旅5 お兄ちゃんといっしょ!

「…ユウロお兄ちゃん、アレ何?」
「なぁにあれぇ……」


えーっと、とりあえず状況を確認しようか。


親魔物領『テトラスト』に向かっていた俺達は途中で昼飯のお弁当を食べていた。
そして食べ終わったところでいきなり大きな斧が上から降ってきて、当たりこそしなかったもののその斧が落ちてきたときの衝撃でサマリが吹き飛び流れがこれでもかというほど速い川に落ちてしまった。
急いで助けなきゃと思ってサマリを見失わないように追い掛けようとしたところで、女勇者のホルミが立っていた。
どうやら斧はホルミが投げた物で、しかもサマリを魔物だと思って吹き飛ばしたらしい。なんて迷惑な。
しかもサマリが吹き飛んだ事によってもの凄く怒ったアメリちゃんがあれだけ使うのを躊躇っていた攻撃系の魔法でホルミに攻撃を始めてしまうし…ちょっと怖いし…こんなことしている場合じゃないと攻撃するのをやめさせたが。
あやうく手を出してしまうところだった。アメリちゃんが素直な子で、すぐに落ち着いてくれたからよかったよ。
で、サマリを探しに行こうとしたときに大きな音が響いた。
ホルミがやったわけでもなさそうで、とりあえず振り向いてみたら……

川の少し下流のほうに20メートルは超える水柱があったと。


うん、何がなんだかさっぱりだ。



「アメリちゃん何かした?」
「ううん、アメリ何もしてないよ。ホルミさんかな?」
「いや、あの表情を見る限り彼女ではないと思うよ」
「あっ!もしかしてサマリお姉ちゃんかも!!」
「あれ?サマリってあんな事できたっけ?」
「……じゃあなんだろ?」
「なんだろな……ん?」

とりあえず突然発生した水柱をじっと見ていると……

「ねえアメリちゃん、水柱の上のほうになんか見えない?」
「ん?……あっ!!」

高く伸びる水柱の上のほうに何か青いものが見えた。
どうやら何かを抱えている人型の何かのようだ。詳しくは見えない。
それをアメリちゃんに教えたら何か気付いたようだ。

「サマリお姉ちゃんだ!!」
「へっ!?」

どうやらサマリらしい。たぶん抱えられている何かのほうだろう。
じゃあ抱えているのはもしかして…………って!?

「こっちに向かってる!?」
「うん!!よかった〜!!サマリお姉ちゃん生きてた〜!!」

そのまま青い何かはこちらまで飛んできて…


すたっ!


「…………」じーっ
「げほっ!げほっ!……ううぅ……」

俺達の目の前で綺麗に着地した。

「…………」くいっ
「げほっ……」
「あ、ども…」

そして脇に抱えていたサマリを俺達のほうに渡してきたので受け取った。
咳込んでるのでちゃんと生きているし息している。
良かった〜。

「サマリお姉ちゃんをたすけてくれてありがとーサハギンのお姉ちゃん!!」
「…………」こくっ

目の前にいる何かは手足に青い鱗と水掻きがついてるし、魚の尾鰭の様な長い尻尾も腰から伸びている。顔は無表情だがどこか華麗さを感じ、どうみてもスク水にしか見えない服?鱗?を着ている。
これらの特徴から、アメリちゃんの言うとおり魔物『サハギン』なのだろう。教団に置いてあった図鑑で見た事あるけど、本物見るのは初めてだ。

「…ここ……危ない………」
「うわお!?」
「……何?」
「いや…なんでもないです…」
「……」じーっ

ずっと無口だったから、急に喋ったので驚いた。

「今回は…たまたま近くにいた………次…助けるの無理……気をつけて……」
「あ、はい…ありがとうございます…」
「……」パシャッ!

そのまま俺達に注意をして川に戻っていった……

あ、そうだ……

「あの〜……」
「……何?」
「さっきの水柱は何だったのですか?」

ただ川から飛び出ただけではあんなに高く水柱は出来ないと思ったから聞いてみた。

「…………」
「……」
「………演出」ドヤァ
「……」

おかしいな…このサハギンさん無表情のままなのにドヤ顔した気がする。なんか腹立つな…


「サマリお姉ちゃん!だいじょうぶ!?」
「けほっ……うん、なんとか…」
「ホント?よかった〜!!」

再び川に消えていったサハギンを見送り、サマリの様子を確認する。
全身びしょ濡れで苦しそうではあるが、特に目立った怪我はして無さそうだし命に別状はなさそうだ。

「ほっ…良かったです……」
「………あ」
「何ですか?」
「いや…なんでも…」

とりあえずサマリの無事を確認したところでホルミが口を開いた。




こいつが居た事をすっかり忘れていた……




「ごめんなさいね。リリムと一緒にいたからてっきり魔物かと……」
「けほっ……魔物なら殺すってずいぶん物騒な…クシュン!」
「それが私達勇者の使命ですから……そこにいる使命を忘れたおバカさんとは違うのです……」
「おバカ
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