「完成!夜ご飯はシチューだよ!!」
「わー!いいにおい!!」
現在20時。つまり夜。
私達はまず隣町の『ジーナ』を目指す事にしたのだが、家からジーナまでは歩きだと大人でも半日ほどかかってしまう。旅立ったのが昼過ぎだったうえにまだ子供であるアメリちゃんの歩幅は大人のそれよりも小さいため日が暮れるまでにジーナまでたどり着く事が出来ず、私達は現在道沿いから少し外れた場所にある丘の上でキャンプしている。
「じゃあ食べよっか!」
「うん!いただきまーす!」
「はい、いただきます!」
私達はアメリちゃんが持っていた『折り畳み小屋』の中にある木で出来た立派な椅子に座りながらこれまた立派なテーブルの上に乗せたシチューとパン、それに野菜サラダ(材料は家から持ってきた)を食べている。
……誰が何と言おうが私達はキャンプをしているのである。
「ごちそうさま!!やっぱりサマリお姉ちゃんのごはんはとってもおいしい!!」
「いやあ…そこまで真っ直ぐ言われると照れるよ…///」
目の前に居るリリムの女の子、アメリちゃんはとても素直な子だ。
今まで私は魔物というものを実際に見た事が無かったけど、こうして一緒に居てお話をしていると世間で言われている恐ろしさは微塵も感じない。見た目以外は人間の女の子との違いがさっぱりわからない。
大人の魔物になるとまた違うのかもしれないけど、アメリちゃんの話からすると今の魔物は魔王の魔力の影響で人間を愛するようになっているとの事なのできっと人間女性と大差ないのだろう。
……人間女性より大幅にエロいらしいけど。まあ魔王=アメリちゃんのお母さんはサキュバスらしいから仕方ないか。
「ところで…この小屋?テント?…まあいいや。これって凄くない?」
「え?そうかなあ?」
この小屋にはルーンが刻まれたスイッチを押すだけで段階調節が可能な熱を発するプレート、蛇口、電灯があり、食材を保存・保冷する事が出来る箱に、ちょっと大きめのベッドまで複数存在し、トイレとシャワー完備……
しかもこの小屋の外見は少し大きめのテントと変わらないのに内部の空間はこのようにその数倍の広さである……
更にこの小屋は人除け、獣除け、ついでに虫除けの魔力が込められているのでよほどの事が無い限りは安心だとか……
やっぱりこれ凄くない?魔物の社会では普通なの?
「んーでもたしかこのテントは一級品でアメリ用だってベリリお姉ちゃんが言ってた」
あー、ここまで凄いのは王女仕様だからか。
でもそれぞれの機能は普通に存在しているんだろうな……
恐るべし魔物の技術。
「ところでアメリちゃん、いま向かっているジーナは反魔物領なんだけど本当に大丈夫なの?」
「うん。一週間ぐらいずっとその町にいるってなるとあぶないけど少しならだいじょーぶだよ!!」
本人がこう言う事だしきっと大丈夫なのだろうけど…不安になる。
一応護衛術を軽く身につけてはいるけど、勇者が現れたりしたら護りきれる自信が全く無い。
実際アメリちゃんは私と出会う前に勇者に襲われている。視界が悪い森の中に入ったことでなんとか逃げ切る事が出来たと言っていたが、村や平野など見晴らしが良い場所で遭遇したら逃げるのも困難だ。
うーん…まずは親魔物領を目指した方が良いかな。そのほうが襲われたり恐れられたりする確率はぐっと減るし、最悪襲われても他の魔物が助けてくれるかもしれないし。
「ふぁ〜〜〜……ねむくなってきた……」
「じゃあもう寝る?でも寝る前に歯を磨いておこうね」
「うん…」
これからの旅についていろいろと考えていたらアメリちゃんが眠たそうに欠伸をしていた。
魔物でも子供は早く寝るものなんだな……こういうのを目の当たりにすると人と魔物の違いなんてあまりないと実感する。
「サマリお姉ちゃん、はみがきおわったよー」
「はい、それならおやすみ、アメリちゃん」
「あれ?サマリお姉ちゃんはねないの?」
「私は食器とかを洗って片付けてから寝るよ」
「……じゃあまってる!いっしょにねよ!」
……ものすっごくカワイイ!!!!
こんな妹がずっと欲しかったから「一緒に寝よ!」なんて言われて凄く嬉しい!!
もう眠たいアメリちゃんを長く待たせるのは悪いので急いで片づけをすませた。
そして同じベッドで二人一緒に寝た。
アメリちゃんの抱き心地は最高だった。
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「で、アメリちゃん。そろそろジーナに着くけどどうするの?」
早く寝たからか朝早くに起きれたので、そのまま朝ご飯を食べて出発したおかげでお昼前にはジーナの入口の門が見える所までたどり着く事が出来た。
しかし、ここは反魔物領だ。アメリちゃんは大丈夫と言っていたけどどうするのだろうか?
「ちょっとまってね……う〜〜
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