メル姉はオレの妹!?

「ふぁぁ〜……」


オレは部屋にある窓から射し込む日光で目が醒めた。
気持ちの良い朝だ。


「ふわっふぅ……」


とりあえず窓から外を見ると、青い空、白い雲、輝く太陽、降る白雪が見えた…
うん、良い天気だ。

「……って太陽出てるのに降る白雪ぃ!?………いやまて、いつものようにメル姉のせいだな」

思わず叫んでしまった。別に不思議な事じゃないのに。
良い天気の日に雪やら雷やら氷やらを降らすようなご近所さんがいるのでこのような事は日常茶飯事だ。
一応そのご近所さん…メル姉が原因かどうかを確かめに行く事にする。


家を出て雪の中を少し歩いたら……やっぱりいた。

「ブツブツ…」
「おーいメル姉!」
「ブツブツ…ん?あっ、おはよーフォン!」

小高い丘の頂上で、複雑な模様が描かれた円の上で大きく禍々しい鎌を手に持ちながら何やらブツブツと呪文みたいなものを唱えていたちょっと人と違う姿をした眼鏡を掛けた女の子…メル姉がいた。
邪魔になるかなと思いつつもメル姉に話し掛けたら反応して挨拶してくれた。ちなみにフォンと言うのはオレの名前だ。
メル姉が挨拶し呪文を止めた瞬間降っていた雪がやんだ。やっぱりメル姉が雪を降らしていたようだ。

「おはよーメル姉!大体わかるけど何してんの?」
「大体わかるなら説明する必要無いと思うんだけど…それとも何か言いたい事でもあるの?」


「何かわたしに文句でも言いたいのかな?」とでも言いたげにメル姉がジト目でオレを見てきた。


「いや別に言いたい事があるわけでは無いけど…やっぱり最近のマイブームの天候をモチーフとした魔術の練習?」
「うん、そうだよ!」
「……なんでわざわざ晴れた日に雪とかを降らせてるの?」
「え?だって相反する2つが同時に存在するなんて凄くワクワクするじゃん!!」

先程とは逆に目を見開き瞳を輝かせながらオレに力説してきたメル姉。
メル姉いわく、晴れてるのに雨が降ってたり、水の中なのに炎が燃えてたり、前向きに歩いているのに後ろに進んでたり、マンティスなのにペラペラ喋っていたりと、本来なら同時に存在する事のない正反対な2つを自分の魔力で実現させるのが楽しくて仕方がないらしい。

実際今あげた例は既に実行済みである。

「いや、ワクワクはするけどさ……他人に迷惑かけるのは良くないと思うんだけど…」
「なによ、やっぱり文句あるじゃない。それにわたしがいつどこで他人に迷惑かけたっていうのよ?」
「今まで全く誰にも迷惑かけたつもりは無いの?あんなに怒られたりボコられたりしたのに?」
「……………ごめん、確かにしょっちゅう迷惑かけてる」

さっきあげた例を実行したあと大体誰かから怒られたりボコられたりしているのだから確実に迷惑はかかっているはずだ。
晴れた日に雨を降らしたせいで近所の人が干していた洗濯物をびしょ濡れにしてしまってその人とメル姉のお母さんから怒られていたし、前向きに進んでいるのに後ろに進む魔法を本人の許可無くかけられた眷属(友達)の魔女はあまりもの奇妙さにパニックになって倒れてしまいその後目を覚ました魔女に約半日も説教され、同じ村に住んでいる年上のマンティスさんに心の声まで口に出す魔法(もう呪いの類い)をこちらも本人の許可無くかけその行為にブチギレしたマンティスさんがメル姉を木に縛り付けもの凄い暴言をマシンガンのように浴びせながら腕の鎌(誤って切ってしまわないようにカバー付き)で顔含め全身ボコボコにしたのだ。
唯一水の中で炎を燃やしたのは誰にも迷惑かけてないが、それはオレや魔女達がきちんと村の外れの湖に住んでいるサハギン達が一人も居ない場所でやらせたからだ。
とりあえずこんなことされるほどの迷惑は絶対かけている。本人もそれがわかったためか暗い顔して俯いて反省している。

「大体今日だってせっかく良い天気なのに雪降らせたらまた洗濯できないじゃんか」
「今回はちゃんと範囲狭めたわよ!!」
「じゃあなんでオレの家は雪降ってたの?」
「フォンの家が範囲内にあったから」
「……もっと範囲狭めてよ」
「残念ながらわたしの腕ではこれ以上範囲を狭める事ができないのよ…」

そう言ってますますメル姉の顔が暗くなった。
暗い顔したメル姉をあまり見ていたくないので元気になってもらえるように言葉を続ける。

「えーと…まあオレの家族はまだ寝てるから全然問題無いし…」
「……」
「それに晴れているのに雪が降っててワクワクsムプッ!?」
「……もういいよ。変にフォローされても惨めになる…」

元気になってもらえるように言っていたが本人には逆効果だったらしく、顔にメル姉の『肉球』を押し付けられた。


何故メル姉に肉球があるかって?さっき言ったじゃん、メル姉はちょっと人と違う姿をした眼鏡を掛けた女の子って。


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