旅行4 一人で旅する謎の少女

「ねえねえ今度はどこ行く?」
「うーん、ここなんてどう?」
「どれどれ……遺跡の街フィフラムか。ええんちゃう?」

現在22時。
私達は大きな湖の畔で『テント』を張り、そこで次の目的地を決めていた。
一つ前に立ち寄った町で、この湖はウンディーネも宿る綺麗な湖で、夕日が映える有名な観光地だと話を聞いたので行ってみたのだ。言われた通り、湖の一面全てがオレンジ色、いや黄金色に輝き、その上を舞うウンディーネの姿はつい時間も忘れ見惚れてしまう程に綺麗だった。
そしてそのウンディーネにここで寝泊まりしても良いと許可を得られたので、こうして『テント』を張って明日に備えているのである。

「ここには知らないお姉ちゃんいるかな?」
「どうだろうな。ブランカさん以降、アメリちゃんが知らないお姉さんには合ってないよな?」
「あれからもう3ヶ月くらいやな。知っとるお姉さんなら一人会うたけど、それも偶々やし、そこから全く影も形もあらへんな」
「エルゼルさんね。元気にしてるかな……」

何時もなら出会ったお姉さんに他のお姉さんの情報を貰ったりするのだが、ブランカさんは他の姉妹と随分と会っていないと言っていた通り、その手の情報は全く持っていなかった。なので私達はとりあえず親魔物領を中心に気ままに旅をし続けつつ、ちょっとずつリリムの情報を集めているのだが……ここに来て、全く情報が無くなっていたのだった。
ちなみに、ユウロが「知らないお姉さん」と強調して言った通り、アメリちゃんが既に知っているお姉さんなら1人出会っていた。魔界の歴史を研究しているエルゼルさんと夫のスクルさんだ。ちなみに歴史家は夫のスクルさんの方で、アメリちゃんの旅立ちより後に結ばれたらしい。

「スクルさんの話は面白ったな。俺あんまり歴史って好きじゃなかったけど、自分の知らない世界の歴史は興味深く聞けるわ」
「はん、スクルさんでなんか思い出してしもたわ……絶対稲荷か妖狐やろ」
「はいはい。別にカリンじゃないから良いでしょ?」

旅の途中、知っているとはいえお姉さんの一人に出会えたことではしゃいだアメリちゃんが原因でスクルさんを池ポチャしたのをきっかけに、そのまましばらく『テント』の中でお話を聞いていたのだ。その中でも勇者の……アメリちゃんのお父さんの話は中々に興味深かった。オチのせいでカリンはちょっと不機嫌になってしまったが。

「もし今度帰る事があったらお父さん達からも雨乞いの話を中心に昔のお話聞いてみようかな」
「それもいいかもね。なんか他の話は言葉を濁らせてたけど、本人なら教えてくれるかもよ?」

まあ、旧時代の話になるので全部は教えてくれないだろう。もっと沢山聞きたがっていたアメリちゃんだったが、エルゼルさんもスクルさんも言葉を濁して沈黙してしまっていたし、あまり良い話ではないと思う。それでも、自分の親の話に興味を持ったアメリちゃんの興味津々な視線を受けたら、本人ならばマイルドな武勇伝くらい面白おかしく教えてもらえそうではある。

「そういえばアメリちゃん、知ってるお姉さん繋がりで思い出したけど、ヘカテーさんから貰った飴はきちんと持ってる?」
「勿論! 前襲われた時は引き出しにしまってて使えなかったから、今はもしもの為に常にポケットに入れてあるよ!」

そう言ってアメリちゃんはズボンのポケットから黒い塊を取り出した。これは正確には飴玉ではなく、アメリちゃんのお姉さんの一人、ヘカテーさんの魔力を固めたものだ。これを食べればアメリちゃんの魔力を瞬時に回復してくれるらしいので、もしも戦闘になった時用にと常に身に付けさせておいてあるのだ。

「そのもしもがないのが一番いいけどな。ロイさん達と一緒に盗賊達に襲われて以来、セレンの件やアメリちゃんが勇者に襲われたりはしたけど、盗賊関係は全くなく平和に旅が続けられてるしさ」
「せやな。ウチが合流してからここまで特に戦う機会はなかったな」
「ま、それが一番だよ」

確かに、ここ最近は戦闘は一切起きず、平和に旅を続けられていた。ちなみにロイさんというのはヘカテーさんの執事(夫)で、その戦闘力も高い紳士だ。彼らと出会った時、私はまだユウロへの恋心に気付かないようにしていた時期だ。もう何か月も前だが、元気にしているだろうか……

「そういえばサマリ、あの時最後にヘカテーさんに何か言われて顔が真っ赤になってたけど、何言われたんだ?」
「んー、忘れちゃった」
「そっか」

そんなヘカテーさん、別れ際に私とユウロとセレンちゃんに何かを囁いていたのだが……私には、自分の気持ちの赴くままにユウロを抱け、的な事を言ってきたのだ。当時はユウロへの恋愛感情は無自覚だったので思わず何言ってるんだと慌ててしまったのだが……結局似たような事をセレンちゃんにも言われたし、それで良か
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