「……」
現在23時。『テント』の中のベッドでいつものようにアメリちゃんを抱きながら寝ようとして1時間半程経ったが、なかなか寝られずにいる。
別に疲れていないわけではないし、お昼寝して眠くないなんて事もない。
もちろんお腹が空いていることもないし、今日の不思議体験に興奮しているってことも少ししかない。
眠れない理由……それはただ、考え事をしているだけだ。
「魔物になる…か…」
アメリちゃんの元従者のベリリさん、アメリちゃんのお姉さんのアクチさん…その二人に私が言われたこと…
それは、これから旅をしていくのならば『魔物にならないか』ということ。
ずっと安全に旅が出来るなら私が人間のままでも問題ないだろうけど、そう上手くは行かない。
今までだって、勇者に襲われたりした。
今日だって盗賊に襲われたが、私は何もしていない。
実際旅に出てからまだそんなに経ってないのに私は死にかけた。
この前だって勇者に魔物と間違えられて襲われ、そのまま川に落とされて溺れ死ぬところだった。
その時は偶々サハギンっていう魔物(私はあまり姿とか覚えていないけど、アメリちゃんがそう言ってた)が近くを泳いでおり、私を助けてくれたから死なずに済んだ。
でもその後もそれが原因で高熱が出て、4日も入院する破目になった。その間、ユウロやアメリちゃんには多大な迷惑と心配を掛けてしまった。
私は弱い人間…この先の旅でも苦労することも、ユウロとアメリちゃんの足を引っ張ることも多いだろう。
そう考えると、私は人間でいるより魔物になったほうが良いかもしれない。
別に魔物になりたくないことは無い。今まで関わった魔物を見ていると、人間と大して違わない…それどころか人間より素直な人が多くて好感が持てるぐらいだ。
そんな魔物になることを完全否定する気は起きない。
身体も丈夫になるし、魔物になってもいいかなと思ったこともある。
でも…魔物になりたくない自分もいる。
魔物になんか…って言い方は悪いかもしれないけれど…人間として生まれたからには魔物になんかなってたまるかと思っている自分も確かに存在しているのだ。
「はぁ……」
考えれば考えるほど頭が痛くなるしもやもやする。
魔物になってしまった時はその時だ!それ以外はその時じゃない!って感じに気楽に考えたほうが良いかな…
「すぅ……すぅ……」
「……ふふっ…」
考え事を止め、寝息を立ててぐっすりと眠るアメリちゃんの可愛い寝顔を見て安心してから私は眠りについた…
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「「「ごちそうさま!!」」」
現在8時。
私を含め皆がちょっと寝坊しちゃったから遅くなってしまった朝ご飯を食べ終わったところだ。
「おいしかったー!アメリまんぞく!!」
「うん!今日もウマかった!」
「へへっ!ありがと!」
二人とも満足してくれたので良かった。
アクチさんのとこにいたメイドアルプさんにいろいろとアドバイスしてもらったことを早速実践してみたんだけど、上手く出来たようだ。
自分で食べていてもおいしいと思ったし、これで私の料理の腕が更に上がって二人を私の料理で満足させられるって考えると嬉しい限りだ。
「それじゃあ片付けも終わったし早速出発しようか!」
「そうだな…ラノナスに着くにはどれくらいかかるかな…」
「アクチお姉ちゃんはジーナからテトラストの間よりはちかいって言ってたけど…」
「ま、気楽に行こうよ!ディナマはちょっと怖いけど勇者に襲われる事はほぼないんだし、テトラストに行く時と違って急ぐ必要も全くないんだから!!」
「……それもそうだな!」
お皿も洗い、身支度も済んだし、早速ラノナスに向かっていくことにした。
今度は何日掛かっても勇者に襲われるかもって恐怖は無いから気が楽である。
ただ盗賊団ディナマがちょっと怖いけど、ユウロとアメリちゃんなら襲われても簡単に返り討ち出来そうだし特に問題は無いだろう。あとは私がヘマしない様に気をつけるだけだ。
「それじゃあしゅっぱーつ!!」
私達は『テント』を出て、暖かい陽気の中ゆったりと歩きはじめた…
…………
………
……
…
「るんるん♪」
現在11時。ゆったりと歩き続けて約3時間経過。
いやぁ…流石新魔物領。この3時間でいろんな魔物を見かけた。
空を見上げるとハーピー達が散歩(散飛行?)しているし、丘の向こう側ではピョンピョン跳ねているワーラビットとそれを無邪気に追い掛けているアメリちゃん位のサキュバスの子供が居たし、木々の上に緑の髪の女性(アメリちゃんが言うにはドリアードって魔物)が寝ていた。
そのどれもがほのぼのとした光景だった。
まあ茂みの中から変な臭いがして変な声が聞こえた事も
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