が好きだ。幼馴染としてだけじゃなく、一人の女として!」
こう、私に告白してきた。
もちろんわたしは…
「わたしも…椿の事が大好き!もちろん幼馴染としてだけじゃなくて、一人の男として!」
彼の…椿の事が好きだから…自分の気持ちを告白返しみたいな形で伝えた。
「……ははっ!」
「……へへっ!」
なんだか照れくさくって、二人で微笑みあった。
「それじゃ、帰ろうか!」
「そうだね!」
そしてわたし達は二人で手を繋ぎながら家に帰った。
小さな頃は普通に繋いでいたのに、いつからか恥ずかしくて繋ぐ事が無かった手を繋ぎながら…
繋いだ手を通して、互いの熱を感じながら…
………………………
目を覚ますと、光り輝く月が目に入った。
それもそのはず。今は夜だから。
わたしは、海面に浮かびながら、ゆっくりと流れに任せていた。
なんであの頃の夢を見たんだろうか…やっぱりショックだったからかな…
故郷に戻ったわたしは、早速わたしが生きている事を皆に伝えた。
近所のおじさん達や仲の良かった友達、それにお母さんとお父さん…
皆、わたしが生きていた事を喜んでくれた。
わたしが人間じゃなくなってても受け入れてくれた。
といっても、元々わたしの故郷は妖怪とともに生活している町だ。町に居る水神様だって妖怪だしね。
だからわたしが妖怪…海で出会った同族が言うには魔物『ネレイス』になっていても問題は無かったようだ。
でも、わたしにはある問題が発生した。
その故郷で一番会いたかった幼馴染み…椿が居なかったのだ。
どうやら死んだと思われていたわたしの事を忘れるために、大陸へ一人で旅立ったらしい。
椿に会えなくて…とても残念だった。とても寂しかった。
だからわたしは大陸に向かう事にした。
わたしが生きていると伝えるために。
そして、椿と……ふふっ……♪
でも、あれから半年は過ぎている。
もし椿がわたしの事忘れて他の女とイチャイチャしてたら…
考えたくないけど…もしそんな事をしてたら…
……ゆるさないんだから……
そのときは…椿も、その女も…どうしてあげようかなぁ…
=======[サマリ視点]=======
「うーん…こんな感じ?」
「そうだな…少し怪しい気もするけど…まあ大丈夫かな?」
現在19時。
私達はヘプタリアに向けて旅をしていた。
マルクトを出発してからそこそこ経ったが、今のところ前よりは疲れを感じてはいない。
たぶん今のところは勇者に遭遇する心配がほとんどなかったからだろう。
盗賊などはユウロやツバキが追い払ってくれるから心配する必要は無いし。
だから、今のところは特に問題も無かった。
そう、『今のところは』だ。
「どうかな?」
「うん!大丈夫だとおもうよ!」
「そうだね。覗きこまれたり抱きつかれたりしなければ問題無いと思うよ」
だけど、ここから先は少し問題があるのだ。
ヘプタリアまでのルートはここからなら二種類あるのだが…
片方は到底通れそうでもない急な斜面が続く山道。
もう片方は坂は緩やかだが距離があり、なおかつ反魔物領、しかも大きな教団がある街の近くを通る道。
そう、どちらの道を通るにせよ危険が伴うのだ。
それで、私達は反魔物領の近くを通る道で行く事にした。
なぜなら、こちらの道が危険なのは「魔物にとって」なだけで、人間にとっては特に危険な道ではないからだ。
「うーん…人化の術ってのを使えれば楽だったんだろうなー…」
「ワーシープじゃ難しいと思うよ?それに元々サマリは魔術に対する知識が俺以上に無いから習得もすぐには出来なかったと思うけど…」
「そうだよね…ま、いいか。ローブがあれば毛や角なんかは隠せるし、大丈夫だと思おう!」
だから私とアメリちゃんは魔物としての正体を隠しながらその
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